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2015.08.10

杉村太蔵議員の国会質問から9年、新卒至上主義の就活環境は変わったのか

去る8月1日、2016年(平成28年)春入社の大学生・大学院生の就職・採用活動が本格的に始まったことが新聞などで報じられた。(2015年8月1日-日経新聞:初日から内々定も 16年春入社の就活本格スタート
経団連が2016年(平成28年)卒入社組から採用面接を8月へ「後ろ倒し」するように傘下企業に要請したからだ。(2013年9月13日-経団連:採用選考に関する指針
さて、その採用選考だが、官公庁や日系大企業の多くは、終身雇用制度は崩壊していると言いながらも、往時の遺物である新卒至上主義はかたくなに固守しているように思える。
実際、中高年社員が失業したり、新卒の時期に正規雇用にありつけなかった若者の経済的困窮度は、様々なメディアで報じられているとおりで、なぜこういう状況の中で新卒至上主義を貫きとおすところが多いのか不思議で仕方がない。

経営者や採用担当は自分自身の実体験として、日本人社員は卒業後のブランクがあったり、中途採用の社員は優秀な人が少ないと言うのか。
それとも単なる思い込みなのか。
外国の企業でそういうことをしているのかと私なりに友人に質問したことがあるが、そのような実態は私が知る限り日本だけのものだ。(参考:2014年3月26日-キャリコネ:新卒一括採用」は残すべきか 「ぶっ壊したい」と「すばらしい」で大議論
現在、安倍内閣は財界の意向に沿って、解雇規制を緩和するような法整備をしようとしているが、入口(中途採用)が閉じられたままの状態では、労働側の猛反発を受けるのは当たり前なのだ。(2015年4月13日-J-Cast News:解雇規制を緩和する「解決金制度」が動き出した 「金を払えばクビにできる」のか
少なくとも「解雇規制が厳しく労働者の移動が進まない」というなら、官公庁や大企業の多くが新卒至上主義をやめ、いつでも採用の門戸を開いている状況にすべきだし、安倍首相や塩崎厚生労働大臣は中途採用の実態を昇進などの制度も含めて検証すべきだろう。

ところで、今から遡ること9年前、2006年(平成18年)3月1日の衆議院予算委員会第五文科会で質問に立った自民党の杉村太蔵議員は就職に難渋する若者の言葉を代弁してこう述べた。
「(僕たちの仲間が仕事がないのは)新卒採用という、門戸をきゅっと閉めている、これが大きな原因なんです。何が申し上げたいかというと、決して僕たちは働く意欲を失っているわけではないんです。小泉総理のメルマガには、2月2日付で、待ち組という言葉がありました。待たせていた人たちもいるではないかというのが僕の考えです。待ち組ではなく、待たされ組なんです。
非常に経済が低迷して、新規採用の門戸が物すごく狭まり、では、2007年問題で団塊の世代ががばっと抜けた後、もしこの新卒採用をいつまでも続けていたら、僕らは永遠に、もう二度とチャンスはないわけですよ。
ぜひ、中野副大臣、経済団体の方々に、この新卒採用の撤廃、年齢、性別、学歴不問、24時間365日、意欲のある若い人たちの声は聞きますよと、それで、もし現時点で会社で採用できないなら、その理由をしっかりと、正規雇用の基準をしっかり僕たちに目標を提示していただきたいんですよ。そういう働きかけを日本政府としてやっていただけないでしょうか。」

このことは、翌日の朝日新聞「『僕ら待たされ組』 杉村議員が国会初質問」や日刊スポーツ「自民杉村太蔵議員、初質問で提言」などでも報じられた。
彼は、その後も複数回「2006年(平成18年)6月9日の衆議院(第164回常会)厚生労働委員会2007年(平成19年)3月28日の衆議院(第166回常会)厚生労働委員会2008年(平成20年)5月23日の衆議院(第169回常会)厚生労働委員会」に渡って、機会があるごとに根気強く国会質問を重ねた。
特に2006年6月9日の厚生労働委員会における中野清厚生労働副大臣の答弁によれば、「日本経団連も日本商工会議所も、同じ(若者の応募機会の拡大の)認識を持っている」とのことだが、本当にそうだったのだろうか。(参考:2006年8月10日-日本経団連タイムス:安倍官房長官と懇談-再チャレンジ支援で意見交換 *当時の安倍官房長官は現在の首相)
小泉チルドレンの象徴だった杉村太蔵氏がわずか1期で国会議員でなくなった後も、「新卒」というキーワードで厚生労働委員会の国会会議録を検索すると、多数の国会質問が出てくるし、それに対する政府答弁もある。
2015年7月9日付の外資系OLのぐだぐだ「中国崩壊で就活氷河期再来か?大学生は、今のうちに武器を取れ」を読む限り、あまり変化はないように思えるが、こうした国会での議論の積み重ねで、少しは日系企業の採用姿勢に変化が現れたのだろうか。

実際のところ経団連の「新卒採用(2014年4月入社対象)に関するアンケート調査結果の概要」を見ると、既卒者採用については約3分の2(69.2%)が実施しているものの、詳細に見ると、2011年1月12日付の「新卒者の採用選考活動の在り方について」を受けた、卒業後3年以内(55.4%)であることや、正社員としての就業経験がない(42.3%)ことを条件に、新卒採用の扱いで実施(84%)しているところがほとんどで、本当の意味での中途採用はほとんどないに等しい。
これに関して、ITmedia ビジネスオンラインの連載記事で「ちきりん×城繁幸の会社をちゃかす(3):なぜ企業は中途採用に消極的なのか?」というのがある。
著名ブロガーによる対談というわけだが、ここでも城繁幸氏は「企業は40歳以上の中途採用をほとんどとらない。既卒問題、ポスドク問題(博士号を取得しても就職できないこと)、女性問題というのは突き詰めていくと年功序列問題が立ちはだかる。このシステムを変えていかないと、流動的な社会にはなりません。」と持論を展開している。

さらに、参考程度にしかならないが、Yahoo!知恵袋で「日本企業はなぜ新卒に固執するのか?(2008年10月2日)」と質問した人に対し、ベストアンサーとして「何も知らない子の方が、洗脳しやすいからです。」と書かれたものがある。
レスポンスの書き手はおそらく女性だろうが、それ以外の回答でも日系企業のサラリーマンの本音を垣間見ることができる。
実際、数年前に当時の私の上司もこう言ったことがある。「経験者は仕事はできても煩いんだよね。新卒の方がクセがないから」
それにしても、インターネット上では、外部から自分たちのサラリーマン文化をおかしいと言われると、逆切れしたようなコメントを吐く人(推定日本人男性)が多いが、なぜなのだろうか。
相手が海外在住者や帰国子女、在日外国人だと特にそうなる傾向が強い。
私が4月11日の「マクロ経済も老後の生活も悲惨にする日本の労働環境」の中で紹介したインドネシア人看護師のときもそうだった。
捨てゼリフやコメントの中で「それなら日本に来るな、外国へ帰れ。」というのがかなり目につく。
そういう彼らは、今後の日本企業が日本人の新卒サラブレット社員だけでやっていけると本気で思っているのだろうか。

今国会(第189回常会)で審議中の法案に「労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律案(同一労働同一賃金推進法案)」というものがある。
正規、非正規にかかわらず職務の内容に応じて同じ待遇を受けられるようにするという趣旨の法案だが、これが成立して実効性を持てば、公務員と大企業正社員が特権階級のような状況になっている日本の労働市場にも多少変化が芽生えるかもしれない。
つい先日、シャープが45歳から59歳まで社員を対象に希望退職者を募集したとの報道(2015年6月17日-産経新聞:弱腰批判も シャープ労組、3500人リストラ受け入れへ 「争っている場合では・・・」)があったが、希望退職に応じた(応じさせられた?)人はどうなるか考えたことはないのだろうか。
いずれにせよ、こういった大企業でも愚かな経営者が舵取りをすると、犠牲になるのは一般の社員で、こういう局面で中途入社の間口があるとか、非正規雇用でも職務に応じた均等待遇が受けられるといったことがあればどれだけ助かることだろうか。

それに最近では毎年10万人が介護離職するという時代(2013年8月12日-日経新聞:毎年10万人が介護離職、求められるケアハラ対応)、当然その中には優秀な幹部社員も含まれているだろう。
このような中で新卒至上主義にどれだけ経営的な意義があるかわからないが、いつまでも横並びや前例踏襲で採用活動をやっているような、昭和的遺物の経営者や幹部には早急にお引き取りいただいた方が日本の国益にもなるだろう。
ITmedia ビジネスオンラインの連載記事「ちきりん×城繁幸の会社をちゃかす(7):『日本人は勤勉』というが・・・迷信かもしれない」 の中で城繁幸氏は言う。「保守的なことばかりやっている会社に、革新的な考えをもった学生なんて来ないですから。」
21世紀になって企業は世界を相手に競争しないといけないのに、前例踏襲的な社員ばかりでは競争に勝てるはずがないだろう。
ついでながら、ケビン・クローン(Kevin Clone)氏の2013年4月8日付のコラム「日本人が勤勉でないこれだけの理由」も紹介しておこう。
私も彼の言う怠惰な人種だったと思うと頭が痛いが、彼の言うことも一理あるだろう。
もはや新卒至上主義を固守し、年功序列賃金制度の維持に汲々となっている公務員や大企業社員は怠惰な人種と言えるかもしれない。
私は数日前に出たパーティである女性にこう言われたことがある。「日本人は決して勤勉ではありません。」
もう一人の友人はこうも言っている。「私は怠け者の日本人より勤勉な中国人のほうを信用します。」

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