旧厚生省と社会保険庁の役人たちが犯した年金に関する犯罪的不祥事の尻拭いをするため、厚生労働省大臣官房総務課に「年金記録回復委員会」なるものが設置されている。
この委員会は民主党への政権交代直後の2009年10月16日に第1回の委員会が開かれて以来、ほぼ定期的に開催されてきた。
その主たる目的は「年金記録の正常化」であるが、2010年12月14日に開かれた第19回委員会において、国民年金の第3号被保険者(いわゆるサラリーマンの妻)の救済策が出された。
俗称「適用3号」、これが過去2回の救済策と比べると、とんでもハップンな、まさに怠慢主婦、クレーマーゴネ子救済策以外の何物でもないことを知って驚いた。
国民年金の第3号被保険者というのは、25年の国民年金の受給資格期間を満たすことが条件ではあるものの、簡単に言えば、役所に紙切れ1枚出すだけで老後の年金がもらえるシステムである。
しかし、当の主婦たちはサラリーマン全体で拠出した金の中から年金が出ることをほとんど知らない上に、場合によっては金を出している本人(市役所の職員や年金事務所の社員)に向かって「年金が少ない」などと悪態をつき罵声を浴びせることから、私は国民年金の第3号被保険者の制度を「専業主婦への対中国ODA(中国政府は日本から多額のODAを受け取っておきながらそれを感謝するどころか自国民への反日教育を通じて悪態をついている)」と呼んでいる。
年金という老後保障の制度において、世界中を見渡しても日本の専業主婦ほど恵まれた存在を私は寡聞にして知らない。
それはさておいて、この第3号被保険者の制度は、当事者にもわかりづらい上に、加入している実感がないために手続き漏れが頻発し、その都度付け焼刃にような救済策がなされてきた。
すでに記憶にない方も多いとは思うが、最初は1997年(平成9年)1月からの基礎年金番号導入を前にした、1995年(平成7年)4月から1997年(平成9年)3月までの時限措置で第3号被保険者の特例届出が実施された。
この特例届出は、本来なら第3号被保険者の届出をした場合、過去の分は届出から2年前までしかさかのぼって納付済と認められないものが、特例によって全期間納付済とみなされるものである。
このときの届出期間終了前には、昼のワイドショーで「奥さん、年金手帳を持って市役所へ行きましょう」と絶叫した有名タレントのおかげで市役所の年金窓口はまるでバーゲンセールのような大行列が各地で見られたという。
しかし、そんなことで届出漏れが解消されるはずもなく、8年後の2005年(平成17年)4月以降は、さらなる国民年金の第3号被保険者の特例届出が実施されて現在に至っている。
ちなみに、2002年(平成14年)4月からは、届出漏れを防止するために、夫の勤務先事業所を通じて健康保険の被扶養者の申請する際に、国民年金の第3号被保険者の届出もすることになっているので、夫が転職を繰り返したとしてもそれほど問題は発生しないだろう。
ところで、過去2回の救済策はあくまで第3号被保険者の届出漏れの救済だった。
それでも共働き夫婦、特に妻側からの非難は相当なものだったらしい。
要するに「金を払ってないのだから書類くらい書けよ。そんなこともしない人を救済する必要なんかない。」というものだ。
ところが、今回の救済策は、夫が会社をやめたのが明らかにわかっていたはずなのに何もしていなかった人を「貴方に手続きをする必要があるとお知らせしなかった役所(社会保険庁)が全部悪いのです。お詫びに年金払います。」と言って救済してあげるものだ。
例えば、2005年(平成17年)3月で夫が会社をやめていたとする。
本来ならここで夫婦共に第1号被保険者となって保険料を納めるか、保険料の免除の申請をするのだが、それが漏れていたということで未納扱いになるはずだった。
ところが今回の「適用3号」というものは、仮に今年の3月に申請した場合、役所が全部悪いのですからお詫びに今から2年前の2009年(平成20年)2月までは奥さんだけ保険料を納めたことにします、というものだ。(日本生活設計-第3号被保険者に「運用3号適用」という新たな救済制度)
しかもこの制度の適用は、第19回年金記録回復委員会の資料「資料4-2 第3号被保険者期間として記録管理されていた期間が実際には第1号被保険者期間であったことが事後的に判明した場合の取扱いについて(案)」を見る限り、国民年金法の改正はおろか、政令も規則さえも変えずに単に厚生労働省年金局から日本年金機構への通知だけで行われている感がある。
珍しく朝日新聞が「不公平」な制度だと論じているが、マジメに役所からの書類を読んで手続きをした人より、何もしなかった人が優遇されるのは明らかにおかしい。
しかも、その原資は現役のサラリーマンが出すのだ。
それでも彼女たちは「第3号被保険者(妻)の保険料は夫が払っているはずです」というデマを吹聴し、市役所や年金事務所で罵声を上げ続けるのだろうか。
ところで、一般に言われるように本当に役所が全部悪いのか。
社会保険庁の後を継いだ日本年金機構のQ&Aにこういうのがある。
| <問> | 国民年金加入の届書が送られてきたのですが、なぜでしょうか。 |
| <答> | 基礎年金番号を平成9年1月から実施し、これを活用することにより公的年金制度への加入の状況がわかるようになりました。
このため、あなたの場合のように、あなたやあなたの配偶者が転職したことや退職したことに伴って国民年金の種別変更などの届出が必要となっていながら、届出がまだされていないと思われる方には、勧奨状によりお知らせを行うこととしました。
つきましては、送付された届書に必要事項を記入のうえ、お住まいの市・区役所または町村役場の国民年金担当窓口で加入の届出を行ってください。
なお、届出をされませんと、年金を受けとるための期間が足りなくなって年金が受けとれなくなったり、受けとる年金額が少なくなったりします。
また、病気やケガにより障害となった場合などの保障も受けられなくなりますので、あなたの将来の年金権を確保するためにも届出を行ってください。 |
これについては私が社会保険庁があった時代でさえ友人宅へ送られてきた現物を見たことがあるので間違いない。
要は、夫が会社をやめて厚生年金加入者でなくなったので、妻(第3号被保険者)である貴方も手続きをしてください、という通知だ。
それ以外にも市役所で国民健康保険に加入する際に、余程低レベルな職員に当たらない限り、年金も手続きが必要だと言われるはずだ。
夫がすぐに転職して、うっかりというなら空白期間はそれほどないはず、従って、今回の救済策は明らかに会社をやめたのがわかっていたはずなのに手続きをしていない人の救済というわけだ。
これらを合わせると、「知らなかった」とか「教えてくれなかった」などという言い訳は、一部の例外(日本語が読めない外国人妻やドメスティック・バイオレンスで逃げている人、海外居住者など)を除けば、とんでもハップンな、まさに怠慢主婦、クレーマーゴネ子の戯言としか言いようがない。
おそらく、彼女たちは年金の種別変更の手続きが必要だと言われたときは、「年金など貰えないのに手続きしてどうする」などと、うそぶいていたにもかかわらず、いざ受給申請する段階になったら、犯罪的不祥事の尻拭いのために旧社会保険庁の職員が強く出れないのをいいことに「今までは何も知らせてくれなかった。民営化するというならお客様(国民)のために役立つところを見せろ。」などと口汚く罵ったことだろう。
唯一の救いは、第19回年金記録回復委員会資料「資料4-1『3号期間として管理されている不整合期間』の取り扱いについて」の中で、「直近2年間の対応について」ということで、夫がすでに会社をやめている場合は、職権で妻の方も第3号被保険者でなくす、という対応を取ることだろうか。
これによって、納付書が強制的に送られるので、「適用3号」というおぞましい制度も時間とととも終焉するだろうが、今まで見かけ上納付されていたことになっていた保険料が、本当に未納になるのだから、国民年金の納付率がさらに落ち込むことだろう。
そのとき、表面上の数字だけを追いかけるメディアは何と報道するのだろうか。
もはや、年金受給者たる高齢者に加え、保険料を負担しない第3号被保険者(専業主婦)、さらには非正規雇用などで年金保険料が払えず免除を申請している若者、これらすべてを減り続ける現役正社員(公務員)だけで支えるという歪な年金制度が持たないことは明白である。
どんな策を弄しても、企業が正社員を雇わなくなれば、厚生年金を負担する者はますます減り、ますます1人当たりの保険料を上げざるを得なくなる。
それが未来永劫に続けられるわけではないことは言われなくてもわかるだろう。
今から3年前、2008年1月22日のダイヤモンド・オンラインに「日本の『年金改革行き最終列車』はすでに出発した」という辻広雅文氏のコラムが掲載されていた。
そこには、「2004年9月のIMF会議の席上で『年金改革行き最終列車はいつ出るか(The Last Train for Pension Reform Departs in...)』なる資料が配られた。そこには、50歳以上の中高年人口が有権者の半数を超えたときが、その列車の発車時刻だと書かれていた。だが、日本はすでにリストにない。少子高齢化が図抜けて早く進む日本は、2003年10月に50歳以上の中高年が有権者数の5割を超え、すでに年金改革行き最終列車はホームを出てしまっていたのである。」とあった。
今回の「適用3号」なる専業主婦救済策は、年金制度上の既得権者は年金受給者たる高齢者だけではなく、専業主婦もそうであることを、そして、日本ではもはや年金改革など絶望的に無理だということを私たちに示している。
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年金切り替え漏れ数十万人=夫が脱サラ、退職の専業主婦―救済策周知へ、年金機構 (2011.2.1 朝日新聞)
サラリーマンの夫が退職や脱サラで厚生年金の対象から外れた場合、専業主婦の妻は市町村に届け出て、国民年金保険料の支払いが必要になるが、日本年金機構は31日、この切り替え手続きをしていない人が「数十万人、場合によっては100万人以上に上る可能性がある」との推計を明らかにした。
厚生労働省は、こうした専業主婦を対象にした救済策を今年1月から実施しており、同機構は周知を図る方針だ。
現行制度では、▽自営業者ら国民年金加入者を1号▽厚生年金や共済年金の加入者を2号▽2号に扶養される配偶者を3号被保険者とし、3号は保険料の支払いが不要。
2号の夫が転職などで1号となったり、妻の収入が年収130万円以上になったりした場合、妻は1号として市町村に届け出る必要がある。
これを怠ると、受給額が減額されたり、全く受け取れなくなったりする恐れがある。
しかし、同省は、切り替えの必要性が周知徹底されていなかったとして、今年1月から過去2年分の国民年金保険料を納めれば、それより前の期間は保険料を支払ったとみなすことを決めた。
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主婦の年金-この不公平は許されない (2011.2.2 朝日新聞社説)
サラリーマンの妻を主な対象にした年金の「3号被保険者」の扱いで、正直者が損をする状況が生まれている。行政がつくったこの不公平を放置することはできない。
3号は自分で保険料を払わなくても年金に加入できる。
しかし、夫が脱サラしたり、本人の収入が多くなって扶養を外れたりすれば、妻は届け出をして3号から1号被保険者になり、保険料を払うことが法律で義務づけられている。
夫がリストラで職を失った場合も同様だ。
ところが、本人が届け出をしなかったため、3号のままの記録になっている人が数十万人から100万人もいることが分かった。
そこで厚生労働省は今年1月から、こうした人たちに最近2年分の保険料を請求するが、それ以前は、夫がサラリーマンをやめるなど3号に該当しない期間でも3号と認めることにした。
届け出をして1号に切り替え、保険料を納めてきた人に比べて不公平だ。
従来は届け漏れが見つかれば「未納」とされ、将来受け取る年金を減額されてきた。
「従来の扱いだと、低年金や無年金になる人がたくさん出る」「苦情が殺到し、対応しきれない」と、厚労省は「救済」の必要を強調する。
だが、すでに記録を訂正して、低年金や無年金になった人は救済されない。
日本年金機構の現場職員からは、「今後も切り替えない方が得だという人が出てきかねない」といった心配の声が出ている。
より公平な方法も、現場の職員や社会保険労務士から提案されている。
保険料を払えるだけ払ってもらい、払えない分は加入期間としては認めるが、年金の受給額には反映させない、というやり方だ。
これなら、公平感が保たれ、無年金の人を増やさないで済む。
今回の処理方法が議論され、固まったのは長妻昭厚労相時代である。「ミスター年金」と呼ばれた長妻さんにふさわしい判断とは思えない。
幸い、年金業務については、総務省に外部の有識者を集めた監視委員会が設置されている。厚労省とは別の立場から、くわしい経緯を調べ、点検して是正を促してもらいたい。
今からでも遅くない。このような不公平な措置は、やめるべきだ。
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