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2012.02.19

持ち家がアダになる未来の日本

かしこい大家の不動産投資の管理人、タンク将軍こと鈴木正浩氏の著書「HSBC香港でしっかり儲ける投資術」が人気だそうだ。
その本の中で私が気になったのは、不動産業を本業とする彼でさえ、日本人の持ち家信仰に警鐘を鳴らしていることだった。
つまり、得体の知れない悪徳マンション投資業者が跋扈する時代に、彼の本業に差し障りのあるにもかかわらず、あえてそれを自ら書いているのは、それだけ彼が良心的とも言えるだろう。
おそらく、多くの人は以下の記事に対して、「私たちは不動産(土地や家屋)に投資しているわけではないので関係ない」と思うだろうが、彼も言うように”マイホームをもっているというだけでも、不動産に投資しているのと同じ”と思わないとバカをみることになる。

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■日本人の不動産に偏ったポートフォリオは問題

私の本業は不動産業ですが、ビジネス、すなわちサービス業としての不動産業は何とかうまくやりくりすることができますが、投資対象としての不動産には、あまり魅力がないというのが正直なところです。
にもかかわらず、日本人に多く見られるポートフォリオの傾向としては、不動産の占める比率が非常に高いケースが多いため、問題だと考えています。

不動産投資というと、つい不動産投資信託(REIT)やワンルームマンション投資などをイメージしてしまいますが、実は単にマイホームをもっているというだけでも、不動産に投資しているのと同じと考えられます。
しかも、この場合の不動産資産は、バランスシートの一方に負債を抱えているというケースが大半でしょう。
つまり、銀行などから住宅ローンを借り入れ、20年、30年という長期にわたって返済していくというケースです。

不動産の場合、金額が非常に大きくなりますから、ポートフォリオに及ぼす影響も大きくなります。
たとえば、都内で5000万円の住宅を購入するとしましょう。
頭金として1000万円も入れたら、預金の残高は大きく減少する一方、不動産という新たな資産が5000万円も計上されることになります。
これだけでも保有している資産の、資産クラス別比率は、圧倒的に不動産が高くなるはずです。

もちろん、バブル期のように、不動産価格がどんどん上昇していくという状況であれば、買値に比べて高い値段で売れる可能性があるので、転売を繰り返し、より高額な物件に乗り換えていくこともできますが、今後はそれもむずかしくなります。
というのも、日本のいまの状況では、どう考えても不動産価格は下落するからです。

いま、不動産業界では2025年間題がまことしやかに囁かれています。
これは、2025年以降、日本の世帯数が減少していくというものです。
世帯数が減少しても、そう簡単に家を潰すことはできません。
一軒家にしても、分譲マンションにしても、いうなれば供給過多になるということです。
当然、そうなれば不動産価格は下落していきます。

■投資対象としての不動産はこんなに不利

また、不動産を所有することによって背負わなければならないデメリットとしては、次の5つのことが考えられます。

第一にキャピタルロス。
これは、不動産を購入した時点で背負うロスです。
私の試算では、おそらく今後30年間で、ざっくり35%くらいは、不動産価格が下落すると考えられます。
つまり1年あたり1%程度の下落ですから、2500万円の土地であれば、1年間で25万円ずつ資産価値が目減りしていくという計算になります。

第二は修繕費用です。
マイホームをもったら、物件の価値が目減りするのを少しでも抑えるために、修繕をきちっと行なう必要があります。
文化住宅の場合、耐用年数は25~30年で設定してありますが、基本的には10年間で、建物価格に対する10%の修繕費用を見込んでおく必要があります。
つまり、建物価格が2000万円だとしたら、10年間で200万円、1年あたり20万円が必要になります。

第三は金利。「参考:資金係数表(Excel)
30年ローンを組んでマイホームを購入した場合、この間の平均値で3%程度の金利負担が生じてきます。
もし、5000万円のうち2500万円を住宅ローンで賄おうとしたら、何と金利の出費だけで1300万円にもなります。
つまり2500万円を借り入れた場合、最終的に返済する金額は3800万円にもなるのです。
1年間の金利負担額を割り出すと、43万円にもなります。

第四は維持管理費です。
町内会費とか区費、お祭りの際の寄付、火災保険、生命保険など、さまざまな経費がかかってきます。
これらの維持管理費が1年あたり、ざっと考えても10万~15万円程度必要になります。

そして最後に税金。
固定資産税と都市計画税がかかってきます。
この負担は地価にもよりますが、仮に土地の値段が2500万円で、それに建物が付いている一軒家の場合だと、年間で15万円前後の税金がかかります。

これらを合算すると、夢のマイホームをもつことによって、1年間で何と約120万円もの出費(観念経費を含む)が発生してきます。
これで、2025年問題が現実のものになつたら、不動産を保有することでさまざまな負担が生じているのに、一向に不動産価格は上がらないということになり、オーナーの負担はますます高まっていきます。
いまはまだそこまで深刻な状況にはなっていませんが、今後10年間を考えれば、不動産価格の下落による問題点がクローズアップされるリスクは、極めて高いといってもよいでしょう。
こうした不動産保有に伴うリスクを抑えるためにも、資産の一部を海外投資に回すことは有効な手段の一つになるのです。

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私も21世紀になってから持ち家することについて「少子化も人口減も止まらない理由」のほか、「今日の一言(2010年4月11日2009年7月31日2009年4月22日2007年9月9日2005年6月4日2004年11月7日2004年6月27日2003年11月29日2003年10月31日)」で、そのリスクについて書き続けてきた。
なぜかと言うと、一流企業社員と言えども定年まで安泰でいられるとは限らない時代に、長期の固定債務を抱えることのリスクは一生を台無しにするほどのものであるからだ。
ジャーナリストの清谷信一氏も「耐震強度偽装問題」についてのコラムの中でこう言っている。
「この事件が起こるはるか前からぼくは自分の著書で、これからマンション買う奴は馬鹿だ、買うべきではないと警告してきた。もちろん例外もある。バブル以前の古いマンションをキャッシュで買うことだ。古いマンションはバブル期のマンションより間取りが広い場合が多く、しかも長年にわたって使用されているので問題があるかどうかわかる。」と・・・

そして、私は知らなかったのだが、鈴木氏は、固定資産税の上限税率(2.1%)撤廃が将来の不動産保有リスクとして顕在化する可能性があるとも言っている。
つまり、固定資産税の標準税率は、地方税法第350条で固定資産税評価額(課税標準額)の1.4%となっていて、従来はその1.5倍(2.1%)を超えることができなかったのが、所得税の配偶者控除制度の改悪(財務省-平成15年度税制改正大綱)といった目を惹くようなトピックの裏で、地方税法の改正が行われ、平成16年度以降、法的には2.1%を超える税率を設定することもできるようになったというわけだ。(総務省-平成16年度地方税制改正について

ちなみに、この標準税率とは、地方税法第1条第1項第5号で「地方団体が課税する場合に通常よるべき税率でその財政上その他の必要があると認める場合においては、これによることを要しない税率をいい、総務大臣が地方交付税の額を定める際に基準財政収入額の算定の基礎として用いる税率とする。」となっていて、財政上その他の必要があると認める場合は、この税率でなくてもよいという規定になっていて、もちろん富裕な自治体はこれを下げることもできる。
平成22年度の市民税を減税して喝采を浴びた名古屋市の河村たかし市長、その根拠は、まさに地方税法第310条(個人の均等割の税率)、第312条(法人の均等割の税率)、第314条の3(所得割の税率)、第314条の4(法人税割の税率)が、それぞれ標準税率であることから、これらの税率を下げたというわけなのだが、実はこれを行うと地方財政法上のペナルティが課せられる可能性があり、起債が許可制になったり(地方財政法第5条の4第4項)、地方交付税が減額されたり、すでに交付された地方交付税の一部の返還を命ぜられることがある(地方財政法第26条第1項)という。
従って、世間で言われるような、市議会や事務当局側の抵抗が必ずしも守旧派のものとは言えないところに、地方自治の限界があるとも言えようか。

ただ、2007年3月6日に財政再建団体となった夕張市でさえ固定資産税の税率は1.45%に留まっているため、ほとんどの人は税制上の不動産保有リスクを意識することがないのだろう。
また、夕張市のように明らかに財政破綻した自治体ならともかく、そうでないところで固定資産税を上げることは、そこに新たに居住したいという人を遠ざけるだけに、様々な名目を付けて法的外の税目(例えば横浜市のみどり税)を付加するよりも慎重になっているに過ぎない。
従って、鈴木氏が懸念するようなことには当分ならないという気はするが、平成24年度税制改正大綱にあるように、住宅用地の据置特例(住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例:地方税法第349条の3の2)を廃止するといった目立たない増税が始まろうとしているのも事実だ。
私が思うに、将来、鈴木氏が懸念するような事態になったときは、政府や自治体が持ち家政策を完全に諦めたときであり、その時点で日本はデフォルト(財政破綻)している可能性すらあるということだ。

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