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2017.08.20

外国人観光客誘致による地方再生には外国語情報の充実が不可欠だ

私が7月下旬から8月初旬にかけての四国旅行から帰京し、コラムを連載していたのと時を同じくして、日経新聞のエコノフォーカスに興味深い記事が掲載されていた。
新景インバウンド(上)欧州客、消費の主役(2017年8月13日)」と、「新景インバウンド(下)地方を潤す3つの逆転(2017年8月14日)」という2本の記事だ。
13日の記事では、英国とイタリアからの観光客の1人当たり旅行消費額が、中国人観光客を抜いて、今後は、ヨーロッパからの観光客が訪日観光客の主役に躍り出そうなことが書かれており、14日の記事では、訪日外国人の中のリピーターが地方に目を向け、地方の宿泊客の増加が大都市圏を上回るほどになっており、地方経済の救世主が観光になるのではないかと書かれている。
確かに、そのような兆候はあると私も思う。
2016年10月31日付の日経の記事で「訪日客、初の年間2000万人突破 地方へ分散進む」と掲載されて以降、その傾向は今年になっても続いているのだろう。

今回の旅行に関しても、8月13日のコラムで「外国人にも人気の祖谷渓(Iya Valley)、祖谷のかずら橋と奥祖谷二重かずら橋に行ってみた」と書いたとおり、祖谷渓が外国人に人気があることは、列車やローカルバスに乗っているときでさえ、実感できるほどだったのだ。
私が知らなかっただけかもしれないが、それこそ、ジャパンガイド(Japan Guide.com)という、訪日外国人の旅行バイブルを作成しているステファン・シャウエッカー(Stefan Schauwecker)さんの著書でいう「外国人だけが知っている美しい日本」そのものではないかと思った。
それで思い出しのが、彼が書いている「外国人観光客からの質問で多いのは、交通に関することです。飛行機や新幹線など、観光拠点都市へ行くための第一次交通手段については、すでに十分な情報がありますが、そこから先のバスに関しては、外国語の情報が少ないのです。」というのに触発されて、今までにない熱心さで英語版のウェブサイト(travel to Shikoku region in Japan in 2017)も作った。

これ以外にも日本各地を旅行した後で英語サイトを作る過程で思ったのが、英語の観光情報サイトで、一番肝心な「How to get there(どうやってそこに行くのか)」が書かれていないものが非常に多い。
単に、写真と観光地の説明文だけ載せても、行き方がわからなければ、そこに来てもらえないことがわかってないのだろうか。
このあたりは是非とも改善しなければ、宝の持ち腐れになるだろう。
今までは大都市圏から日本人観光客に来てもらえばいいとしか思っていなかったかもしれないが、日本人サラリーマンの有給休暇取得率の低さは相変わらずで(2016年12月15日 We Love Expedia-「世界28ヶ国 有給休暇・国際比較調査2016」  日本の有休消化率、2013年以来3年ぶりに最下位に)(Expedia Viewfinder on November 15, 2016 - 2016 Expedia Vacation Deprivation Report)、頼みの熟年旅行者の懐もだんだん寂しくなる一方なのだから(2014年9月14日 統計からみた我が国の高齢者(65歳以上))-高齢者の家計)、週末で来られるような地域を除けば、今後も期待薄といっても過言でない。
従って、地方都市の観光政策担当者は、海外拠点の日系旅行社のように、もはや日本人だけを相手にせず、という方針で臨まないとお先真っ暗と言えるだろう。

ところで、ステファン・シャウエッカー(Stefan Schauwecker)さんが指摘している地方都市のバスだが、この点に関して言えば、日本の地方在住者は車で移動するのが当たり前になっていて、外国人が使うのは公共交通機関だというのがわかっていないと思う。
従って、彼が、「鉄道と連動しないバスの不思議」と書いても、地方交通の当局者が見ているのは地元の中高生の通学と高齢者の通院、役所巡りの利便性だけだから、列車や他の交通機関との連携は二の次になる。
それで利用者が減っているので活性化といっても、利用時間帯や接続が不便な公共交通機関を利用する人がいるわけがない。
地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」というものがあるようだが、観光資源のある自治体は、是非とも外国人観光客の利用を視野にした政策を実施して欲しいものだ。
そもそも、地方都市のローカルバスのことについては、何も細かなことまで英語で書く必要はない。
運賃の払い方と下車のときのやり方、時刻表と、主要停留所の近くにある観光地を案内すれば事足りるだろう。
いずれにせよ、これから日本が観光立国を目指すためには、外国人が個人旅行をしやすい環境を整えることが重要なのだ。

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外国人だけが知っている美しい日本 ~スイス人の私が愛する人と街と自然~ by ステファン・シャウエッカー

■これから求められるのは、飛行機や新幹線を降りたあとの交通情報

2008年から、私は国土交通省が主導する「VISIT JAPAN (VJ)大便」を務めています。
これは、海外からの観光客を増やすために、有識者の提言を聞くという取り組みです。
第一期のメンバーには、大手鉄道会社の社長や有名温泉地の代表者など観光のプロに加え、ファッションデザイナーのコシノジュンコさんなどの著名人もいらっしやいます。
ですから第二期に指名されたときには、「私でいいのですか?」と、とまどいました。
それでも非常に光栄なことですので、喜んでお受けしました。

VJ大便の役割は、基本的には「今の仕事の中で、海外からの観光客を増やすために尽力する」ということです。それに加えて、年に数回、ミーティングやシンポジウムが行われています。
私に求められているのは、長きにわたって外国人旅行者の動向を見続けてきたプロとしての立場から意見を述べること、「ジャパンガイド」のサイトを通じて届けられる旅行者たちのナマの声を、他の大便や国土交通省の方々に伝えることだと思っています。

外国人観光客からの質問で多いのは、交通に関することです。
質問が多いということは、情報が足りていないということだと思います。
飛行機や新幹線など、観光拠点都市へ行くための第一次交通手段については、すでに十分な情報がありますが、そこから先のバスに関しては、外国語の情報が少ないのです。

■鉄道と連動しないバスの不思議

日本の公共交通で私が昔から疑問なのは、「なぜ駅前を発着するバスの運行時刻が、鉄道と連動していないのか?」ということです。
それは私が、鉄道とバスが必ず連動しているスイスで生まれ育ったからかもしれません。
スイスでは、駅を出るとバスは必ず待っています。
数分前に出発してしまったとか、次のバスまで長時間待つということは、基本的にありません。
ですから旅をする際に、バスの時刻を気にする必要がないのです。

けれど日本では、不思議なくらいバラバラですよね。
地方のバス路線の場合、ウェブ上に時刻表の情報を掲載していても、日本語だけというサイトがほとんどです。
旅好きな日本人の友人は、「ローカルなバスの時刻を調べるのは大変。しかもいつの間にか変更されていたり、ときには廃線になっていたりするからスリリングだ」と笑っていました。
日本人でさえ苦労するのですから、海外からの旅行者がバスの時刻まで事前に調べることはとても難しいです。

もちろん、ローカルバスを乗りこなして旅する外国人はめったにいませんから、今はまだ大きな問題にはなっていません。
けれど、海外からの観光客は、2013年に 「ビジット・ジャパン・キャンペーン」 の目標でもあった年間1000万人を突破しました。
2020年の東京オリンピックに向けての盛り上がりを考えると、「飛行機を降りたあと」「新幹線を降りたあと」の交通情報を外国人旅行者にどう届けるかは、いずれ取り組まなければならない課題だと思います。

■改善が待たれる京都のバス

バスというと、どうしてもまた京都について触れざるを得ません。
京都は私の大好きな場所なので、だからこそとても残念に思うのです。
地下鉄が網の目のように走っている東京や大阪と違い、京都での観光はバスに頼る部分が大きいです。
しかしこのバスが・・・。

まだ京都の交通事情をよく知らなかった頃、桜を取材した帰りにバスに乗った私は、夕方のラッシュアワー近くに、市内で大渋滞に巻き込まれてしまいました。
そのとき、わずか数百メートル進むのに40~50分かかるという経験をしました。
しかもバスは観光客で満員です。
「ジャパンガイド」に寄せられる京都への不満の意見でいちばん多いのが、交通の便の悪さです。
バスは草体が小さめで本数が少なく、特に桜や紅葉の季節には、私の経験したような渋滞が毎年のように繰り返されています。
ですから「ジャパンガイド」では、「できるだけ地下鉄や鉄道を使い、あとは歩くように」とすすめています。

■ぜひ欲しい、英語で予約できるサイト

今後はインターネットから英語で電車やイベントチケットなどの予約ができるようになるといいと思います。
日本への旅行を準備する際に、みんなインターネットを利用しているからです。
いちばん欲しいのは、電車の指定席の予約ができる英語のサイトです。
現状ではJR東日本の新幹線と一部の特急の予約ができますが、それ以外はほとんどできないのです。
特に作ってほしいのは東海道新幹線です。
最も需要が多いですから。

できれば他の交通機関、たとえば私鉄、バス、フェリーなども英語予約サイトがあれば便利だろうと思いますが、地方では外国人旅行者の需要がない交通機関もありますので、それは無くても仕方ありません。
しかし、全国の主要な交通機関、都市や観光地の交通機関に関しては、海外から英語で予約できるサイトがあったら素晴らしいと思います。

有名観光地で言えば、あの東京スカイツリーですら、海外から予約ができません。
なぜならチケットの購入には、外国で発行されたクレジットカードが使えないからです。
ご存知のように、東京スカイツリーは開業から50日間は予約でしかチケットを買えませんでした。
当日券はまだ販売されていなかったのです。
つまり、その期間はほとんどの外国人観光客が行きたくても行けない状態でした。

当時、このことを知ったときはびっくりしました。
外国人観光客を誘致するキャンペーンを行なっている時代に、東京に新しくオープンしたメジャーアトラクションで、外国人が予約できる英語のシステムがないことに本当に驚きました。
今は当日券がありますので、外国人観光客でも展望デッキまで上れるようになりましたが、いまだにサイトで事前予約することはできません。
英語の案内ページはあっても予約ページはなく、「日本で発行されたクレジットカードしか使えません」と書かれています(2014年6月現在)。
交通機関や観光名所などのチケットも、2020年の東京オリンピックまでには、このような点が改善されていたらいいと思っています。

■外国語のガイドツールが増えると、状況は変わる

「ジャパンガイド」がサイトで観光地を紹介するとき、その説明文に入れるのは、「英語のパンフレットはあるか」「英語の説明表示はあるか」「英語のガイドツアーはあるか」という点です。
外国人観光客が多く訪れる有名観光地のほとんどは英語の表示が併設されています。
特に東京など都市部の交通標識や鉄道の表示は、どんどん改良されていて、とてもわかりやすくなっています。
京都の観光案内所などで入手できる英語版の観光マップは、昔から本当に素晴らしいと感じています。

一方で、もう少し改善すればもっと良くなるのに、と感じる場合もあります。
たとえば北海道の知床国立公園は、世界遺産に登録されて観光客泌増えたことにより、知床五湖を見学するシステムが大きく変わりました。
クマが生息するエリアなので、夏の時期に遊歩道を歩いて見学を希望する観光客は、事前レクチャーを受けたうえでガイドツアーに参加しなければなりません。
個人で行ってはいけないのです。

私が訪問した二年前には、外国語のパンフレットは用意されていましたが、外国語によるツアーはありませんでした。
これは、とてももったいないことだと思いました。
説明がわからなくても、あの美しい風景だけで十分に楽しめるとも言えますが、もし言葉がわかったなら、楽しさはさらに広がったと思います。
外国語のツアーはやはりあったほうがよいと思います。

■外国人アドバイザーによって、地元の魅力はもっと伝わる

私は日本の歴史や仏教などについて少しずつ勉強しています。
知識を持っていると、観光の楽しさが違ってきます。
良きガイドがいれば、日本人からすると「何もない街」でも、訪れる価値のある場所になることがあります。

和歌山県田辺市の熊野ツーリズムビューローでは、カナダ人のブラッド・トウルさんが、プロモーション事業部長として長年にわたり地元の観光のためにがんばっています。
彼が来たことで、英語のホームページや資料が充実してきました。
彼は旅館や土産物店に出向き、どこにどのような英語の表示をつければ外国人観光客は困らないかなどのアドバイスを積極的に行いました。
さらに宿泊施設のために、外国人客と指さし会話ができるマニュアルも作成しました。
ミシュランの『グリーンガイド・ジャポン』で、熊野古道は三つ星を獲得していますが、その陰には、熊野という土地の魅力だけでなく、こうした地道な取り組みがあったからだと私は思います。

長野県の戸倉上山田温泉にも、そんな外国人がいます。
亀清旅館で若旦那を務めるタイラー・リンチさんです。
2005五年に奥さんの実家である温泉旅館を継ぐべく、結婚して10年住んでいた生まれ故郷のシアトルから引っ越してきました。
旅館の仕事をこなしながら、地元の人たちとも幅広く交流し、温泉街を活性化させて、外国人観光客を呼び寄せるための活動にも取り組んでいます。

高野山の無量光院という宿坊には、クルト・キュブリさんというスイス人僧侶がいます。
高野山は、外国人観光客にも人気です。
特に宿坊体験は、「ジャパンガイド」の調査でも非常に満足度が高くなっています。
お寺に泊まり、精進料理を食べ、お勤めに参加するだけでも、もちろん素晴らしい経験になるでしょう。
しかし、さらに高野山、真言宗、弘法大師について直接英語で話してもらえると、旅の味わいがぐっと深まります。

日本には、魅力的な土地、人、ものがたくさんあります。
しかし、それらはまだ十分に世界に伝わっていないと、私は思います。
「ジャパンガイド」は、その名の通り、ありのままの日本の姿を世界に紹介する「良きガイド」でありたいと思います。

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