2017.11.08

安倍政権は2018年(平成30年)内に憲法改正できるか

2017年9月19日、国連総会の一般討論演説で米国大統領のドナルド・トランプ(Donald Trump)氏は、北朝鮮を名指しして非難し、北朝鮮の兵器プログラムに関する対立が戦争に発展した場合、「北朝鮮を完全に壊滅させる以外に選択肢はなくなる。(If the dispute over its weapons programs leads to war, Trump said, "we will have no choice but to totally destroy North Korea.")」と言明した。(2017年9月19日 ブルームバーグ-トランプ米大統領:北朝鮮「ロケットマン」が破滅を招く-国連で演説 Washington Post on September 19, 2017 - In U.N. speech, Trump threatens to 'totally destroy North Korea' and calls Kim Jong Un 'Rocket Man'
その翌日、安倍首相も国連総会の一般討論演説で「核・ミサイル開発を続ける北朝鮮によって核不拡散体制は『史上最も確信的な破壊者によって、深刻な打撃を受けようとしている』と非難し、全ての核・ミサイル計画を放棄させるために必要な行動は『対話ではない、圧力』だと強調。日本は日米同盟、日米韓の結束によって北朝鮮の脅威に立ち向かい、『全ての選択肢はテーブルの上にある』とする米国の立場を『一貫して支持する』と改めて表明した。(2017年9月21日 ブルームバーグ-安倍首相:北朝鮮は不拡散体制の「最も確信的な破壊者」-国連演説 Reuters on September 20, 2017 - Japan's Abe says time for talk is over on North Korea
もはや鈴木傾城氏が、2017年9月21日付のコラムで書いているように「対話ができない体質の北朝鮮と対話したところで意味がない」ところまで情勢は緊迫していた。
9月28日、こうした戦後最大の難局にあたって、安倍晋三首相は衆議院を解散し、それを「国難突破解散」と名付けて、国民の信を問うとともに、日本国憲法第9条の改正を公約として掲げた。(2017年10月2日 ブルームバーグ-自民政権公約:北朝鮮、憲法改正、アベノミクス加速などが柱

そして、10月22日に行われた第48回衆議院議員総選挙の与党大勝を受けて、11月1日に第4次安倍内閣が発足した。(2017年11月1日 産経新聞-第4次安倍内閣が発足 「安保環境最も厳しい」対北圧力「最大限高める」 補正予算案編成指示 特別国会は来月9日まで
従って、憲法改正を公約に掲げた自民党が大勝した上、改憲勢力が衆議院の3分の2を上回ることになったのであれば、憲法改正案の上程を政治日程に乗せるのは日本国宰相として当然の責務である。(2017年10月23日 産経新聞-自公300超 改憲勢力3分の2 立憲民主党が野党第一党に
私が2014年12月20日のコラムで書いたように「健全な野党がないのが日本の最大の政治的欠陥」であり、戦後の日本は、なぜか「国防をしなくていい」と主張する政党が常に最大の野党で、憲法改正の議論ですら彼らによって邪魔されて続けてきた。

その政治的麻痺の状況がようやくなくなりつつあり、ケント・ギルバート(Kent Sidney Gilbert)氏が夕刊フジで連載する「ニッポンの新常識」のコラム「衆院選の総括、夢想主義から目覚めた日本人 いつまでも米国に依存している異常さに気づくべき(2017年10月28日)では、「ドナルド・トランプ米大統領は『日本の自立』を望んでいる。財政的にも技術的にも能力的にも、英国やドイツ以上の防衛力を十分持てる日本が、いつまでも米国に依存している異常さに気づくべきだ。改憲は日本の自立の第一歩である。日本の政治状況は『保守vsリベラル』ではなく、『現実主義vs夢想主義』だ。夢想から目覚めた人々が衆院選の結果を生んだ。あと一息である。」と書かれている。
彼に言われるまでもなく、「9条2項は異常。病気だ」「改正してようやく占領が終わる」(憲法改正国民集会・詳報)と思うのだ。

ところで、私は基本的に第3国(例えば北朝鮮)が日本を攻撃してきた場合の対処方法は3つしかないと思っている。
このことは2003年3月23日に掲載した「イラク戦争に思う」の中でも書いたことなのだが、特に、憲法改正論議すら毛嫌いする反戦・平和団体やメディア、政治家(2017年3月16日 Darkness TIGA-日本を憎悪する反日工作員、侵略(のりこえ)を画策している=最近ではこれらの人は日本の仮想敵国、要は中国・韓国・北朝鮮の工作員が多いとも言われる)の支持者を自認する人に、以下の選択肢以外に方法があるならお聞きしたいものだ。
こういう質問をすると、「戦争をしないための外交交渉をすれば良いのです」などと言う人が日本人には多いが、トランプ政権の要、ジェームズ・マティス国防長官(Defense Secretary, James Norman Mattis)は、「北朝鮮の核問題を外交的に解決するために、われわれはあらゆる手を尽くす。しかし究極的には、外交官が強い立場で交渉に臨むためにも、陸海空軍の強力なサポートが必要だ。(While the US and South Korea were "doing everything" possible to reach a diplomatic solution, the combined military presence was key to the strategy. Ultimately our diplomats have to be backed up by strong soldiers, sailors, airmen and marines.)」と言っている。
つまり外交的解決を徹底的に探りつつ、いつでも軍事的選択肢を取れる準備を万端に備えておけ、ということであり、外交交渉が決裂したときの最終形が戦争なのである。(2017年11月1日 ダイヤモンドオンライン-アメリカの哲人将軍マティスも警戒する新旧大国で戦争を不可避にする歴史の罠 CNN on October 27, 2017 - US Defense Secretary James Mattis at Korean DMZ: 'Our goal is not war'

自ら武器を取って戦う-これがグローバルスタンダードだ。
永世中立を宣言しているスイスは、自国の防衛のためには国民全員が武器を取る。
いくら中立などと言っても、例えば、1940年4月9日にナチスドイツに占領されたデンマークとノルウェーのように蹂躙されるのだから、そういった宣言がいざというときに何の役にも立たないことを彼らは知っている。(2009年9月29日 リアリズムと防衛ブログ-「中立国の戦い スイス、スウェーデン、スペインの苦難の道標」
日本が外交努力を続けていれば攻めてくる国などないと言う人は、なぜ湾岸戦争が起きたか、イラクはクウェートを攻めたか学習するといい。
鈴木傾城氏は、2017年9月5日付の「日本も今すぐ核保有を宣言して大量の核兵器を所有すべきだ」というコラムで、「日本が最も弱い周辺国だから北朝鮮からはミサイルを打たれ、韓国からは謝罪と賠償を要求される。武器を持つことは理不尽な暴力に対する抑止力になる。」と書いている。
ついでながら、「韓国から謝罪と賠償を要求されない中国の報復外交を見習え(2017年8月26日)」というのも読むといいだろう。
日本の諺に「賢者は他人の失敗(歴史)に学び、愚者は自分の失敗(経験)に学ぶ(Wise men learn by other men's mistakes; fools by their own.)」というものがある。
今こそ肝に命じるときではなかろうか。
誰かに守ってもらう。これが今の日本の姿である。
米軍は一種の傭兵なのだから、彼らに対価を支払う(在日米軍駐留経費負担)のは当然の成行きである。(2017年1月26日 日経新聞-在日米軍駐留経費、日本負担は86% 防衛省試算
14年前のイラク戦争当時、2003年3月20日のイラク問題に関する対応について(Press Conference by Prime Minister Junichiro Koizumi)における小泉純一郎首相(当時)の発言は、そのことを認識したものという評価を英国のBBCから受けた。
BBC東京特派員のチャールズ・スキャンロン(Charles Scanlon)は「日本はアメリカに拘束されている(Japan's binding ties to the US.)」という記事で、「たくさんの日本人が反戦のために通りを埋め尽くしても小泉首相がアメリカを支持すると言ったのは、来る北朝鮮の脅威に際してアメリカの保護が必要になることを彼は理解していたからだ。」と書いている。
無条件降伏。運命だと思ってあきらめる。
自力で逃亡するしかないが、周囲は海であるから無事に台湾まで行けることを神に祈ろう。
一部の反戦・平和団体や政治家の主張を忠実に実行するとこれしか選択肢はない。(2017年8月29日 Darkness TIGA-憲法第九条を守ったところで、ミサイルも侵略も止まらない
仮に、自衛隊が違憲の存在ということで武装を解除され、それに加えて、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(日米安全保障条約)(Security Treaty Between the United States and Japan/Japan-U.S. Security Treaty)も失効したら日本は丸腰になる。
刑法第81条と第82条に規定する外患の罪は、外国が日本に武力行使をさせるようにした者や加わった者だけが処罰されるのだが、彼らの言動はそれに相当するようなことをやっていることを認識して欲しいものだ。

私が思うに憲法改正案の国会上程はまったなしだ。
2019年夏には参議院議員選挙を控えているため、それから逆算すると、来年(2018年)の通常国会で憲法改正案を上程できなければ、安倍首相の目論見は雲散霧消しかねない。
また、アベノミクス(安倍内閣の経済政策)はすでに綻びが出ているし、既定路線となっている2019年10月(2年後)の消費税増税(8%から10%)が実施されるのは確実となったので(2017年8月5日 日経新聞-首相、消費増税「予定通り」 19年10月に10%)、それ以降、日本経済の内需が、よりいっそう冷え込むのは避けられないだろう。(2017年10月6日 Darkness TIGA-消費税を上げれば日本経済と日本人は地獄の底に落ちていく
おそらく、安倍首相は9月28日の衆議院解散後の日経平均株価のよりいっそうの上昇と(2017年11月7日 日経新聞-株高に3つの追い風 企業業績・世界景気・金融緩和)、今回の選挙で無敵であることが証明されたので、消費税増税が自分たちの足をすくうなどとは夢にも思っていないかもしれないが、消費税増税によって景気が冷え込めば、憲法改正どころか、内閣が吹っ飛びかねない事態になるだろう。
そういった意味でも、この期に及んで、憲法改正審議にすら二の足を踏むような与野党の国会議員がいるならば、国民が主権者であることをわからせるために、上記の3項目のどれを選択するのか踏み絵を迫るべきだろう。
北朝鮮のやっていることがブラフ(はったり)であることは重々承知の上で言うが、「平和を願うなら、戦争の準備をせよ(Si vis pacem, para bellum.)」という言葉は今でも通用することなのだ。

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2017.11.06

FXの証拠金倍率上限の引き下げ案に個人投資家も反対意見を出そう

為替取引の世界でミセスワタナベと呼ばれる日本のFX個人投資家に対して、委託証拠金倍率の規制を強化しようという案が出ている。
現在、通貨関連デリバティブ取引(外国為替証拠金取引/FX)の委託証拠金として最低限必要な額は、金融商品取引業等に関する内閣府令(平成19年内閣府令第52号)第117条第7項にいう約定時必要預託額と、第8項にいう維持必要預託額として、取引額の百分の四と決められている。
つまり、この規定がFX証拠金倍率の上限が25倍という根拠なのだが、金融庁が来年にもそれを変更しようというのが2017年9月28日付の日経新聞の記事として報じられている。
7年前(2010年8月1日)に委託証拠金倍率が引き下げられたときのパブリックコメントの結果が、2009年(平成21年)7月31日付で「金融商品取引業等に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)」等に対するパブリックコメントの結果等について」という表題で掲載されているが、パブリックコメントを募集している段階では、ある程度法令改正の方向性が固まっているので、根本的な反対意見は聞き入れられないことも多いという。
今回のように、メディアにリークした時点で、検討に入ったという言い方をしている場合は、所管の官庁が世論に対して観測気球を上げている可能性が高く、この時点で反対意見を言った方が効果的だと思うのだ。

サンワード貿易から出ている月刊情報誌「Rich Life」の2017年11月号で小次郎講師は、「レバレッジ規制によって個人のFX投資家の抱える問題が解決するわけではない。投資家に予期せぬリスクを軽減させるためには投資家教育しかない。投資教育こそが金融庁が推進しなければならない最優先課題である。今後、FXの証拠金倍率の変更案についての話し合いが始まると思うが、この流れを変えることができるのは投資家の声だ。個人投資家の声が大きく広がれば金融庁は考えを変えざるを得ないだろう。」と述べている。
この号では、小次郎講師が証券税制の改正要望について税務署に質したところ、国民が声を上げてないから政府当局者からはニーズがないと思われているとも書かれている。
それならば、来年の通常国会が始まる前に投資家が声を上げようではないか。
もちろん、内閣府令は国会審議は不要なものだが、通常、こうした政令や規則の改正案は国会の会期中に処理されることが多いからだ。
宛先は、麻生太郎内閣府特命担当大臣(金融)と、金融サービス利用者相談室ウェブサイト受付窓口でいいのではなかろうか。
9月28日付で日経新聞で掲載されていたFX証拠金倍率の上限規制の変更について、金融商品取引業等に関する内閣府令(平成19年内閣府令第52号)第117条の改正を望まない旨と、自分なりの理由を書いて送ればいいかと思う。

ところで、皆さんはこの問題が単にFX投資家だけの問題だと思っていないだろうか。
私は、こうした金融庁の規制強化のメンタリティの根底にあるのは、今年の流行語大賞になってもおかしくない「億り人」が、これ以上出ることを望んでないという穿った見方をしている。
2016年8月21日付で私が書いた「65歳での奴隷解放宣言、金持ち父さんが嫌いな霞が関官僚のメンタリティ」というのは、霞が関の役人の心の中に流れる大きな潮流だからだ。
今から13年前、私が敬愛する知日投資家のピーター・タスカ(Peter Tasker)氏は霞が関官僚のメンタリティについて、日本の景気回復を望まない人々(2004年3月31日)と、経済に毒針を刺す官僚というサソリ(2004年11月17日)というコラムを掲載していたが、これは現在でも脈々と続いている。
そう、日本のエスタブリッシュメントたちは国民が社畜を脱して金持ちになって欲しいとは一つも思っていないのだ。

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FX証拠金倍率の上限下げへ 金融庁検討、最大25倍から10倍に (2017.9.28 日経新聞)

金融庁は外国為替証拠金取引(FX)の証拠金倍率(レバレッジ)を引き下げる検討に入った。
現行の最大25倍から10倍程度に下げる案が有力。
外国為替相場が急変動した際、個人投資家や金融機関が想定を超える損失を抱えるリスクが高まっていると判断した。
国内取引高は約5千兆円に上る。
規制見直しで日本発の市場混乱を防ぐ。

金融庁はFXの業界団体、金融先物取引業協会と規制見直しに向け協議を開始。
早ければ来年にも内閣府令を改正して実施する可能性がある。

個人投資家は現在、手元資金の25倍までの範囲で取引できる。
手元に4万円の証拠金があれば、100万円まで取引できる計算だ。
レバレッジを10倍にすると、必要な証拠金は10万円になる。
金融庁は過去の為替相場から、変動率がどんなに大きくなっても元本がなくならないようにする方針で、現在は「10倍程度」が妥当とみている。

また金融庁はFX業者の自己資本規制も強化する方向で見直す。
現行は自己資本比率が120%を下回ると業務改善命令の対象になる。
FX業者へのストレステスト(健全性審査)では、取引先が破綻した場合に120%以下になる業者が複数あった。

ただFX業界の反発は必至。
取引量の低下から収益減や為替市場の流動性低下を懸念する声がある。
FX取引をけん引してきた個人の投資行動にも影響が出そうだ。

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2017.10.28

公立学校教員の部活顧問強制は違法、文科省、教委と日教組の不作為で潰れる教師たち

最近では、民間企業のサラリーマンの長時間労働や過労死などブラック労働環境のニュースが多く流れているが、それに負けず劣らず、公立学校教員の労働環境がブラックだという記事も多くなってきた。
そこで、私が2017年10月10日に書いた「憲法違反のサービス残業、不払い賃金は民法の不当利得返還請求で取り戻せるか」に続いて、公立学校教員の労働環境がブラックだということについて調べていると、日本は労働関係法規が全く守られていないトンデモない国だということがよくわかる。
実際のところ、日本政府は国際労働機関(ILO/International Labour Organization)が批准を求める条約のうち、労働時間に関するものは一つも批准していないし(2017年1月30日 弁護士ドットコムニュース-日本、労働時間に関する「ILO条約」批准ゼロ・・・労働問題の「遅れている国」なのか?)、八つある基本労働条約のうち、批准していないものが二つもあるという。(2015年1月14日 東京新聞-ILO基本条約と日本 二つが未批准、問われる姿勢
もっとも、このことだけをもって日本が遅れているとは言えないだろうが、2016年8月10日付のピコシム氏のブログ「国連から是正勧告 日本の長時間労働と奴隷状態の29万人の存在」にあるように、政府が労働者の人権をあまり重要視していないというのは事実だろう。

ところで、2017年9月11日付の東洋経済は「中学教師の何とも過酷で報われない労働現場」という記事を掲載しているが、この記事の中で、「部活動問題で深刻なのは長時間労働の一因になったり、休みが取れなかったりすることだけでない。『公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法』(給特法)によって、時間外勤務手当や休日給は支給されないこととなっている。教員には学校外の教育活動や夏休みなど長期の学校休業期間などがあり、また『勤務時間の管理が困難』という理由から。その代わりに給料月額4%分の教職調整額が支給されている。」というくだりがある。
私はこういうとき、必ずその法律がどうなっているのか当たってから記事を書くことにしているので、調べてみると、公立学校教員の部活顧問強制は違法という結論になる。
なぜなら、公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)第6条第1項と、公立の義務教育諸学校等の教育職員を正規の勤務時間を超えて勤務させる場合等の基準を定める政令によって、教員に時間外勤務を命ずるときは、臨時又は緊急やむを得ない場合に限るとあるので、恒常的に時間外勤務となるような仕事(部活顧問など)を命じることは違法なのだ。

そもそも公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)第2条第2項の「教育職員については、時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない。」というのが、労働基準法などの法規と照らして適正な条文なのか大いに疑問に思うが、これであるがゆえに、原則として教員に残業や休日出勤はさせないという規定になっているのであろう。
それにもかかわらず、名古屋大学大学院教育発達科学研究科・内田良准教授の「拡がる教員の部活指導義務 『全員顧問制度』の拡大とその背景に迫る(2017年6月18日)」といった記事が配信されているところをみると、文部科学省、各地方自治体の教育委員会、そして日本教職員組合(日教組)の不作為によって、現場の教員が苦しめられているとしか言いようがない。
もし、現行法によって公立学校の教員を働かせ続けるなら、日野瑛太郎氏の2016年9月10日付の脱社畜ブログにあるように「『教員は勉強を教えるだけの職業』でいいんじゃないの?」というのを徹底すべきだろう。

2017年2月8日付の東洋経済では「働かせ放題の『みなし残業』など(法的に)存在しない」という記事があるが、臨時という名の恒常的時間外労働を行わせて、法的に働かせ放題が存在しているのが、公立学校の教員の世界だ。(2016年9月10日 お前ら、社畜で人生楽しいか?-みなし残業(固定残業制度)を導入してる会社はブラック企業と断言する!
一筋の光明として、来年度から非常勤の事務補助スタッフを付けるということだが、部活顧問も外部人材を採用するか、地域のクラブなどに活動自体を委ねるべきだろう。(2017年7月18日 ニューズウイーク-アメリカの部活動は、なぜ「ブラック化」しないのか 2017年8月24日 産経新聞-教員事務、支援員を配置へ 来年度、公立小中の負担軽減
また、教員の労働環境がブラックになっているのを助長しているのがモンスターペアレントと呼ばれるクレーマーで(2015年12月16日-異常な土下座要求にNO! 「モンスターペアレント」の”とんでもクレーム” 弁護士の大ヒット対処マニュアルは万能か)、もはや、モンスターペアレントに対応するために残業させられた場合に、時間外手当を支給しないというのは時代遅れであるどころか、今や教師側が彼らに対して慰謝料を請求してもいいくらいのレベルになっているのではなかろうか。

こうした環境の中で、過労死を防ぐためにはハッキリとNO!と言う勇気を持つことだ!(2017年1月8日 お前ら、社畜で人生楽しいか?)というのは正しいのだが、地方議会の議員や保護者(モンスターペアレント)、心ないネット住民やメディアのバッシングで、正論を認めてもらえないのが公立学校の教員の世界に思える。
例えば、毎日4時間もタダ働きさせられるなら部活顧問などやりたくないという正論を吐いても、認めてもらえないばかりか、ディスられたり(dis=けなす)、人格攻撃されたりするので、精神異常をきたすか、過労で倒れるかの二択になるだろう。
最も端的な例は、私が2013年2月10日付で書いた「政治家と幹部公務員の自己保身、記者クラブメディアの無能に翻弄された現場の悲劇」で、責任のすべてが政治家や幹部公務員とメディアにあるのに、口汚く罵られたのは末端公務員という図式だ。
そうなると、優秀な人ほど最初から教員という職業を選択しないようになり、ますます公立学校の教員のレベルは落ちるという負のスパイラルになるだろう。
「教育は国家百年の大計」というが、それを蔑ろにした日本に未来はあるのだろうか。(2011年10月17日-日本人愚民化教育の成れの果て

最近になって、私は、インターネット署名サイトのchange.orgで行われている「教職員の時間外労働にも上限規制を設けて下さい!!」や、「部活がブラックすぎて倒れそう・・・ 教師に部活の顧問をする・しないの選択権を下さい!」といったキャンペーンに賛同して署名を行った。
本来なら、こういう活動は教員有志がやるものでなくて、日教組が主導して然るべきものだろう。
憲法9条を守れと叫ぶのでなく、教員の労働条件や健康、生命を守れと要求するのが、あなた方の仕事ではないのか。
それに、法令を守らせるべき立場の文部科学省や各地方自治体の教育委員会は何をやっているのだろうか。
それとも、任意という名で実質的に強制する日本の労働環境に頬かむりして、教員の部活顧問は強制ではないし、時間外労働も命じていないと強弁し続けるつもりだろうか。

日本が未批准のILO条約の中に第151号(1978年の労働関係(公務)条約)がある。
これは、公の機関に雇用される「公的被用者」を対象として、団結権の保護、公的被用者団体への便宜供与、雇用条件決定手続、紛争の解決、市民的、政治的権利のそれぞれについて規定しているものだが、日教組がまともな労働組合としての活動をしないで、日本の仮想敵国(中国、韓国、北朝鮮)を利する行為ばかりをしているうちに、今や、彼らが何を言っても国民は聞く耳を持たなくなってしまった。
自民党が公約にしている憲法改正、その改正草案の第28条(勤労者の団結権等)第2項に、「公務員については、全体の奉仕者であることに鑑み、法律の定めるところにより、前項に規定する権利の全部又は一部を制限することができる。この場合においては、公務員の勤労条件を改善するため、必要な措置が講じられなければならない。」が加わることになっている。
今でさえ、労働関係法規が全く守られていないトンデモない国である日本の教員にとって、ILO条約第151号が半永久的に批准されることがないばかりか、労働条件を改善するための最後の頼みの綱も断ち切られようとしている。
そして、そのことは憲法改正推進派の怒涛のような勢いと、憲法9条を守れの大合唱の中で、誰にも顧みられることはなく忘れ去られていくだろう。

今から15年前、2002年の第155回国会(臨時会)で「裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律」が可決成立し、彼らの報酬が減額されることになったとき、野党の中では反対の論陣を張った人もいたが(2002年11月13日-衆議院法務委員会 2002年11月19日-参議院法務委員会)、9条問題では政府に噛み付くマスコミや、「憲法を守れ」と主張する市民団体は全くの音なしだった。
そればかりか、衆議院法務委員会の席上、山本庸幸内閣法制局第二部長と、山崎敏充最高裁判所事務総局人事局長は、「裁判官の報酬については、司法権の独立を担保するため、憲法79条6項と80条2項で減額できない旨規定されているが、2002年9月4日の最高裁判所裁判官会議においては、『国家財政上の理由などで、やむを得ず立法、行政の公務員も減額される場合、裁判官報酬の減額は身分保障などの侵害には当たらず許される』との見解が出されており、学界において合憲説も主張されていることも踏まえ、現下の社会の諸情況に照らし、今回の引き下げは容認、政府案に賛成の旨報告され了承された。」と答弁した。
実際のところ、前出のとおり、裁判官報酬減額法は違憲なのだが(自民党の憲法改正草案では合憲)、日本では末端公務員の人権は憲法でも守られないほど軽いものなのだ。
その公務員に労働基準法違反事件を裁いて欲しいと言うサラリーマンはどんな気持ちを持つだろうか。

公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法
(昭和46年法律第77号)
第2条(定義)
この法律において、「義務教育諸学校等」とは、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に規定する公立の小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校又は幼稚園をいう。
この法律において、「教育職員」とは、義務教育諸学校等の校長(園長を含む。次条第一項において同じ。)、副校長(副園長を含む。同項において同じ。)、教頭、主幹教諭、指導教諭、教諭、養護教諭、栄養教諭、助教諭、養護助教諭、講師(常時勤務の者及び地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)第二十八条の五第一項に規定する短時間勤務の職を占める者に限る。)、実習助手及び寄宿舎指導員をいう。
第3条(教育職員の教職調整額の支給等)
教育職員(校長、副校長及び教頭を除く。以下この条において同じ。)には、その者の給料月額の百分の四に相当する額を基準として、条例で定めるところにより、教職調整額を支給しなければならない。
教育職員については、時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない。
第一項の教職調整額の支給を受ける者の給与に関し、次の各号に掲げる場合においては、当該各号に定める内容を条例で定めるものとする。
地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百四条第二項に規定する地域手当、特地勤務手当(これに準ずる手当を含む。)、期末手当、勤勉手当、定時制通信教育手当、産業教育手当又は退職手当について給料をその算定の基礎とする場合 当該給料の額に教職調整額の額を加えた額を算定の基礎とすること。
休職の期間中に給料が支給される場合 当該給料の額に教職調整額の額を加えた額を支給すること。
外国の地方公共団体の機遣される一般職の地方公務員の処遇等に関する法律(昭和六十二年法律第七十八号)第二条第一項の規定により派遣された者に給料が支給される場合 当該給料の額に教職調整額の額を加えた額を支給すること。
公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律(平成十二年法律第五十号)第二条第一項の規定により派遣された者に給料が支給される場合 当該給料の額に教職調整額の額を加えた額を支給すること。
第6条(教育職員の正規の勤務時間を超える勤務等)
教育職員(管理職手当を受ける者を除く。以下この条において同じ。)を正規の勤務時間一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律(平成六年法律第三十三号)第五条から第八条まで、第十一条及び第十二条の規定に相当する条例の規定による勤務時間をいう。第三項において同じ。)を超えて勤務させる場合は、政令で定める基準に従い条例で定める場合に限るものとする。
前項の政令を定める場合においては、教育職員の健康と福祉を害することとならないよう勤務の実情について十分な配慮がされなければならない。
第一項の規定は、次に掲げる日において教育職員を正規の勤務時間中に勤務させる場合について準用する。
一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律第十四条に規定する祝日法による休日及び年末年始の休日に相当する日
一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第九十五号)第十七条の規定に相当する条例の規定により休日勤務手当が一般の職員に対して支給される日(前号に掲げる日を除く。)
公立の義務教育諸学校等の教育職員を正規の勤務時間を超えて勤務させる場合等の基準を定める政令
(平成15年政令第484号)
公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(以下「法」という。)第六条第一項(同条第三項において準用する場合を含む。)の政令で定める基準は、次のとおりとする。
教育職員(法第六条第一項に規定する教育職員をいう。次号において同じ。)については、正規の勤務時間(同項に規定する正規の勤務時間をいう。以下同じ。)の割振りを適正に行い、原則として時間外勤務(正規の勤務時間を超えて勤務することをいい、同条第三項各号に掲げる日において正規の勤務時間中に勤務することを含む。次号において同じ。)を命じないものとすること。
教育職員に対し時間外勤務を命ずる場合は、次に掲げる業務に従事する場合であって臨時又は緊急のやむを得ない必要があるときに限るものとすること。
校外実習その他生徒の実習に関する業務
修学旅行その他学校の行事に関する業務
職員会議(設置者の定めるところにより学校に置かれるものをいう。)に関する業務
非常災害の場合、児童又は生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合その他やむを得ない場合に必要な業務

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2017.10.23

総選挙で自民党大勝、日経平均株価史上最長の15連騰

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日経平均株価が、昨日の第48回衆議院議員総選挙で自民党が大勝したのを受けて、史上最長となる15連騰を記録した。(2017年10月23日 株探ニュース-日経平均15連騰達成! デフレ脱却へまっしぐら、歴代1位の連騰記録達成
安倍首相が9月28日に衆議院を解散してからというものの(2017年9月26日 BBC Japan-日本の安倍首相、解散・総選挙を表明 「国難突破」と)、翌週の10月2日から負け知らずの連騰記録を更新し続けている。
特に、当初は総選挙で台風の目と見られていた小池百合子東京都知事率いる希望の党が、民進党合流組の一部を排除すると発言してから支持率が急降下(2017年9月30日 日刊ゲンダイ-「希望の党」公認拒否 民進“排除名簿”に載る15人の名前)、自民党の大勝(第4次安倍内閣)が見込めるようになってからは、日経平均株価の上昇に迷いがなくなっていた。

目下のところ、2016年1月24日の「ニューイヤーセミナー 2016年の投資戦略を考える」で登壇した杉村太蔵氏が「安倍首相は株式市場に親和性のある首相、彼の在任中は日本市場の株価上昇が見込める。」と言ったとおりの展開が継続していくことだろう。
ちなみに、東洋経済では、今日の前場の段階で「日本株は2019年に向けて『大相場』になるかも」という記事を配信しているし、株式投資家にとっては昨日の総選挙における自民党大勝は紛れもないグッドニュースに違いない。

ただ、これで既定路線となっている2019年10月(2年後)の消費税増税(8%から10%)が実施されるのは確実となったので、それ以降、日本経済の内需が、よりいっそう冷え込むのは避けられないだろう。(2017年8月5日 日経新聞-首相、消費増税「予定通り」 19年10月に10%
それと、安倍首相の自民党総裁任期が2018年9月に切れるが(2017年3月5日 朝日新聞-自民党、総裁任期「連続3期9年」に延長 党大会で了承)、このときまでに公約となっている憲法改正に道筋を付けられるかどうかが鍵となろうか。
もし、仮に、安倍首相が3期目の自民党総裁に選出されず、首相を退陣するようなことがあれば、これまた杉村太蔵氏の「安倍首相が退陣した後の首相は、たとえ自民党が政権を握っていたとしても、株式相場と親和性のない人が就任する可能性が高い。」という予言が現実のものとなろう。
ただ、現時点で、彼に代わる自民党総裁候補が見当たらないので、株式相場にとっては安心材料と言えるのだろうか。

(注)日経平均株価は10月24日も続伸し、10月2日からの連騰記録を16に伸ばした。(2017年10月24日 ブルームバーグ-日経平均連騰の最長記録「16」に伸ばす、業績期待と出遅れ評価根強い

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2017.10.22

日本のメディア記者が安全なのと報道の自由度ランキングの低迷は記者クラブが原因だ

産経新聞は、自民党支持層の間では極めて人気の高いメディアだ。
本日の第48回衆議院議員総選挙を前に、日本のメディアの間では各候補者や政党の当落予想なるものが紙面を賑わしているが、左派系メディアの反政権プロパガンダが度を越しているともっぱらの評判である。
度を越すだけならともかく、それが日本の仮想敵国とされる中国、韓国、北朝鮮を利していることが多いので、問題は根深い。
要は、左派系メディアが健全なリベラル系メディアでなく、売国メディアと評されるまでになっているために、政権プロパガンダを垂れ流す提灯メディアは世論から何のお咎めも受けない。
それどころか、提灯メディアの記事を引用したブロガーなどによって、まともな政権批判までが日本をディスってる(dis=けなしている)などと的外れな批判を受けて言論封殺の危機に陥ることもある。
実際のところ、軍事ジャーナリストの清谷信一氏が2017年6月9日付で書いた「【東京新聞名物記者】頑張れ、望月衣塑子姐さん。」などはその好例だろう。

その安倍政権の提灯メディアの代表たる産経新聞が(2017年7月20日 清谷信一公式ブログ-官房長官や大臣のご機嫌を取るのが産経新聞記者の仕事か?)、何が言いたいのかわからない社説を披露して悦に入っている。
左派系メディアの売国ぶりが際立っているために、産経新聞がまともなメディアに見えるのだが、所詮記者クラブで取材ごっこをしているだけのメディアの社説にロクなものはないと証明されたのが、10月19日付の産経抄(社説)だ。
はっきり言って、中段以下の米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)の「日本でリベラリズムは死んだ(The Death of Liberalism in Japan)」(10月15日付の中野晃一氏の投稿記事)のことだけなら、私もそのまま読むだけで終わったであろう。
即断はできないが、「日本を貶める日本人をあぶりだせ」と書かれているので、彼らがそういった主張を繰り広げている人物なのだろうと推定して終わりだからだ。

ところが、社説の冒頭にはマルタで爆殺されたダフネ・カルアナ・ガリチア(Daphne Caruana Galizia)氏のことについて触れている。(2017年10月17日 産経新聞-パナマ文書で実態暴いた女性記者、ダフネ・カルアナ・ガリチアさん殺害か マルタ、車爆弾で The Guardian on 16 October 2017 - Malta car bomb kills Panama Papers journalist
これが、社説の表題である「日本を貶める日本人」と何の関係もないことは明白だ。
いったい何が言いたいのかと言えば、「日本の新聞記者でよかった」と「マルタとは恐ろしい国」ということだろうか。
もし、社説の冒頭でこれを書くのであれば、少なくとも「日本を貶める日本人」とは別のところで書くべきだし、マルタが恐ろしい国などと言うなら、ジャーナリストが恒常的に殺されている国なのか調べるのはメディア記者の基本だ。
私が検索しただけでも2014年12月16日付のAFPの記事「ジャーナリストの殺害、1年で66人 襲撃方法はさらに残虐に」(Reporters Without Borders publishes 2014 round-up of violence against journalists on December 16, 2014)がヒットするのだから、この中にマルタが入っているかを調べてから書くのは当然だろう。
少なくともマルタのジャーナリスト、ダフネ・カルアナ・ガリチア(Daphne Caruana Galizia)氏は権力側の不正を糾弾する記事を書いたことが爆殺の要因になっているのに対し、記者クラブでぬくぬくとしている提灯メディアの記者はそんなことには縁遠いために安全が保障されているに過ぎない。
テロなどとは無縁と思われている日本でも、政官財の暗部に斬り込んだ民主党(現在の立憲民主党)の石井紘基衆院議員は街中で暗殺された。(故石井紘基衆議院議員が命を賭けた官僚総支配体制の打破)(2002年10月25日-毎日新聞 石井議員刺殺:誰が、いったい何の目的で 朝から不審な男の姿
この社説を書いた産経新聞の論説委員は、日本の新聞記者で良かったなどと書くことが、ジャーナリストとして恥だと思わないのだろうか。

それにも増して酷いのが、報道の自由度ランキング(Press Freedom Index)に対する記事で、 「日本に対する強い偏見がうかがえる。一部の日本人による日本の評判を落とすための活動が、さらにそれを助長する。」などと、まるで2ちゃんねるのスレッドでも見ているかのような与太記事だ。
およそジャーナリストの分析とは思えない。
産経新聞の論説委員は、これを英訳して国境なき記者団(Reporters Without Borders)に送ったらいかがなのか。
それにしても毎度思うのだが、産経新聞は左派系メディアが外国で云々と非難するなら、自分たちも英文記事を出して日本を守るために戦おうという気概はないのだろうか。
それとも外国語ができる人は産経新聞には就職しない(できない)のだろうか。

話を元に戻すが、日本の報道の自由度ランキングが低いのは、記者クラブ制度が最たる原因だ。
記者クラブのメンバーでない外国メディア、日本の雑誌社やフリーランスの記者を締め出し、まともな質疑応答さえない学級会のような記者会見、さもなければメディアが加害者と決めつけた相手方の吊るし上げ集会などをやっている記者たちに、外国人記者がNOを突き付けるのは当たり前で、私の知る限り、15年前からこの問題は提起されている。(The Guardian on 29 November 2002 - EU acts to free Japanese media)
従って、これだけは民主党政権時代の方がマシと評価されていて(2010年3月19日-原口総務相のメディア改革は成功するのか)、自民党政権下における強固な記者クラブ制度は独裁国並みという見方をされているのは当然だ。
それを 「日本に対する強い偏見がうかがえる。一部の日本人による日本の評判を落とすための活動が、さらにそれを助長する。」などと論説するのはお門違い、まずは世界にほとんど類を見ない記者クラブ制度を廃止してから言うべきことだろう。

最後になるが、今日は第48回衆議院議員総選挙だ。
台風が日本に接近しているため、投票率が史上最低となってもおかしくないが、野党がだらしないので、大方の予想通り、与党が無難な勝利を収めるだろう。
何と言っても北朝鮮危機下において、まともな国防政策を打ち出せない野党の自滅は大きい。
自民党の公約に憲法改正が入っているので、改憲勢力が3分の2以上を占めた場合、議論のたたき台は自民党の憲法改正草案になるだろう。
当然ながら、これが国民にとって最善のものになるかどうかは、きちんとした情報公開がなされ、政府に対して疑問点があれば質せる気概を持った野党議員とメディア記者の存在が不可欠だ。
そのような中で、メディアのカルテルたる記者クラブや、提灯メディアの御用聞き、仮想敵国の代弁者のようなメディア記者は、国民にとって百害あって一利なしの存在でしかないのだ。

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2017.10.10

憲法違反のサービス残業、不払い賃金は民法の不当利得返還請求で取り戻せるか

去る10月4日、NHKの記者だった佐戸未和(さど みわ)さんが2013年7月に過労死していたことが報じられた。(2017年10月4日 日経新聞-NHK女性記者に労災認定 過労死、残業159時間
電通の女性社員の過労自殺に続いて、こちらも欧米のみならずアジアの英字メディアで大々的に報じられている。
例えば、アメリカのCNNでは、2017年10月5日付で、Japanese reporter died after clocking 159 hours of overtime(日本人記者、159時間の残業により死亡)と掲載されたのに続き、10月6日付のシンガポールのストレート・タイムズ(The Straits Times)では、Japan's public broadcaster NHK apologises over death of young reporter who logged 159 hours of overtime(日本の公共放送局であるNHK、159時間の残業を記録した若い記者の死に対し繰り返し謝罪)と報じられた。

健康社会学者の河合薫氏は、今日付の日経ビジネスの記事「えっ、NHKは自社の過労死は沈黙したのか!」の中で、「いったい何人の命を奪えば、この国の人たちは「過労死・過労自殺」と正面から向き合い、この“異常”を異常なこととして受け止めるのか。」と書いているが、日本では組織全体で仕事が増えても、社員を増やすことによって健全な運営するより、例え違法労働(サービス残業など)であっても、1人1人の社員を酷使した方が経営者にとって直接的な利益があるため、一向にその傾向が止むことがない。
事実、NPO法人POSSE代表の今野晴貴氏の著書「日本の『労働』はなぜ違法がまかり通るのか?」には「労基法は道路交通法と同じくらい守られていない」「適法にやるより違法のほうが得」「労働力も『商品』となる市場社会」といった見出しでコラムが書かれている。
要は、会社側にしてみれば、スピード違反をしても捕まらなければ構わないというメンタリティで、社員に違法労働(サービス残業など)をさせているところが多いように思う。
さらに「労働力も『商品』となる市場社会」というのは、残酷に言えば、会社にとって労働者は商品であり、その人が過酷労働で死んだとしても、経営者としては、別の労働力商品を購入すればよいだけであると、今野氏は述べている。

ところで、労働基準法第36条第1項が会社が従業員に対し、時間外労働(残業)をさせられる根拠規定なのだが(36協定)、労働基準法第36条第2項にある「時間外労働の限度に関する基準(平成10年労働省告示第154号)」によれば、原則として、1か月の残業の上限は45時間、1年間を通して360時間である。
また、届出済の36協定書は、会社が労働者に対し、就業規則などと共に周知する義務がある。(労働基準法第106条第1項)
いったいどのくらいの企業がこれを遵守しているのだろうか。
この規制を罰則付きで守らせようというのが、働き方改革実行計画(2017年3月28日働き方改革実現会議決定)の「時間外労働の上限規制等に関する労使合意」に盛り込まれたものの一つだった。
長時間労働が常態化している会社では、36協定の上限を超えた分は残業申請をさせないようにしてみたり、最初から時間外労働の割増賃金を払わないなどのことが行われているのが実情ではないか。
まして、最近では国家公務員や教員に加え、働くママの最後の砦であった地方公務員でさえ、税収減を背景にサービス残業が横行しているという。(2016年2月8日 キャリコネニュース-公務員よ、お前もか!「残業時間を課長が書き換え」にネット落胆 その一方で「どこの市町村でもやってるでしょ」と諦めの声も 2016年9月10日 脱社畜ブログ-「教員は勉強を教えるだけの職業」でいいんじゃないの? 2016年10月17日 日刊SPA-国家公務員は「サービス残業」に上限なし!? 非正規も正規もブラックな実態 2017年9月11日 東洋経済-中学教師の何とも過酷で報われない労働現場

さて、このサービス残業、私に言わせれば、単なる労働搾取か違法就労でしかないのだが(2016年11月5日 キャリコネニュース-サービス残業?ただの賃金不払いだろ! ネットでは「無賃残業」や「実質0円残業」と呼ぶべきとの声)、それを会社に払わせようとすると大変な労力を要するものだ。
おまけに、本当であれば団結してそういう不当行為に立ち向かわなければならない社員同士が足を引っ張りあったりすることも多いようだ。(2017年3月23日 お前ら、社畜で人生楽しいか?-不当と戦わない人間が搾取される側なのは当然。妬む対象を間違えるな!
仮に、会社が社員に不払い賃金を請求されて素直に払うくらいなら、最初から時間外手当(賃金)を払うわけだから、当人からすれば、労働基準監督署に是正勧告を出してもらうか(厚生労働省-監督指導による賃金不払残業の是正結果)、民事訴訟で勝たない限り、泣き寝入りということになる。
そして、通常、これらは労働基準法に基づいて行われるわけだが、会社側にしてみれば、労働基準法違反事件というのは、交通違反のキップを切られた程度の痛みしか感じないから、社員を過労死させても通り一辺倒の謝罪すれば終わり、後は何の改善もされない可能性が高いということになる。(2017年10月6日 時事ドットコムニュース-電通に有罪、罰金50万円=過労自殺「看過できない」-違法残業事件・東京簡裁

そこで、下手すれば過労死を招きかねないサービス残業に対する不払い賃金を請求する際は、そういった会社に一罰百戒の意味を込めて、民法に基づいてやればいいと思う。
私が思うに、労働基準法に基づく賃金の請求時効は、サービス残業の不払い賃金を想定しているのではなく、会社側の過失(計算ミスなど)によって社員が受取り損ねた賃金の請求を想定しているはずだ。
会社がサービス残業を命じた場合の不払い賃金を請求する根拠条文は、民法第703条(不当利得の返還義務)と第704条(悪意の受益者の返還義務等)になるのだが、おそらく、この2つの条文を根拠に戦えるだろう。
そうなれば請求時効は2年でなく10年だし、サービス残業が常態化していれば、会社に悪意があるのだから、利息を付けてもらえるばかりでなく、損害賠償を請求することもできる。
そもそもサービス残業は、不法行為なのだから、民法第709条(不法行為による損害賠償)と、第710条(財産以外の損害の賠償)が該当するのは言うまでもない。
社員が精神疾患になったり、過労死させられたり、そういう裏にはサービス残業の常態化が必ずあると思う。
民法に基づいてサービス残業代を請求した例としては、「『とんかつ和幸』元社員、未払い残業代を求め提訴(2010年1月21日 My News Japan)」(不当利得返還等請求事件 2010年1月9日横浜地方裁判所川崎支部に提訴 原告:皆本吉彦氏 被告:和幸商事株式会社 平成22年(ワ)第18号 2010年7月21日和解/民事事件記録の閲覧謄写の申請/和解調書の保存期間は30年)ぐらいしか見つからないようだが、もはや日本の経済すら蝕むガンの退治には大ナタを振るう必要があるだろう。

なお、表題にある「憲法違反のサービス残業・・・」と書いたのは理由がある。
安倍首相が衆議院を解散して総選挙が本日公示されたのだが、自民党の公約に憲法改正があるので(2017年10月2日 日経新聞-自民党公約の要旨)、現行憲法をあらためて見直してみることにした。(自民党日本国憲法改正草案
第18条に「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。」というのがあるが、サービス残業は、報酬や対価を伴わず、明白に苦役、つまり刑務所の労働に等しいのだから憲法に違反していると思わないか。
どなたか、サービス残業させられた方は、裁判所に憲法判断を仰いでみるのも面白いかもしれない。
そして、私とは選挙区が全く違うが、「長時間労働が家族も経済も壊す(2012年11月24日)」というブログを書いた愛知県第14区選出の自民党前衆議院議員・今枝宗一郎氏が今回の総選挙でも立候補されている。
彼は、議員立法である過労死等防止対策推進法にも関与されていて、こういった方を地道に応援して行くことが有権者として必要なことではなかろうか。

それと、例えば、サービス残業(無賃金労働)の命令者を、刑法第223条(強要罪)で処罰できるようにすることや、過重労働が原因で過労死や精神疾患に至らしめた場合は、未必の故意による傷害罪(刑法第204条)や傷害致死罪(刑法第205条)を適用できるように、国会議員や関係省庁に働きかけていくことも必要だろう。
これらは日本の国民が健康で文化的な最低限度の生活を営めるようにするための責務と言ってもいい。(2016年9月17日 お前ら、社畜で人生楽しいか?-ブラック企業で働く奴も社会から見れば両方害悪!自分で首を締めてる件
これに加え、私がかつて書いた「マクロ経済も老後の生活も悲惨にする日本の労働環境(2015年4月11日)」や、「サービス残業という名の強制労働(forced to work)は下流老人への直行便(2015年11月2日)」をお読みいただければ、日本の労働環境における最重点課題が長時間労働の撲滅であることがお分かりいただけるだろう。
仮に、本業収入が自分の満足のいくものでなかったにしろ、自由時間さえ十分に確保できれば稼ぐ方法はいくらでも見つかるのだ。
それを本業で残業して生活費を賄おうと考える人が後を絶たないから、「残業規制で所得8.5兆円減、生産性向上が不可欠 大和総研試算(2017年8月28日 日経新聞)」といったバカげた議論が政府の中で跳梁跋扈する。
いい加減に各自が考え方を改めないと、日本はじり貧のまま「失われた50年」などと歴史書に書かれるときがやってくるだろう。

最後になるが、Atusi氏のブログ「お前ら、社畜で人生楽しいか?」から「定時退社を目指せ!残業を避ける実際に使って効果ありな6つの方法!(2016年9月8日)」と、「有給休暇を取得する!全ての会社で使えるたった1つの最強の理由!(2017年1月23日)」を紹介しよう。
また、2017年4月21日付のキャリコネニュースでは「勤務先ブラック企業にFAX・メールで改善要求を送れるアプリが登場 『該当管轄省庁に報告する』の一文で企業に圧力」ということでブラゼロというアプリが紹介されていた。
それと、厚生労働省でも「長時間労働削減に向けた取組」の一環として、労働基準関係法令違反に係る公表事案(いわゆるブラック企業リスト)が公表されているが、どの程度効果があるのだろうか。
今日のコラムは、あまりにも日本の労働環境が酷いのでアドバイスの意味で書かせていただいた。
過重労働で苦しむサラリーマン諸氏にとって参考になれば幸いである。

日本国憲法
第三章(国民の権利及び義務)
第18条
何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
労働基準法
第36条(時間外及び休日の労働)
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。ただし、坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、一日について二時間を超えてはならない。
厚生労働大臣は、労働時間の延長を適正なものとするため、前項の協定で定める労働時間の延長の限度、当該労働時間の延長に係る割増賃金の率その他の必要な事項について、労働者の福祉、時間外労働の動向その他の事情を考慮して基準を定めることができる。
第一項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者は、当該協定で労働時間の延長を定めるに当たり、当該協定の内容が前項の基準に適合したものとなるようにしなければならない。
行政官庁は、第二項の基準に関し、第一項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者に対し、必要な助言及び指導を行うことができる。
第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
前項の政令は、労働者の福祉、時間外又は休日の労働の動向その他の事情を考慮して定めるものとする。
使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項ただし書の規定により割増賃金を支払うべき労働者に対して、当該割増賃金の支払に代えて、通常の労働時間の賃金が支払われる休暇(第三十九条の規定による有給休暇を除く。)を厚生労働省令で定めるところにより与えることを定めた場合において、当該労働者が当該休暇を取得したときは、当該労働者の同項ただし書に規定する時間を超えた時間の労働のうち当該取得した休暇に対応するものとして厚生労働省令で定める時間の労働については、同項ただし書の規定による割増賃金を支払うことを要しない。
使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
第一項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。
第106条(法令等の周知義務)
使用者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨、就業規則、第18条第2項、第24条第1項ただし書、第32条の2第1項、第32条の3、第32条の4第1項、第32条の5第1項、第34条第2項ただし書、第36条第1項、第38条の2第2項、第38条の3第1項並びに第39条第5項及び第6項ただし書に規定する協定並びに第38条の4第1項及び第5項に規定する決議を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない。
使用者は、この法律及びこの法律に基いて発する命令のうち、寄宿舎に関する規定及び寄宿舎規則を、寄宿舎の見易い場所に掲示し、又は備え付ける等の方法によって、寄宿舎に寄宿する労働者に周知させなければならない。
第165条(時効)
この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は二年間、この法律の規定による退職手当の請求権は五年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。
民法
第一編(総則)-第七章(時効)-第三節(消滅時効)
第167条(債権等の消滅時効)
債権は、十年間行使しないときは、消滅する。
債権又は所有権以外の財産権は、二十年間行使しないときは、消滅する。
第三編(債権)-第四章(不当利得)
第703条(不当利得の返還義務)
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
第704条(悪意の受益者の返還義務等)
悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。
第三編(債権)-第五章(不法行為)
第709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
第710条(財産以外の損害の賠償)
他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

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2017.09.30

脱税捜査は根性と気合いだ!体育会系マルサが見せる海外投資の舞台裏

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脱税捜査は根性と気合いだ!
私が表題で書いた何かの標語みたいなものは決して作り話ではない。
私が半年前に行ったマレーシア・カンボジア・タイ旅行、そこに持参した電子書籍である田口宗勝氏の「香港裏金実践ガイド:国税が香港口座に甘いワケ」を読む進めていくうちに、私は飛行機の座席から転げ落ちそうになった。
私は、国税局査察部(通称マルサ)の職員というのは、東京地検特捜部のような知的な集団だと思っていたので、まさか、暴力犯罪と対峙するようなスタッフ集団だとは想像だにしていなかったからだ。
実際のところ、脱税というのは経済犯罪であり、租税調査研究会の「国税庁 この部署が『富裕層』『海外資産』情報を集めている!(2016年11月10日)」を読むと、重点管理富裕層プロジェクトチーム(富裕層PT)が動き出しているといった記事もあり、なるほどと感じた後だけに余計にそう思ったのだ。

確かに、伊丹十三監督の作った「マルサの女」では泥臭い場面もあり、決してオフィス内で完結する仕事でないことは理解できるが、要は、上層部のキャリア組と実行部隊のノンキャリア組の違いといってしまえばいいのだろうか。
私が本を読んで驚いたのは、脱税の疑いで筆者の田口氏が強制捜査(不告発処分)されたにもかかわらず、海外に関係ないと捜査責任者が判断したためか、

・外国語(英語)の書類はすべてスルーして押収すらされなかった。
・外国(香港)口座の情報は不要と判断された。

なぜかと言うと、現場捜査官は英語が大の苦手だからだという。
それに加えて、マルサの人たちは、新しいIT環境や経済情勢の勉強は全くといっていいほどしていない感じを受けたと田口氏は書いている。
これは正直言って、市町村役場の中高年職員と同じレベルなのだろうか。
しかし、海外が関係ないと言うのは調査を進めてみないとわからないのだから、それを最初からスルーしたのはどうかと思うし、日本語の書類でそんなことはしないに違いない。

そこで普通の人は疑問に思うだろう。
現場捜査官が英語が苦手だったら得意な人にやらせればいいだろうと・・・
しかし、田口氏曰く、マルサの捜査官は、良くも悪くも体育会系の人が多いと書いている。
逆に、税務担当官で外国語(英語)が得意な人は、帰国子女が多く、定時に帰宅するし、酒の席に付き合わない理屈っぽくキザなタイプが多いらしい。
体育会系はそうした人たちに頭を下げたくないという力学があるのに加え、相手がキャリア組ならその傾向はなおさらだろう。
本当なら、お互いに協力し合わなければならないし、相手に頼むのが嫌なら自分たちが英語が少しでもできるようになればいいだけのことだが、そのどちらも実現しないのが官僚社会の現実のようだ。
また、共通報告基準(CRS/Common Reporting Standard)に基づく自動的情報交換など、国際税務情報の交換制度がいくら充実されようと、それを活用する実行部隊の知識や外国語センス(横文字を見ただけで嫌悪しない程度に)が追いついていなければ何の意味もないだろう。
租税調査研究会では、元国税庁国際担当官の多田恭章氏が様々なコラムを寄稿しているが、これらが真の意味で活用されるのはいつのことになるのだろうか。

田口氏も脱税の疑いで強制捜査(不告発処分)を受けた身でありながら、「国税への9つの提言」と称して、英会話教育の体制強化を書いているが、私に言わせれば、これは国税だけの問題でなく、日本人全員の問題である。
私が海外を旅して思うのは、もはや東南アジア諸国では、英語はエリートだけでなく、簡単なフレーズなら、都市部の若年層は一般人でも話せるようになってきていると感じている。
日本もそうなるべきなのだ。
ここで、英語の公用語化で検索すると、一部の企業でいきなり英語を使うことを強制されていて、それを嘆く社員の声がインターネットメディアで紹介されているが、それは至極当然の話で、英語が話せることが面白いという意識を植え付けることなしに、そんなことをすれば成果は上がらないだろう。
要は、英語の公用語化という大上段に振りかぶったことをやるのではなく、日本の場合は、外国人を見ても避けないで済むというレベルを目標にやればいいのではなかろうか。
究極の目標は、高校生や大学生のアルバイトで、浅草や京都、沖縄などで外国人相手に接客できるようになれば、一部の人は面白くなって向上心を持つだろう。
とりあえず、そんなところを目標にしてみればいいと思うが、どんなものだろうか。

あと、田口氏の本で物凄く気になったのが、「マルサは体育会系組織で、その良い点は指揮統制が取れていることなのだが、反面で、一度決まった捜査方針は絶対に変更されない。捜査の過程で上司の言っていることが間違っていると思っても、上司に反抗するのかと怒鳴られるため、部下は口にできない。上司の考えを否定することは体育会系組織最大のタブーだ。」とあったことだ。
この風潮は、下手すれば、冤罪を生むのではないかと思ったのは私だけだろうか。
2016年8月24日付のキャリコネニュースの記事、「厚切りジェイソン、目的不明の資料づくりをさせられるサラリーマンにダメ出し『そんなんだから台湾の企業に買収されるんだよ』」で、「目上の人が頼んだからといって、無駄をする方が正しいんじゃ、会社は破産するよ。そんなんだから台湾の企業に買収されるんだよ。やめろ」と吼えたのを多くの人が喝采しているが、「上司の考えを否定することは体育会系組織最大のタブーだ。」というのは、日本の隅々にまで波及しているのかと言いたくなるくらいだ。
いずれにせよ、こういう風潮がマルサにあるということは国民にとって不幸なことだし、これからの若者はそれをブラック職場と呼ぶかもしれない。
ただでさえ、企業や富裕層の節税スキームは複雑化しているのに、部下の意見を取り入れる下地がなければ、ますます租税収入は減り、政府が安易な増税に走ることになるのではないかと私は懸念している。
それにも増して優秀な若手が国税局への就労を忌避するのは時間の問題ではないかと思っている。

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2017.09.26

ホワイトカラーの労働生産性の低下を招く日本型チームワークの暗部

ここ数年、日本の労働生産性(就業者1人当り国内総生産、就業1時間当たり国内総生産)がOECD諸国の中で低下が止まらないとの論調のニュースを多く見かけるようになった。
特に、日本の得意分野である製造業の高さに比べて、サービス産業やサラリーマンなどホワイトカラー職場の生産性は伸び悩んでいるという。(2017年4月26日 ブルームバーグ-日本のホワイトカラー、なぜ業務の効率化進まない?-生産性はG7最下位 Even Japan's Automated Factories Can't Fix Its Productivity Problem
一心不乱に働いても手取りは増えず、おまけに国際的な労働生産性も低いままというのでは、現場のサラリーマンは踏んだり蹴ったりだろう。
おまけに、年次有給休暇の取得率は常に韓国と最下位争いを繰り広げているありさまだ。(2016年12月15日 We Love Expedia-「世界28ヶ国 有給休暇・国際比較調査2016」  日本の有休消化率、2013年以来3年ぶりに最下位に)(Expedia Viewfinder on November 15, 2016 - 2016 Expedia Vacation Deprivation Report
そのせいなのか、「『熱意ある社員』6%のみ 日本132位、米ギャラップ調査(2017年5月26日-日経新聞)」という記事も掲載された。

なぜ、こんなことになるのか。
いろいろなエコノミストや評論家の意見があるが、労働生産性を低下させている日本のホワイトカラー職場の根底にあるのが、日野瑛太郎氏の「脱社畜ブログ」にある「いい仕事をすればするほど、仕事はつらくなっていく(2013年12月12日)」や、Atusi氏のブログ「お前ら、社畜で人生楽しいか?」にある「『仕事の報酬は仕事』で優秀な人間を使い潰し腐らせる社畜環境はゴミ(2017年7月29日)」、「喜んで非効率な仕事をした気になる日本の労働環境はカスだ!(2017年8月16日)」だと私は確信している。
実際、私もフルタイムで働いていた頃に友人に言われたことがある。

友「カルロスは仕事が早く終わったら、周りの人の仕事を手伝ってあげないの?」
私「基本的にしないね。私が仕事の改善を進めて時間を空けているのは、チーム全体の業務効率化と自分の時間の確保であって、進捗状況が芳しくない人(できないクン)の仕事は、例え、上司が言ってきても特別な理由がなければ絶対に手伝わない。」
友「それって日本の職場には合わない考え方だよね。」
私「合うとか合わないとかではない。それを無条件に許せば、上司とできないクンの仕事に対する考え方は、締め切りまで終わりそうもなければ、私に丸投げすればいいということになって、成長がなくなる。さらに言えば、部下の仕事の差配は上司の能力と手腕の問題で私の仕事ではない。」
友「それって外国人みたいな考え方だね~」

いかがだろうか。
私に賛同できるか、私の友人の言っていることが正しいと思うかによって、貴方が職場に居させられる時間が決まってくるのだ。
前出のブロガー、Atusi氏は言う。
「何処かで日本の生産性が最低とか記事を見たことがありますが、あれってぶっちゃけ個人の資質ではなくて100%企業が悪いんですよね。本当に日本の社畜は仕事を頑張っても報酬に全然反映されることが無く、むしろ頑張れば頑張るだけ損をするという国ですからね・・・
私は彼の論旨に100%同意するし、私はその点ではまだ恵まれていたと言えるだろう。
報酬は金でもらえないなら休暇で寄越せという態度を全面に押し出し、その通りになってきたからだ。
もっとも、私はこういう人間だから組織内の出世などには縁がなかったし、興味もなかった。
特に投資をやって、早期リタイアが視野に入ってからはますます縁遠くなったと言えようが、それはそれで全然構わなかった。
投資で確定申告を本格的にやり始めてからは、労働(給与)所得は政府の搾取の対象でしかないことが良く理解できるようになったからだ。

仮に、私が友人に言われたようなことが職場で慢性化すれば、できるビジネスマンほど、仕事をペースダウンさせ、できないクンに歩調を合わせるようになる。
そうなれば、その会社の生産性は劇的に落ち、何で皆が一生懸命働いている(フリをされているだけ)のに、我が社は・・・と上層部は嘆き、いつの間にか経営は傾き始め、できるビジネスマンは泥船から颯爽と逃げ出すという図式になる。
かつての大蔵省(現財務省)がやってきた金融機関の護送船団方式が国際競争力を劇的に削いだのを見ても、我関せずとばかりに自分の職場で護送船団方式をやっている上司はバカの極みとしか言いようがない。
「教え込まれた協調性 イイ子はイイ子でしかなれないよ」と歌われた安室奈美恵のChase The Chance、日本の組織で最高に求められる従業員の資質、協調性という言葉に私は非常に違和感を感じている。
協調性の意味は一人じゃ何も出来ない奴が他人の足を引っ張る口実だ!(2017年8月8日)」と書いたAtusi氏の方がむしろ本質を衝いているのかもしれない。

さて、先ほどの日本の労働生産性の問題だが、私が思うに、2017年6月11日付のアメリカ大学院留学ブログの記事「アメリカから見た、日本人の労働生産性が低い根本的な理由と改善策。」が比較的いい感じでまとまっていると思う。
日本の良いところと悪いところを取り上げ、改善策まで提言してあるので、記事としては読む価値が大いにあるだろう。
その中でも「サービス残業を徹底的に取り締まる。仕事をジョブ・ディスクリプション制(job description=職務記述書に基づく契約)にする。」は傾聴に値すると思う。
ただ、こういった抜本的な改革は、安倍首相が目指す憲法改正よりもはるかに困難で、働き方改革などでは無理と言わせていただこう。
この問題は安倍首相を取り巻く官僚や財界人の誰もが口に出さない暗部だからだ。
そして、人事コンサルタントの城繁幸氏が、2010年1月29日に初版を出した著書「7割は課長にさえなれません」にある「優秀な若者が離れていく国-日本企業だけは勘弁してください」は、私の周辺でさえ現実のものとなっている。

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2017.09.03

電通女性社員過労自殺事件がもたらす日本の残酷な未来

"Death from Overwork"は、過労死を意味する英語のフレーズだ。
この言葉は、電通の高橋まつりさんが過労自殺したことが大きな事件(電通女性社員過労自殺事件)として取り上げられる前は、英文記事を検索しても国際労働機関((ILO/International Labour Organization)で発表された記事ぐらいしかヒットしなかった。(International Labour Organization - An International Comparison of Unpaid Overtime Work Among Industrialized Countries)
ところが、電通の石井直社長の引責辞任が発表されてから(2016年12月28日 産経新聞-業績に打撃も 社長は引責辞任 広告主、募る不安 2017年1月20日 産経新聞-高橋まつりさん母コメント全文「謝罪、再発防止約束も、娘は二度と帰ってくることはありません」)、海外メディアでも日本の長時間労働の文化が引き起こした過労死事件に関しての報道がクローズアップされるようになった。

例えば、2017年1月12日付のフィナンシャルタイムズ(Financial Times)は、「'Death by overwork' in Japan exposes dangers of overtime culture(日本の過労死事件は長時間労働の文化の脅威を露わにした)」と報じている。
同じく英国国営放送のBBCでは2016年12月30日付で、「Is Japan's culture of overwork finally changing?(日本語版 日本の過重労働の文化はようやく終わりつつあるのか)」という記事が掲載された。
また、2017年6月2日付のBBCは、「The young Japanese working themselves to death(日本語版 死ぬまで働く日本の若者 『karoshi』の問題)」と報じている。
ちなみに、安倍内閣の働き方改革実現会議に関連するものとしては、2017年4月14日付のブルームバーグ(Bloomberg)で、「Japan's Bid to Stop 'Death by Overwork' Seen Falling Short(日本語版 働き方改革に課題、過労死ライン超の100時間残業に改悪と指摘も)」という記事がある。
これら以外でも"death from overwork"あるいは"Japan overwork"検索すればいろいろな英文記事がヒットするだろう。

政府は、高い技術や知識を持つ外国人が日本に来やすい環境をつくり、経済成長につなげたいということで、高スキルを持った外国人の受け入れを促進しようとしている。(2017年1月18日 日経新聞-「高度人材」最短1年で永住権、3月実施へ省令改正)(法務省-高度人材ポイント制による出入国管理上の優遇制度
ところが、出井康博氏は、新潮社フォーサイトの記事で、「永住権『安売り』で外国人『高度人材』は集まるのか(2017年2月17日)」という疑問を呈し、「”本物”の高度人材にとって『永住権』の魅力は乏しい。事実、高度人材の資格を得ていながら日本から去っていく人も少なくない。高度人材を国籍別に見ると、圧倒的に多いのが中国人だ。その割合は全体の65パーセントに上る。安倍政権と中国は、決して相性が良いとは言えない。その中国出身者が、政権肝いりの制度で最も恩恵を得ているのは皮肉なことである。」と書いている。
穿った見方をすれば、鈴木傾城氏のコラム「日本にも大量の中国人工作員がなだれ込んでいる事実を知れ(2017年5月22日)」にあるような中国人工作員を優遇している制度と言えなくもない。
これに、私が2015年4月11日付で掲載した「マクロ経済も老後の生活も悲惨にする日本の労働環境」の中で紹介した「日本には遊びに行きたい。でも、働きたいとは思いません。」と考える外国人が電通女性社員過労自殺事件に関する英文記事を目の当たりにして急増することも考えられる。
世界中のどこでも働けるスキルを持った人が、先進国とは思えないような過酷な労働環境で働きたいとは思わないからだ。
実際のところ、経済産業省の「外国人留学生・元留学生を対象とした、日本の労働環境に関するアンケート(2016年2月5日)」でもその傾向は窺えるとキャリコネニュースは報じている。(2016年2月8日 キャリコネニュース-日本は住むにはいいけど、働くにはビミョーな国」 留学生がそう感じていることが経産省の調査で明らかに
つまり、出井康博氏の言う”本物”は日本を去り(あるいは来なくなり)、鈴木傾城氏の言う外国人工作員が政府や企業の要職で跳梁跋扈する時代がやってくるかもしれないのだ。

そうであるならば、「日本の会社は日本人だけの力でやっていけば良い」と考える人は意外なほど多いだろう。
ダイヤモンド・オンラインの記事で、「『43%の企業が「海外からの人材が必要ではない』 外国籍人材活用に消極的な態度に見える、その課題(2012年1月24日)」というものがあり、これは5年前の記事で統計も古いのだが、日本の国内企業が頑迷なまでに保守的なことを考えると、未だに状況は変わっていないように思う。
それでは日本の国内企業は、高スキルを持った日本人を引き留める魅力があるのだろうか。
先月、ある飲み会に参加したとき、参加者の一人が得意顔でこう言った。
「私は社内でのステータスを上げるためならサービス残業も厭いません。私の会社では出世するためにそうすることが常識なんです。」
これが電通女性社員過労自殺事件の元になる日本人サラリーマンのメンタリティなのだと暗澹たる気持ちになりながら、私は、新聞記事の一つを思い起こしていた
それは、「2017年8月27日 日経新聞-役員給与、アジア勢が上 中国4000万円・日本2700万円」、もはや日本の国内企業で過労死の危険を賭して働いても報われることはなくなりつつあるというのが、この記事を読んだ私の率直な感想だ。
それに、私もシンガポール人の友人であるエリック(Tan Eric)さんを通じて薄々感じていたことだが、「シンガポール人の月収は日本人より遥かに高い(2015年12月29日 シンガポール駐在員ブログ)」というのも見つかった。

もはや、言わなくともわかるだろう。
私が15年以上前に海外投資を始めたとき、木村昭二氏の「税金を払わない終身旅行者」の中で、PT (Perpetual Traveler)という言葉を知った。
この終身旅行者(PT: Perpetual Traveler)という概念を提唱したW.G.ヒル(W.G. Hill's)博士曰く、彼らは国籍を持つ国(Passport and Citizenship)、居住国(Legal Residence)、ビジネスを行う国(Business Base)、資産運用を行う国(Asset Haven)、そして、余暇を過ごす国(Playgrounds)の5つを目的に応じて使い分け、合法的な節税を行っているという。
当然ながら、2000年初頭はビジネスを行う国(Business Base)として、日本人が経済大国だった日本を選ぶことに迷いはなかったと思う。
ところが、今では日本経済の先行きの暗さと、公租公課の過酷さがますます増大するにつれて、富裕層ほど日本を選ばなくなくなっている。
これに今後は日本人の高スキル人材が続くというのも自然の成り行きだろう。
死を賭して働いた結果が庶民の怨嗟と酷税ではやっていられないのは当然である。

2017年8月20日付の日経新聞「違法残業『かとく』がにらみ 厚労省の過重労働対策班」というのを読んで、私は驚き呆れ果てている。
「違法残業の慣行は今も多くの企業に残っている。厚生労働省によると、2016年度に全国の労働基準監督署が立ち入り調査した2万3915事業所のうち、43%で違法残業が見つかり、是正勧告をした。『過労死ライン』とされる月80時間を超える事業所は77%に上った。
同省は監督体制を強化する一方で、監督官不足が課題となっている。全国に監督の対象事業所は428万カ所あるが、2015年の監督件数は約15万5千件。監督官不足のため全体の約4%しかカバーできていない。このため政府は2018年度から、監督官の業務の一部を民間の社会保険労務士などに委託する方針だ。」(第9回働き方改革実現会議の金丸恭文氏提出の資料5によれば、2016年度の監督指導対象となる事業場数は428万事業場、対象労働者数は5,209万人。これに対し、労働基準監督官数は3,241人に過ぎない。)
この違法残業が見つかった事業所のうち、是正勧告に応じて不払い賃金を払ったのはもっと少ないようだ。(厚生労働省-監督指導による賃金不払残業の是正結果
この状態で、日本の民間サラリーマンが叫んでいる「私の会社のサービス残業を取り締まってくれ!」というのは何社フォローされるのだろうか。
もはや役所の摘発を待つだけでなく、自分たちで何とかしないことにはどうにもならないことに気づかないのだろうか。
ところで、若年層を雇うと、こうして労働基準監督署へ駆け込みされて困るからと、最近では我慢することだけは世界一優秀だと定評のある日本人中高年サラリーマンをターゲットにえげつないブラック職場が蔓延っている。(2013年6月27日 ダイヤモンドオンライン-中高年退職者を食い物に!ハローワークが紹介する”辞められないブラック企業”)(2015年4月1日 日刊SPA-ブラック雇用主が「中高年バイト」を使いはじめた理由

最近になって私は「エストニア共和国より愛をこめて」というブログを読み始めた。
この中で最も気になったのは、2017年7月6日付の「欧州からは『日本だけが勝手にどんどん貧しくなっている』ように見えている」というもので、記事の中で「今後は『普通の人がやりたがらないような過酷な低賃金労働は、日本人労働者に外注しよう』ってのが一般的になっていくかもしれませんね~。」という一節だ。
サービス残業(unpaid overwork)という悪習を放置し、経営陣に抗議(ストライキやデモさえ)しようともしない日本人サラリーマンに対し、外国人や在外邦人からはNO additional charge(追加料金不要)、NO negotiation(交渉不要)の「便利な下請けくん」としか思われなくなる日がやってくるのではないかとぞっとしたものだ。
再度掲載するが、外国人の中には「日本には遊びに行きたい。でも、働きたいとは思いません。」と言う人が少なくないという。
このことは、7月8日付の「大陸欧州と比べてわかる日本の労働者の働き方の『ヤバさ』について」や、8月5日付の「日本人って勤勉なのに、どうして日本の経済は良くならないの?」 からも読み取れる。
私は自分が生まれた国だからということもあるが、日本は非常にいい国だし、便利さも快適さも世界で有数な国だ。
しかしながら、それを支える側にはなりたくないと考えるのは外国人だけではなくなってきているということだ。(2017年7月4日 キャリコネニュース-人手不足が最も深刻な業界は「宿泊・飲食業」「運輸業」 理由としては「募集をしても応募が無かった」
この悪循環を断ち切るためには、日本の企業が無理難題を吹っ掛けるブラック消費者に対して毅然とした態度を取るようにならないと根本的な解決にはならないだろう。(2016年11月22日 東洋経済-日本の過剰労働は、「お客様」の暴走が原因だ
とりあえず、現状貴方がブラック職場の中で苦しんでいるようなら「お前ら、社畜で人生楽しいか?」を読んでみたらいかがだろうか。

ところで、2017年8月24日付の日経新聞で、「家電や日用品、国内生産回帰じわり」という記事が掲載された。
これを単純に喜んでいるようではいけないと思う。
こうした付加価値の低そうな労働現場が日本に帰ってきたということは、日本企業の経営者からも自国の労働者が前述したように「便利な下請けくん」として認識されているということを感じないといけないのだ。
早坂隆氏の「世界の日本人ジョーク集」という本で、世界最強の軍隊とは「アメリカ人の将軍、ドイツ人の参謀、日本人の兵」、最弱の軍隊は「中国人の将軍、日本人の参謀、イタリア人の兵」というものがある。
日本人の中で世界で活躍している人からすると「えええ~」であろうが、世界の人たちからは「日本人は部下向き」の人材が多いと見られているのだ。

日本が将来的に「世界の下請け」ということになったとき、日本のサラリーマンの多くは今までにない劣悪な老後が待っているに違いない。
おそらく老後という言葉も死語になるかもしれない。
何しろ21世紀初頭まで、アジアの中で有数の高賃金国、経済大国と言われていたのがウソのような状況になるのだ。
内閣府の高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会」の第2回検討会(2017年7月18日)における議事録の内容が世間に波紋を広げている。
詳しくは、2017年8月2日付のマネーポストの記事、「社労士が警告『いよいよ70歳定年・年金75歳受給の時代到来』」に書かれているが、仮に公的年金75歳支給開始となった場合、もはや、ほとんどの人にとって、生きた金として使えるものではなくなることを意味する。
しかも、公的年金の支給額は、現役世代の賃金や物価の上昇分がそのまま跳ね返るわけではなく、逆に、賃金水準や物価が下落すれば、それに応じて年金額も引き下げられることになっている。(参考:日本年金機構-マクロ経済スライド
私が予想しているように、将来的に高スキルのサラリーマンが日本を去り、日本が世界の下請けとして甘んじざるを得ない状況になれば、どうなるかは火を見るよりも明らかだろう。
このままいけば、私が2004年2月29日に掲載した「未来へのシナリオ」、その中で敬愛するピーター・タスカ(Peter Tasker)氏が「不機嫌な時代-JAPAN2020の中で書いた「長いさよなら」というのが現実のものとなる日がやってくるのもそう遠いことではないような気がしているのだ。

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2017.08.27

法定相続情報証明制度によって相続手続きは簡略化されるのか

2017年(平成29年)5月29日から「法定相続情報証明制度」というのが始まったのをご存じだろうか。
簡単に言うと、今までは、不動産や金融機関の口座などに関して相続手続きが必要になった場合、亡くなった方(被相続人)の出生から死亡までの戸籍謄本(全部事項証明書/除籍・改製原戸籍を含む)の提出を求められることが多かった。
その戸籍等の原本が提出先で返却されない場合は、手続きに必要な通数を揃えて用意しなければならなかったため、その手間と費用がバカにならなかった。
それが、この「法定相続情報証明制度」によって、法務局に一度だけ手続きすれば、あとは無料で証明書が交付されるので、手続きは簡略化されるという。
但し、この制度を利用するには、前述の戸籍等を取得した上で、法定相続情報一覧図を作成しなければならないので、今までと比べると、その手間が一つ増えることになる。(法定相続情報証明制度の具体的な手続について
なお、「被相続人や相続人が日本国籍を有しないなど、戸除籍謄抄本を提出することができない場合は、本制度を利用することができません。」と書かれているのは、法務局に確認したところ、国際結婚した夫婦の一方が死亡したとき(日本人配偶者の戸籍には婚姻の相手方氏名と婚姻成立日が掲載される)でさえ、外国人側が日本法に基づく身分異動事項が記載された戸籍を添付できないことから適用除外とのことである。

一般的な方の相続の場合だと、父親が亡くなって、相続人が母(配偶者)と子供というのがスタンダードなケースだろう。
相続財産として、持ち家(不動産)と預貯金、証券、生命保険があった場合、生命保険に関しては受取人が決まっているので除外するとして、それ以外のものに対して、被相続人の出生時からの戸籍等の提出が求められることになるだろう。
このケースで、果たして新制度を使うメリットがどの程度あるかは、相続人のパソコンのスキル次第と言えるかもしれない。
仮に、法定相続情報一覧図を手書きするという選択をした場合、面倒になってくることは容易に想像できるからだ。
それならば、従来通りに被相続人の出生時からの戸籍等を複数枚取り寄せた方がいいとなるかもしれない。
仮に、金融機関の窓口で戸籍の確認が終了すれば、原本が返却されるならば、なおのことである。
相続の手続きを専門家(弁護士司法書士税理士行政書士)に依頼するならともかく、自分でやろうとするならば、新旧どちらの制度を使う方が合理的か見極めてからやる方がいい。
もし、新制度について詳しいことが知りたければ、最寄りの法務局か、お住いの自治体で司法書士相談(原則無料)というものがあれば、相続手続きに関連して聞いてみるといいだろう。(参考:日本司法書士会連合会-新しい相続手続「法定相続情報証明制度」
まあ、今まで戸籍等の束を提出されて確認に手間取った金融機関などからすれば、この証明書を出してもらう方がいいということになるが、この制度が浸透するまでには時間がかかりそうな気もするね。

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