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2011.10.23

福島の英雄にスペイン皇太子賞

Heroes_fukushima

去る21日、スペインのオビエド(Oviedo)でアストゥリアス皇太子賞の平和部門(The 2011 Prince of Asturias Award for Concord)で、福島の英雄たちを代表して現場指揮官5人が受賞の栄誉に与った。
これはこれで素晴らしいことだと思うのだが、なぜこういうものが日本政府・自治体のトップから出ないのかと疑問に思うのは私だけなのだろうか。
東日本大震災直後に福島第一原発の事故の被害を最小限に食い止めようと尽力した約50名の人たちをFukushima 50と呼んで賞賛したのも外国のメディアだった。(New York Times - Last Defense at Troubled Reactors: 50 Japanese Workers BBC - Japan hails the heroic 'Fukushima 50' Guardian - Fukushima 50 battle radiation risks as Japan nuclear crisis deepens)
この当時も政府が彼らを個人表彰すべきではないか、ということを書いていた人はいた。
日本のメディアはそれを後追いする形で報道したが、政府・福島県・東京電力から彼らを賞賛する声明は未だに出ていない。

そして、今回、福島の英雄がスペインで表彰を受けたという記事を配信しているメディアで、日本では現場で働いた人たち全員の名前を挙げて表彰すべきではないか、少なくとも政府・福島県・東京電力のウェブサイト上ではそうすべきだ、と書いているところは一つもない。
日本から遠く離れたスペインで表彰された5名の警察、消防、自衛隊の現場指揮官、それを見ている部下たちはこういう実態をどんな気持ちで見ているのだろうか。
かつてミスター円と呼ばれた榊原英資氏は「日本は没落する」の中で、小泉政権以降、日本では民は善、官は悪という風潮がまかり通っていると書いている。
もし、その風潮の中で彼らが福島に行くのは当たり前、何で表彰なんかするのだ、という空気が政府や自治体、メディアにはびこっているのだとしたら、優秀な人材の取り合いが世界で始まっている時代に、まともな人が公務員を目指すことはなくなるだろう。
今日の読売新聞(教育長「万策尽きた」・・・わいせつ教師続出の静岡)で、静岡県下の学校で教員の不祥事が止まらないことに安倍徹教育長が「私としても万策尽きた」と語ったということが報じられたが、これが氷山の一角、日本の公的機関が途上国並の職場に変わり果てる前触れでないことを祈りたい。

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「フクシマの英雄」にスペイン皇太子賞 (2011.10.22 読売新聞)

【オビエド(スペイン北部)=三井美奈】 福島第一原発事故発生後、被害拡大防止に取り組んだ「フクシマの英雄たち」へのスペインのアストゥリアス皇太子賞の授賞式が21日、当地で行われ、警察、消防、自衛隊の現場指揮官5人が代表としてフェリペ皇太子から賞状を受け取った。
賞は、皇太子が名誉会長を務める財団が毎年、文化や科学はじめ各分野で活躍する個人・団体に授与しているもの。
「フクシマの英雄たち」は平和部門での受賞で、個人を特定せず、原発作業員や消防士、警官など「自身の生命を危険にさらしながら、被害を最小限に抑えるために献身的に働いた」人たちを指す。
式典では、原発3号機への放水作業を指揮した東京消防庁ハイパーレスキュー隊の冨岡豊彦・消防司令(48)がスピーチし、「『フクシマの英雄たち』という称号を授かったことは、ここにいる受賞者のみならず、日本全国民に対するものと確信します」と述べた。

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Nuclear heroes claim Spanish award (Oct. 23, 2011 Japan Times)

OVIEDO, Spain - Five Japanese emergency workers honored for their actions during the Fukushima nuclear disaster have expressed their gratitude to Spain's Prince of Asturias Foundation and said they will never forget its kindness.

The five recipients of the 2011 Prince of Asturias Award for Concord - two police officers, a firefighter and two Self-Defense Forces soldiers - thanked the group at a news conference Friday in Oviedo, northern Spain, before attending an awards ceremony at a local theater in the evening.

Among the five are Yoshitsugu Oigawa, 56, a Tokyo Metropolitan Police superintendent who directed an operation to pour water into one of the overheating reactors from the ground, and Toyohiko Tomioka, 48, a member of the Tokyo Fire Department's "hyper rescue" team who led a separate cooling operation at a spent-fuel storage pool.

The other three are Col. Shinji Iwakuma, 50, the leader of the Ground Self-Defense Force's Central Nuclear Biological Chemical Weapon Defense Unit who directed decontamination and other operations, GSDF Lt. Col. Kenji Kato, 39, who dropped water onto a crippled reactor from a helicopter, and Futaba Police Station chief Masami Watanabe, 57, who led residents to safety.

Watanabe rescued several hundred people at a nursing care facility immediately after the earthquake.
"The Fukushima Prefectural Police lost some staff members in the line of duty. They are the real heroes," Watanabe said.
"We are grateful for the fact that (people in Spain) kindly watched over us from the opposite side of the globe. This Japanese will never forget the kindness he has received for the rest of his life," he said, bowing.

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2011.10.22

国の借金1000兆円超え確実なのに超円高の不思議

今日の経済ニュースで目を惹くのは円ドルレートが史上最高値を更新したという記事だ。
日本のメディアはもとより海外でもトップニュースに持ってきているところがいくつもある。
海外の金融機関に口座を開き、投資をしている人の中には、日本の中央政府はもとより、地方も合わせた公的債務が返済不可能な状態にまで積みあがっていることから、日本の財政破綻のリスクヘッジのためにという人もいるだろう。
その公的債務が国の借金だけで、今年度末に1000兆円を超えることが確実になったと新聞各紙は報じている。
常識で考えれば財政破綻リスクのある国の通貨がなぜ買い続けられているのか、不思議に思うのは私だけではあるまい。

円高が進行しているとき、決まって新聞各紙が書くのは「欧米諸国の経済危機が長引くことの懸念から、より安全とされる円に資金が流れ込む動きとなっている」という論調だ。
これを見て少なからず日本人の海外投資家が思うのは「何が安全なんだ!日本円がリスクだらけだからわざわざ香港の銀行や証券会社に口座を開いているんだ!」ということだろう。
ところが、英文のロイターの記事の表題が「FOREX-Dollar slumps to record low versus yen(外国為替-ドルは対円で最安値に急落)」という具合に米ドル安が大きく進行したことによって相対的に円が高く見えているとも言える。
何しろ日本のメディアは外国為替に関しては、対ドルレート以外のことはほとんど記事にしないため、頭がそのように刷り込まれているような気がしないでもない。

事実、2008年9月1日(リーマンショック前)と2011年10月21日の、円の主要通貨に対する為替レートをOandaで比較して見ると、米ドル(USD)が108.2円から76.6円へ29%安、ユーロ(EUR)は158.4円から105.7円へ33%安、イギリスポンド(GBP)が195.3円から121.3円へ38%安と、外貨安が大きく進行したのに対し、円と並んで安全資産とみなされているスイスフラン(CHF)は98.3円から86.1円へ12%安、高金利通貨のオーストラリアドル(AUD)は92.3円から78.6円へ15%安、ニュージーランドドル(NZD)は75.4円から60.9円へ20%安、将来の切り上げが期待される中国元(CNY)が15.8円から12.0円へ24%安と、先の三通貨ほど安くはなっていない。
これがリーマンショック後であれば、円キャリートレードの巻き返しということで説明がついた円高基調が、今回のことはなぜだかわからないというのが本音だろう。
エコノミストはそれなりのもっともらしい理由を付けて解説する(それが彼らの仕事だ)だろうが、それで納得する人はあまりいないかもしれない。

どうせエコノミストがもっともらしいことを言うだけならば、私ももっともらしいことを言ってみたいと思う。
PIGS諸国(ポルトガル・イタリア・ギリシャ・スペイン)以上に財政破綻リスクがある日本円が大きく買われている理由、それは最悪な状況の通貨(米ドル・ユーロ)よりもマシな国の通貨(円・スイスフラン・オセアニア通貨)のうち、欧米の機関投資家が安心して投資できるものが、日本円だと思われているからだ。
今年の夏ごろから英字紙には「欧米諸国の日本化現象」についていろいろ書かれているため、世界の投資家の懸念は日本の財政危機よりもユーロ圏の経済危機の方に目が向いている。
懸念(Fears)という言葉が英字紙に踊るとき、この文字の前後に来る言葉が意味するもの、そこから連想される金融商品は大量に売られており、浮遊するホームレスマネーの行き先が日本円(決して株や不動産ではない)だったというわけだ。

ここで日本についての懸念(Fears)が英字紙に踊る機会は、1990年代後半、日本発の恐慌が世界を震撼させる、などと言われた頃に比べると格段に落ちているような気がする。
その原因の一つは世界の英字メディアが日本に注目しなくなったからだ。
2002年8月11日付けのニューヨークタイムズは、As Tokyo Loses Luster, Foreign Media Move On(東京が輝きを失うにつれて海外メディアが撤退)という記事を載せた。
そこから9年余り、日本発のニュースが世界を駆け巡ることことは少なくなり、素人でも想像し得る「日本国の借金1000兆円超え確実」などという記事が英字紙に掲載されることはなかったのだろう。
つまり、英字紙に掲載されなければ、海外の投資家が知る機会はほとんどない。
しかも、日本は危機だ、危機だ、と言われ続け早20年、何もしなかった国が潰れないのだから、あと数年で政府がデフォルト宣言するリスクは少ないと見られているのだろう。

また、外国人投資家が「安心」できる要因の一つに日本人の生真面目さもあると思う。
投資家が一番恐れているのは、「払えるないものは払えない、もうダメだ!」とバンザイされることだが、日本の首相にそのようなことを言われるリスクが諸外国に比べると格段に低い。
何しろ、金利が0.1%の円預金に資金を寝かせ、政府が負担増をどんなに行っても本気で怒らない国民、一方の政府は、米国がどうなろうと、私信じてます、とばかりに米国債を抱え続け、その為替損の穴埋めを日本国民に押し付けるという図式、これを見た外国人投資家に奇妙な安心感が芽生えたとしても不思議ではないだろう。
もし、政府がChikirinの8月26日の日記「円高、いいね!」に書かれているような政策を一つでも実行する気概があれば、もっと違った展開になっていると思う。
つまり、通貨高を仕掛けても通貨安を仕掛けても、政府が右往左往して何もできないと思われているからこそ、外国人投資家は日本円に対して「安心」できるのだ。

最後に、株式投資は美人コンテストとも言われることがよくある。
何でこんなボロ株が上がるのだ、というときが多いからだ。
これに準(なぞら)えて言えば、外貨投資もそれと同じことが言えるだろう。
しかし、ここで登場するのは美人ではなく、単なるデブだ。
あなたがビジネスマンで海外出張を命じられたとしよう。
乗るのはエコノミークラス、搭乗区間はニューヨークからフランクフルト、座席はあいにくと中央の席しか空いていない。
隣に来るのは白人のデブがいいか、日本人のデブがいいか。
本当なら隣にはイケメンか美人に来て欲しいところだが、今の世界情勢は、どこの国でも財政のダイエットが必要という意味で、飛行機にデブしか乗っていないのと変わりがない。
そういった意味で今の円高というのは究極の消去法によるものかもしれない。

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円が対ドルで史上最高値更新、一時1ドル=75.78円 (2011.10.22 ロイター)

[ニューヨーク 21日 ロイター] 21日のニューヨーク外国為替市場で、円相場が一時1ドル=75.78円に上昇し、史上最高値を更新した。
市場関係者によると、英系の決済銀行筋やマクロファンド筋から大口のドル売りが出でドル安・円高が進み、その後76.30円-75.90円近辺のストップ注文を巻き込む形でドル安・円高の動きが加速した。
FXソリューションズ(ニュージャージー州)の首席ディーラー、トミー・モロイ(Tommy Molloy)氏は「特定の材料があったわけではなく、日銀が円安政策を導入しないことに一般投資家が業を煮やした格好だ(No specific news. Just general investor impatience with the Bank of Japan's lack of a yen weakening policy.)」と述べた。

スイスでは9月に中銀がスイスフランの上限目標を掲げ、目標達成に向け必要に応じて無制限の介入を実施する方針を示しており、日本の通貨当局もスイスにならう可能性があるとの見方から、最近の円相場は上昇に一定の歯止めがかかっていた。
電子取引システムEBSで、ドル/円は一時75.78円に下落、8月につけた最安値の75.941円を更新した。
その後、邦銀からとみられるドル買いが76.00円の水準で入るなか、ドルはやや値を戻し、1%安の76.09円近辺で推移。
一日の下げとしては8月26日以降で最大となる勢い。

こうしたなか、欧州連合(EU)首脳会議を控え、ユーロが対ドルで上昇。
ロイターデータによると、一時1.3900ドルをつけ、その後0.5%高の1.3846ドル近辺で推移した。
ユーロ/円は0.5%安の105.35円。
ユーロ/スイスフランは0.6%下落した。
主要6通貨に対するICEフューチャーズUSドル指数は0.87%安の76.305。
週間では2週連続での下落となる勢い。

英文記事:FOREX-Dollar slumps to record low versus yen

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国の借金1000兆円、財政危機の恐れ高まる (2011.10.22 読売新聞)

国債や借入金などを合計した「国の借金」が、2011年度末に1000兆円を突破する見通しとなった。
東日本大震災の復興資金を借りる復興債の発行で、借金が一気に増えるためだ。
金融市場で国債の売れ行きが鈍れば、金利の上昇で利払い費が膨らみ、欧州諸国のような財政危機に陥る恐れも出てくることになる。

「国の借金」は、普通国債や、国がお金を短期で借りる政府短期証券、借入金などの合計だ。
6月末の残高は943兆8096億円だった。
財務省はこれまで、2011年度末で995兆9231億円と踏んでいた。

しかし、政府が震災の復興策などを盛り込んだ2011年度第3次補正予算案で、復興債を11兆5500億円発行することになり、1000兆円の大台超えが避けられなくなった。
国債などは国内の民間金融機関が、預金などの運用先として購入するものが大半を占める。
今のところ、国債は順調に買われており、長期金利は1%前後の低水準で推移している。

だが、少子高齢化や景気の伸び悩みを背景に、個人金融資産は減少が続く。
日本銀行の資金循環統計によると、6月末時点の個人金融資産の残高は1138兆円で「国の借金」との差は約200兆円まで近づいた。
政府内には「近い将来、国の借金が個人金融資産残高を上回る」(財務省幹部)との見方もある。

そうなれば、政府は国債の販売先を海外の投資家に頼らざるを得なくなる。
しかし、海外投資家は日本に安定して投資し続けるとは限らないため、国債の値動きが荒くなったり、値下がりして金利が上昇するリスクは高まる。

2011年度の一般会計当初予算ベースで、国は借金の利払いだけで年間9.9兆円も支払っている。
1分ごとに2000万円近くが金利の支払いで消える計算であり、財政再建がますます待ったなしの情勢となっている。(戸塚光彦)

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West shows worrying signs of 'Japanisation' (August 19, 2011 By Richard Milne, Financial Times)
欧米諸国が示す「日本化」の兆候 (日本語訳:2011.8.22 JBPress

The big question for many investors these days is one that could scarcely have been thought about a few years ago: is the west turning into Japan?

このところ、多くの投資家にとって大きな問題は、数年前ならとても考えられなかったものだ。つまり、欧米諸国は日本になりつつあるのか、という疑問である。

The response to that will determine the future direction of western economies as well as of shares and bonds. To date, the tentative answer has been that the developed world is heading Japan's way as government bonds have far outperformed equities.

この疑問に対する答えは、欧米諸国の経済の将来ばかりでなく、株価と債券の将来の方向性を左右することになる。
現時点での暫定的な答えは、先進諸国は日本の方向に向かっているというものだ。国債のパフォーマンスが株式を大きく上回っているからだ。

"This is looking like a Japan-style scenario. I am more nervous than I have ever been before about it," says Sushil Wadhwani, founder of the eponymous hedge fund and a former member of the Bank of England's rate-setting monetary policy committee.

「今の状況は日本流のシナリオのように見える。この問題について、私はかつてないほど心配している」。イングランド銀行の金融政策委員会(MPC)の元委員で、自身の名前を冠したヘッジファンドを創業したスシル・ワドワニ氏はこう話す。

The most striking example of the "Japanisation" of countries such as the US, UK and Germany is in their benchmark borrowing costs. If you take 15 years off 10-year Treasury, gilt and Bund yields there is a remarkable similarity with Japan’s performance from 1988 to 1996.

米国や英国、ドイツといった国の「日本化」を示す最も顕著な例が、各国の借り入れコスト(国債利回り)だ。10年物の米国債、英国債、ドイツ国債を過去に15年さかのぼらせる形で、2003~11年の欧米の利回りの動きを1988~96年の日本国債の利回りの推移と重ねてみると、驚くほどよく似ているのだ。

What happens next will be crucial. Since Japanese yields breached the 2 per cent barrier in 1996, they have never risen above it for any sustained period.

次に何が起きるかが極めて重要だ。日本国債の利回りは、1996年に2%の大台を割り込んで以来、持続的に2%台を上回ったことが1度もないからだ。

In the most striking move of another brutal week for markets, US Treasury yields on Thursday fell below 2 per cent for the first time since 1950. But they have since recovered slightly to stand on Friday afternoon at 2.08 per cent. Many investors, however, believe they could fall further, with some targeting yields of 1.75 per cent.

市場にとってまた荒々しい1週間となった8月第3週で最も特筆すべき動きは、米国債の利回りが18日に1950年以降初めて2%台を割り込んだことだった。
だが、利回りはその後やや上昇し、19日午後には2.08%となっていた。だが、多くの投資家は米国債の利回りが一段と低下することを予想しており、中には1.75%まで低下すると見る向きもある。

Believers of the west-is-turning-into-Japan argument point to several similarities. In both cases, large debt burdens mean sluggish growth after a stock market crash. Meanwhile, the political response to the troubles is confused and does little to alleviate the pain.

欧米が日本化しているという議論を信じる人々は、いくつかの類似点を指摘する。どちらのケースでも、大きな債務負担は、株式市場暴落後の鈍い経済成長を意味している。一方、こうした問題に対する政治の対応は混乱しており、痛みを和らげる効果がほとんどない。

"It is blatantly obvious that those comparisons are valid," says Jeffrey Gundlach, chief executive of US fund manager DoubleLine. "[We have] over-indebtedness and banks with bad assets that they are not writing down because otherwise they would be insolvent. Instead, you try to grind it out on a multi-year horizon."

米資産運用会社ダブルラインのCEO(最高経営責任者)、ジェフリー・ガンドラック氏は「そうした比較の根拠が確かなのは、どう見ても明らかだ」と言い切る。「我々は過剰債務を抱えており、損失処理すれば支払い不能状態に陥るため不良債権を抱え続けている銀行が存在している。すぐに処理せず、長い年月をかけて徐々に片付けていこうとしているわけだ」

Andrew Milligan, head of global strategy at Standard Life Investments in Edinburgh, points to eight characteristics he feels contributed to Japan’s inexorable decline: stock market and property crashes; zombie banks; deflation; zero interest rates; political stalemate; poor demographics; and a high debt-to-GDP ratio.

エディンバラのスタンダード・ライフ・インベストメンツで世界戦略担当を務めるアンドリュー・ミリガン氏は、止められない日本の衰退に貢献したと思われる8つの特徴を挙げる。株式市場および不動産市場の崩壊、ゾンビ銀行、デフレ、ゼロ金利、政治の停滞、芳しくない人口動態、そして高い対国内総生産(GDP)債務比率だ。

"In a very flippant way you can say the west has all of these components," he says. But study any individual country closely and the comparisons become less clear. Take the US: it might tick the twin crashes boxes, political stalemate and zero rates but it doesn't have deflation or declining population numbers.

「非常にぶしつけな言い方をすれば、欧米諸国はこうした要素をすべて持っていると言える」とミリガン氏。
だが、個々の国を細かく検証すると、類似点はそれほど明白ではなくなる。例えば米国。米国は双子の市場暴落と政治の停滞、ゼロ金利については当てはまるかもしれないが、デフレには陥っていないし、人口は減少していない。

Others point to more fundamental differences. Jim Reid, a strategist at Deutsche Bank, notes that when Japan ran into trouble it was an isolated case in a rapidly growing world in the late 1990s. Now most of the western world is in the same boat together.

一方で、より根本的な違いを指摘する向きもある。ドイツ銀行のストラテジスト、ジム・リード氏は、日本が困難に陥った時は、1990年代後半の急成長する世界における孤立した例だったと指摘する。それが今では、大半の西側諸国が同じ船に乗っている。

That could be read as bad news as it means the drag on global growth will be stronger. "It is a difficulty. Japan had the backdrop of a strong world economy," says Keith Wade, chief economist at Schroders, the UK fund manager.

このことは、悪い知らせと読むこともできる。世界経済の成長の障害が大きいことを意味するからだ。「これは問題だ。日本には力強い世界経済という背景があった」と、英国の資産運用会社シュローダーズのチーフエコノミスト、ケネス・ウェイド氏は言う。

But it could also provide a possible, if controversial, way out as developed countries could simply print money en masse. Many investors believe western authorities will be more pre-emptive in policy terms than their Japanese counterparts, although there are deep worries about the efficacy of any measures such as quantitative easing.

だが、これは、物議を醸すかもしれないが、あり得る解決策を与えてくれる可能性もある。先進国は単に、一斉に紙幣を増刷することもできるのだ。量的緩和などの措置については有効性に大きな懸念が残るものの、多くの投資家は、欧米の当局は日本の当局と比べると、政策面で先手を打つと考えている。

Mr Wadhwani believes that the stock market reaction to any future stimulus by the US Federal Reserve will be crucial. "How long the rally lasts will be dependent on if the economic data pick up. If they don't, that would be like Japan and a very bearish signal," he says.

ワドワニ氏は、米連邦準備理事会(FRB)が今後打ち出す刺激策に対する株式市場の反応が極めて重要だと見ている。「反騰がどれくらい続くかは、経済統計が上向くかどうかにかかっている。もし上向かなければ、それは日本のような状況であり、非常に弱気なシグナルとなる」と言う。

Already investors have had a taste this year of the topsy-turvy world experienced by Japan in the past 20 years where government bonds outperform equities.

既に、投資家は今年に入って、国債が株式をアウトパフォームするという、過去20年間日本が経験してきたあべこべの世界がどんなものか味わってきた。

Japan's two decades of low growth, deflation and rock-bottom interest rates prompted a marked shift in investor allocations in favour of government bonds even as Tokyo's credit ratings were cut from triple A.

20年間に及ぶ日本の低成長とデフレ、超低金利は、投資家の資産配分に際立った変化をもたらし、日本国債の格付けがトリプルAから格下げされても、国債が好まれる状況を生んだ。

Many long-term investors abandoned shares for bonds, leading to a much higher degree of domestic holding of debt than in the west. The Nikkei 225 index is still 75 per cent below its peak from 1989 while its 10-year bonds now yield 0.99 per cent.

長期投資を手がける多くの投資家は株式に見切りをつけて国債を買った結果、国債の国内保有量が欧米よりはるかに高い状況につながった。日経平均株価はいまだに1989年の最高値を75%も下回っている一方、日本の10年債の利回りは現在、0.99%だ。

Hajime Takata, chief economist at Mizuho Research Institute, says the introduction of new capital regulations for banks and insurers in Europe and the US will lead to similar asset allocation shifts. "These new rules will exacerbate the Japanisation," he says.

みずほ総合研究所のチーフエコノミスト、高田創氏は、欧州と米国の銀行と保険会社に対する新たな自己資本規制が日本と同じような資産配分の変化をもたらすと指摘。「こうした新たな規制は日本化を増幅させるだろう」と話している。

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japanification 世界が恐れる「日本化」 (2011.8.16 読売新聞)

7月30日発売の英誌エコノミストは日本でちょっとした話題になりました。
表紙を飾ったのはアメリカのオバマ大統領とドイツのメルケル首相の似顔絵。
目を引くのは二人とも和服姿の点です。メルケルさんは日本髪まで結っていました。

表紙のイラストには、以下のような見出しが付いていました。
Turning Japanese - Debt, default and the West's new politics of paralysis(進む日本化-借金、デフォルト(債務不履行)、マヒし始めた欧米の政治)
読んでわかるように「日本化」はここでは悪い意味で使われています。

この見出しを受けた巻頭の記事は、次のように手厳しい内容でした。
「オバマ大統領もメルケル首相も財政赤字の削減やユーロ危機への対応で痛みを伴う決断を避け続けている(The West's leaders are not willing to make tough choices; and everybody-the markets, the leaders of the emerging world, the banks, even the voters-knows it.)」
「こうした現象は初めてのことではない。日本では20年前にバブルがはじけて以来、指導者たちが問題をずるずると先延ばししてきた(The world has seen this before. Two decades ago, Japan's economic bubble popped; since then its leaders have procrastinated and postured.)」
「欧米諸国で同様のことが起きれば、その結果ははるかに深刻なものになる(If something similar were to happen to its fellow democracies in Europe and America, the consequences would be far larger.)」
「日本のように決断を先延ばしすれば、問題の解決は難しくなる。欧米の指導者はこうした前例を忘れてはならない(Japan's politicians had umpteen chances to change course; and the longer they avoided doing so, the harder it became. Their peers in the West should heed that example.)」

政治の指導力の不在という「日本化」が進めば、欧米の経済危機はさらに悪化し、日本の「失われた20年」のように大変な事態になるぞ、と警告しているわけです。
英誌エコノミストは「日本化」を Turning Japanese(ここでの turn は become と同じ意味です)というフレーズで表現していますが、欧米のメディアでは昨年夏ごろから、「日本化」を意味する別の単語もよく見かけるようになりました。

その一つが japanification(ジャパニフィケーション)です。
例えば、米紙ニューヨーク・タイムズは昨年10月の記事(Japan Goes From Dynamic to Disheartened)で、アメリカの経済について「エコノミストの間では japanification(日本化)を警告する声が出ている」と報じました。
「消費者が消費を拒み、企業が投資を控え、銀行が現金を抱え込んで、日本と同じデフレのわなに陥ること(Still, as political pressure builds to reduce federal spending and budget deficits, other economists are now warning of "Japanification" - of falling into the same deflationary trap of collapsed demand that occurs when consumers refuse to consume, corporations hold back on investments and banks sit on cash.)」
長いデフレで経済が活力を失うことを「日本化」と呼んでいるわけです。
米紙クリスチャン・サイエンス・モニターのオンライン版も同じ頃、次のような見出しの記事を載せました。
Would 'Japanification' be so terrible?(「日本化」はそれほど恐ろしいことなのか?)

もう一つ、まったく同じ意味で、japanization(ジャパナイゼーション)という言葉もよく使われています。例えば、米経済誌フォーブスのオンライン版は7月、次のような見出しの記事を載せました。
The US and the world economies cannot avoid Japanization(米国と世界の経済は日本化を避けられない)
世界の新聞や雑誌のデータベースを調べてみると、japanification の方がjapanizationよりもやや使用例が多いようです。
アメリカの著名な経済学者のポール・クルーグマン氏は前者の japanification の方を使っています。

この二つの言葉は元々、かなり違った意味で使われてきました。
japanization は欧米の辞書も古くから採用されている言葉で、例えば、第2次世界大戦中は、日本語の強制などを通じて日本の植民地の人々を日本人に同化させる「皇民化」の政策や教育を示す言葉として使われました。
同じ「日本化」でも、japanification の方はまだ人々の間に広く定着した言葉にはなっておらず、主要な辞書にも載っていませんが、近年は日本の文化やアニメにからんで用いられることが多かったようです。
2008年には次のようなタイトルの本も出版されています。
The Japanification of Children's Popular Culture: From Godzilla to Miyazaki(子供のポップカルチャーの日本化-ゴジラから宮崎駿まで)
こうしたケースでの japanification は、アニメなど日本が誇る現代の文化の魅力や影響力を反映して、ポジティブな意味が込められています。

しかし、昨年の夏ごろから、メディアに登場する japanification はほとんどの場合、日本の低迷する経済にからんで使われています。
残念なことですが、ネガティブな意味の方が勢いを増してきたことになります。
言葉は生き物です。
その意味は時代や状況を反映して変わっていきます。
どんな言葉もこうした流れに逆らうことはできませんが、japanification が再び前向きで、肯定的な意味やイメージを強める日が来てほしいものです。(大塚隆一)

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japanification(続) 欧米がうらやむ?「日本化」 (2011.9.14 読売新聞)

「日本化」をめぐる議論が欧米メディアで続いています。
長いデフレで経済が活力を失い、政治家は痛みの伴う決断を先送りして、問題を深刻にしている-そんな状況を「日本化」と呼んでいるのですが、欧米諸国ではこのままだと同じ道をたどりかねない、という不安が一段と高まっているようです。
前々回のこの欄で紹介した通り、「日本化」を示す英語は "japanification" "japanization" "turning japanese"など様々ですが、欧米メディアにはその後も連日のようにこれらの言葉が登場しています。

例えば、9月7日付の英紙フィナンシャル・タイムズは次のように伝えています。
Turning Japanese? US and German bond yields test new lows.(日本化は進むのか?米独の国債利回りが(日本並みの)かつてない低水準に)
The worries about a Japanization of western markets remain acute.(欧米の市場が日本化する懸念は依然として強い)

米誌タイム(電子版)も8月下旬、「日本化」の問題を取り上げ、日本は過去の成功にとらわれ、今日できることを明日に延ばしてきたため、長いデフレに陥ったと指摘しました。(Six lessons Japan can teach the West)
このように大半の報道は「日本化」を否定的にとらえているのですが、興味深かったのは、タイム誌の記事に対する読者の反応です。

ある読者(Alaric DeArment)は、こんなコメントを寄せました。
「アメリカのメディアは日本の衰退を書き立てているが、日本の失業率はまだ低い。インフラもしっかりしている。政府の債務が莫大といっても、大半は日本の国民から借りたもの。外国に多額の借金をしているアメリカとは違う」
大阪で働いているというアメリカ人の読者(Greg)は次のように指摘しています。
「私の経験から言わせてもらえば、確かに給料はそれほど高くないが、貯金はできている。アパートは狭いが、快適で近代的だし、街も安全だ。日本は経済的にどうしようもない国といった論調ばかりだが、これほどの生活の質を実現している国はあるだろうか」

数は少ないのですが、同様の視点の記事もあります。
米ブルームバーグ通信は8月下旬、こんな見出しの記事を配信しました。
"Japanization" isn't always as bad as it seems(「日本化」は思われているほど悪いものとは限らない)
記事の中では、こんな記述が続きます。
「欧米諸国は、たとえ日本のようになりたいと思ってもなれないだろう(Western economies, the U.S. in particular, couldn't become Japan if they wanted to.)」
「日本の不況は恒常化したが、犯罪もホームレスも増えていない。ロンドンのように暴動も起きない。大震災後も日本はどうにかこうにかやっている(Asset prices plunged, recession became the norm, companies morphed into zombies, banks went insolvent - and yet Japan never unraveled. Crime never surged, homelessness didn't explode, London-like protests never materialized. Households merely adjusted and lived off their savings. Japan muddled along, even after the March 11 earthquake.)」

確かに欧米が抱える問題はある意味で日本より複雑で厄介です。
特にギリシャなどの債務危機に揺れるユーロ圏諸国の現状は極めて深刻と言えるでしょう。
良くも悪くも欧米に比べて「閉じた国」である日本の場合、政治家の決断と国民の覚悟があれば、財政危機のかなりの部分は国内問題として処理することができます。

しかし、統合への道を歩んできた欧州の場合、そう簡単にはいきません。
ユーロ圏は経済の規模や豊かさ、国家の成り立ちや国民の気質が異なる諸国の集合体です。
さらに多数の移民の存在が問題を複雑にしています。
財政危機は一国だけで乗り切れる問題ではなくなっています。

ドイツの国民の間では、なぜ自分たちの税金で放漫財政のギリシャを救う必要があるのか、という声がくすぶっています。
こうした世論を意識してのことなのでしょう。
ドイツのレスラー経済技術相(Federal Minister of Economics and Technology Dr. Philipp Roesler)は11日、 「ユーロの安定のためにタブーはない(To stabilize the euro, there can no longer be any taboos.)」と述べ、ギリシャをユーロ圏から切り離す可能性を示唆して物議を醸しました。(Merkel allies break taboo with Greek default talk)

統合への道を歩んできた欧州は、かつてない危機にひんしているのです。
国の借金が国内総生産(GDP)の2倍にも達する日本の状況は確かに深刻ですが、欧州のこうした苦境に比べれば、まだ対処の仕様はあると言えるのかもしれません。

ただ、日本の経済や財政の事情について、最悪の見本ととらえる人も、欧米よりはマシと見る人も一致している点があります。
それは政治の迷走に対する手厳しい評価です。
野田首相はこうした世界の目をよく分かっているようです。
13日に行った所信表明演説では「日本化」の問題に触れ、以下のように述べました。
「大震災後も世界は歩みを止めていません。そして、日本への視線も日に日に厳しく変化しています。日本人の気高い精神を称賛する声は、この国の「政治」に向けられる厳しい見方にかき消されつつあります。「政治が指導力を発揮せず、物事を先送りする」ことを「日本化する」と表現して、やゆする海外の論調があります。これまで積み上げてきた「国家の信用」が今、危機にひんしています」

正しい現状認識だと思います。
首相は続いてこう述べました。
「私たちは、厳しい現実を受け止めなければなりません。そして、克服しなければなりません。目の前の危機を乗り越え、国民の生活を守り、希望と誇りある日本を再生するために、今こそ、行政府も、立法府も、それぞれの役割を果たすべき時です」
この決意が言葉だけに終わらないことを願うばかりです。

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為替動かす『円キャリー取引』 (2007.3.4 東京新聞)

中国株急落をきっかけとした世界同時株安により、一本調子に進んでいた円安にも急ブレーキがかかった。
一時は1ドル=122円近くの円安水準は瞬く間に116円台まで急騰。
背景には、低金利の円を借りて欧米や新興国の金融資産などに投資してきた「円キャリー取引」の”縮小”がある。
ヘッジファンドなどの動きによる、こうした急速な「巻き戻し」は今後も続くのか。
為替市場の波乱要因になっている円キャリー取引の現状を追った。 (経済部・池井戸聡)

ここ数日の急速な円高について市場では「円を借りて巨額投資してきたヘッジファンドが(中国や米経済の懸念から)慎重姿勢に転じた影響」との見方が支配的だ。
しかし、日銀が2月に追加利上げに踏み切ったものの、政策金利である短期金利(無担保コール翌日物)は依然年0.5%。5.25%の米国、3.5%のユーロ圏との差は大きい。
この金利差から「円キャリー取引の”巻き戻し”が起こり、一気に円高が進むとは考えにくい」(第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミスト)との声も多い。

プロのヘッジファンド以外にも円キャリー取引は活発に行われている。
「究極の円キャリー取引」と言われるのが東欧諸国やスペイン、オーストリア、韓国などで扱われている円建て住宅ローン。利用者は自国通貨でなく、金利が低い円でわざわざローンを組み、不動産を買う。
海外の住宅を買うための円建て住宅ローンは、実は日本国内でも販売されている。扱うのは豪州の大手銀行「オーストラリア・ニュージーランド(ANZ)銀行」の東京、大阪両支店だ。

豪州の短期金利は6.25%で、日本の実に十二倍超。
ANZ銀行は、豪州への移住や別荘購入を検討する日本人に対し1000万円から円建てで融資する。
金利は六カ月ごとに変わり、現在は2%程度。
7-8%の豪州ドル建て住宅ローンより低い。
日本の景気回復を追い風に「最近は利用者が増えている」(東京支店)という。
このほか英国の「ロイズTSB銀行」の香港支店やシンガポール支店も、日本に住み海外の不動産に投資する外国人らを対象に円建て住宅ローンを販売する。

一方、国内の個人投資家が行う円キャリー取引の代表的なものは「外国為替証拠金取引(FX)」。
担保の証拠金を運営会社に預ければ、その十倍超の取引が可能となり、10万円預ければ100万円超のお金が動かせる。
矢野経済研究所は「本年度末のFXの口座数は前年の二倍近い64万、運営会社が預かる証拠金もほぼ倍増の6600億円超に達する」とみる。

「日本政府は世界最大の円キャリートレーダー」(エコノミスト)

政府は2004年春まで円高阻止のため、円売り・ドル買い介入を繰り返し、高利回りの米国債などを買い続けた。
このおかげで政府は2007年度、為替介入のための「外国為替資金特別会計」で積み上がった運用益から1兆6000億円超を一般会計に繰り入れる方針だ。
参院選を前に増税策は打ち出しにくく、外為特会は政府にとって財政再建の「秘密兵器」とも言える。
とはいえ、円高になれば、ドル建ての運用益は受取額が減ってしまう。
円高進行は、政府の財政運営にも暗雲を漂わせることになるのだ。
注目される円高と円キャリー取引の今後はどうなるのか。
みずほ証券の落合昂二シニアマーケットエコノミストは「長期的には日本の景気回復で円高は進み、円キャリー取引も解消に向かう」と予想。
しかし、金利差が大きい当面は円キャリー取引の動向に神経質にならざるを得ず「円相場は『ふらつき』が見られるだろう」とみている。

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2011.10.21

じぶん銀行で人民(中国)元預金ができるようだが

じぶん銀行が邦銀で初めて人民(中国)元預金ができるようになったと宣伝している。
国内の外銀まで含めれば、すでにHSBCの日本支店が1,000万円以上の資産残高がある人に対するプレミア口座のサービスとして人民(中国)元預金をやっているが、誰にでもできる、ということであれば国内でも初めてということになる。
気になる為替手数料は、米ドル(25銭)、ユーロ(25銭)、オーストラリアドル(50銭)を見る限り、じぶん銀行の方が他行に比べると有利なことは間違いない。
日本国内の銀行は、概ねこの往復の為替手数料が大きすぎるがゆえに、良心的なファイナンシャル・プランナーであれば、外貨預金はやってはいけないと警告する金融商品の一つとなっている。

もちろん、外銀であるシティバンクも為替手数料の高さという点では邦銀各行と同様で、唯一、外貨預金口座の現金をそのまま外国へ送金したり、トラベラーズチェックに替えることができるという当たり前のサービスがある点が違うのだが、逆に言えば、邦銀のほとんどが外国発行のキャッシュカードを受け付けないなど、いかに鎖国状態にあるかということを如実に示しているとも言える。
これはウェブサイトを見る限り、じぶん銀行も同じで、マルチカレンシーアカウントには対応していないようだ。
おそらく、じぶん銀行の人民(中国)元預金の為替手数料の片道40銭というのも日本の為替手数料を考えると良心的と言えるが、人民(中国)元口座で預金をしたところで、最終的には円に戻さなくてはならないことを考えると、やはり躊躇せざるを得ない。

本当であればせっかく持っているHSBC香港の口座で人民(中国)元預金ができればいいのだが、残念ながら香港IDがないと人民(中国)元預金はできない(RMB deposit service is only applicable for HKID Card Holders.)ので非居住者である私は対象外である。
この人民(中国)元、かつては米ドルにペッグしている香港ドルと人民(中国)元がほぼ同じレートで換えられたのが、今や人民(中国)元の方が米ドルに対して右肩上がりであることを考えても先高感の強い通貨であることは間違いない。
事実、今月の蘇州・香港旅行と、2008年12月の上海旅行における人民(中国)元のレートと米ドル、ユーロのレートを見れば、人民(中国)元の強さは一目瞭然である。
しかしながら中国本土の銀行で口座を開くという選択肢は今のところあまり考えていない。
なぜならそこをハブにして株式投資などができるならまだしも、現状では人民(中国)元預金して放置ということになりかねないからだ。

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2011.10.17

日本人愚民化教育の成れの果て

10月16日現在、米ニューヨーク・ウォール街の占拠を呼びかけた抗議デモ(Occupy Wall Street)が30日目を迎え、全米各地で逮捕者が出ているという。
この抗議デモは、経済の現状に対する反発から始まり、金融業界や政治エリートに対する批判を続けているもので、日本でも米国の運動に呼応して、去る15日に都内で「東京を占拠せよ(Occupy Tokyo)」としてデモ行進が行われた。
しかし、12日のWall Street Journal Japanが「東京を占拠せよ」運動は成功するか?と題して、「この運動がニューヨークで感じられるような熱気を得ようとするなら、やるべきことは多い。」と書いているように、日本で広がりを見せるような兆候は感じられなかった。

今年の春、チュニジアを発端として起こった「アラブの春」と呼ばれる民主化運動のときもそうだった。
2009年の政権交代は何だったのか、と思えるほどの政治の貧困、経済の低迷、アラブ諸国で起こった市民革命が日本で起こらないのが不思議なくらいの体たらくな状況だった。
そして、3月11日の東日本大震災、とうてい先進国とは思えないような低レベルなエスタブリッシュメントたちの対応に、よく言えば我慢強く耐え抜いている国民の姿だけが浮き彫りとなっていた。
これが他国ならば、全国的なゼネストはもとより、暴動でも起きかねない状況にもかかわらず、日本の国民は黙々と自身の仕事に邁進した。

なぜ、ここまで政府にバカにされて怒らないのだろう、というのはバブル経済崩壊後の「失われた20年」の間、外国人が摩訶不思議に感じ続けたことである。
そして、政府に反発する運動が起きたとしても、たいていの場合、散発的なもので終わり、長続きすることはほとんどなかった。
最近読んだ本で、大前研一氏の著書「『知の衰退』からいかに脱出するか?」にこういう一節があった。

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「愚民政策=偏差値導入」が日本人を劇的に変えた

日本で、詰め込み教育、受験一辺倒教育、偏差値による選別教育が始まったのは、60年安保・大学紛争以後である。
いま思えば、あそこが日本にとって分水嶺だった。
日米安保が大問題であった時代、日本政府は、過激な学生運動に対して非常に強い危機感を持った。
このようなムーブメントを放置してしまうと政権転覆も起こりかねないと考えた政府は、ここから国民教育を「愚民政策」に転換した。
その象徴が「偏差値教育」である。

かなり昔のことになるが、私は当時の首相に言ったことがある。
「いまの政府は国民を騙すようなことばかりやっている。このままだと、国民は怒りを覚えて立ち上がるでしょう」と、このように進言したのだが、首相は私にこう言った。
「大前さん、わが国は愚民政策を施しているから大丈夫だよ」
まさかと耳を疑ったが、これは事実である。
当時の日本の政治指導者と役人たちは、学生たちが政府にたてつくことがないように愚民政策をとっていると確かに認識していたのだ。

日本政府は安保闘争のようなことが二度と起こらないように、若者たちがけっしてアメリカに刃向かわないように、そして、体制が転覆する事態が起こらないようにと、愚民政策を実施した。
これは、天安門事件後の中国と同じだ。
政府にとって危ないことを考えない、天下国家を論じない、そういう小市民をたくさんつくるという政策である。
その象徴が1970年代半ばに導入された「偏差値制度」なのだ。

そして・・・この政策は予想以上の効果を上げ、長年の愚民政策によって、その後の日本人はみごとに”考えない国民”になってしまったのである。
しかし、たかが「偏差値」1つ導入しただけで、国民性まで変わるようなことが本当にあるのだろうか?
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大前氏の偏差値云々の話は置いておいて、時の首相の言葉である「大前さん、わが国は愚民政策を施しているから大丈夫だよ」に、私は正直なところショックを受けた。
彼は、日本人愚民化教育で得をしたのは誰かということで、官僚(政府)・外国人投資家・投資ファンドの3つを挙げているが、一見得をしている官僚(政府)でさえ、低IQ社会の中の勝者に過ぎないがゆえ、外国から食い物にされている、と論じている。
つまり、日本が世界のATMとしてぼられ続け、21世紀の経済の潮流から置いてきぼりを食っているのは、今から40年以上も前の教育政策が原因だったというわけだ。
そして、なぜ国民が政府にバカにされ続けても怒らないのか、ということもこれで説明がつくというものだ。

高度成長期からバブル経済の昭和のよき時代、日本のエスタブリッシュメントたちは従順なる国民を育て上げることに心血を注いだ。
それは、20世紀後半を通じて体制側にとっては好都合だったが、21世紀に入ると国際社会では全く通用しない人材を輩出する結果となった。
私に言わせれば、その最たるものが「草食系男子」などと揶揄されるオトコたちだと思っている。
もはや、こうなると日本が変わるということは期待できない。
私がエッセイとして書いた「未来へのシナリオ」、そこに描かれているピーター・タスカの「長いさよなら」が現実化するのも時間の問題となろう。
ならば自分だけでも変わるしかないのだ。

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2011.10.14

観光庁の外国人観光客回復策は全くの愚策なのか

観光庁が発表した外国人観光客回復策が酷評されているようだ。
確かに11億円という大金を、自国民のためでなく、何の関係もない外国人にタダであげるような政策が批判されるのはやむを得ない気もするが、この政策は果たして世間が激高するほどの愚策なのだろうか。
正直に言って、今後の日本は、エスタブリッシュメントたちが繰り返し言い続けるような「ものづくり国家」として生きながらえることは、もはや不可能に近い。
だとすれば、2010年1月31日の「観光は日本の基幹産業となり得るか」で書いたように、観光を国の収益源へと持っていくしかない。

しかし、主体となる日本人観光客は、可処分所得の長期低落傾向に歯止めがかからず、しかも土日のみの行楽といった一極集中豪雨的なスタイルは相変わらず、今や頼みの綱は外国人といった観光地も数多くあるだろうし、それが今回の観光庁の政策につながったのは想像に難くない。
その外国人観光客も、Lonely Planetが、Travel warning(旅行上の注意)として、米国が福島原発から50マイル(約80km)圏外であればリスクは低いと述べている(The US government now says travel to Japan outside the 50-mile zone surrounding the nuclear plant presents low risks.)が、原発事故の後遺症で、日本行きをためらう傾向が未だに残るのが現実だろう。

しかも、Practical information(お役立ち情報)のATM編として、残念ながら多くの銀行ATMでは外国発行のキャッシュカードを受け付けない(Unfortunately, most of these do not accept foreign-issued cards.)と、「訪日外国人旅行者を困惑させる銀行ATMのバリア」は相変わらずである。(この件について私は政府に意見を送ったが何ら顧みられることはなかっただろう)
このATMのバリアは、自分が外国に行ったときのことを考えればわかることで、個人旅行者にとってはストレス以外の何物でもなく、繁華街でさらなる消費をしようという旅行者を強制的に自粛させる結果となる。
おまけに為替が記録的な円高でますます訪日が敬遠されるといった悪循環になっている。

これらに、英語が通じにくいことを合わせた、四重苦・五重苦の日本の観光業界にコペルニクス的な慈雨をもたらすためには、よほどインパクトのあることをやらなければならない、というのは誰しも思うだろう。
それが1万人の無料招待ということでいいのか、という議論は出るにしろ、一刀両断に唾棄すべきほどのことでもないだろう。
詳細は今後詰めることになるのだろうが、訪日のフライトを日系航空会社に限るならば、それなりに意義を見出すこともできよう。
要するにエアーアジアなどがよくやる激安プロモーションと同じで、空席のまま飛ばすなら、自国へ連れて来てしまえ、というもので、チケット代が浮いた心理的なお得感をそのまま消費に回してもらおうということだ。

本来なら民間企業がこういうことをやれば何の問題もないのだが、まさか公的資金で救済されているJALがやるわけにもいくまい。
かといって青息吐息の国内観光業界にそのようなことをやる体力はない。
そこで、出てきたのが政府、という見方ができなくもない。
いずれにせよ、今まで日の当たらなかった観光業界の支援のために11億円の公的資金を供与したからといって激高することはないだろう。
まして1998年の金融危機以降、10億円など問題にならぬくらいの公的支援を受けた金融機関も多数あるのだから・・・
しかも今後はお題目でなく、本当に観光業界を国際仕様に転換させなければならないのだから、そのコストと割り切るしかない。
それに21世紀は、今までの日本人が得意とした○×の解が明確にある時代ではなく、すべてが試行錯誤の時代になるのだ。

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日本行き無料航空券はいかが-観光庁が外国人観光客回復策 (2011.10.12 Wall Street Journal Japan)

3月11日の東日本大震災後、福島第1原発危機が発生し、外国人観光客が激減した。
そのため、日本は数多くの著名人の協力(レディガガも日本観光の振興に貢献)を得て、日本を敬遠する観光客の安全不安を払拭することに努めてきた。

しかし、震災発生から半年以上経った現在でも観光客の回復がみられず、観光庁はレディガガをも超える観光促進キャンペーンを新たに画策している。
今度は、何と無料で日本に招待する方針。

観光庁は来年に1万人の外国人観光客を旅費無料で日本に招待する企画を提案した。
ただし、この計画で観光客に提供されるのは航空運賃のみ。
観光客は食費や宿泊費、その他費用を負担しなければならない。
それでも、実施された場合のコストは約11億円が見込まれている。
この金額は観光庁の2012年度予算の概算要求の約10%であり、日本観光の落ち込みの深刻さを物語っている。
2012年度予算は来年3月に国会で承認される予定だ。

観光庁の担当者は「震災以来観光客数が大幅に減少しており、このように大勢(1万人)の観光客を日本に招待する必要があると考えている」と述べた。
観光客の減少は統計からもはっきりしている。
独立行政法人の日本政府観光局(JNTO)の公式発表によると、8月の来日外国人数は前年同月比32%減の54万6800人。
前年実績を下回るのは6カ月連続。
同担当者は、欧米よりアジアからの観光客の回復のほうが早いものの、ドルに対する記録的な円高が観光業界の二重苦になっていると指摘した。

JNTOのウェブサイト上には訪日を促す有名人の推薦ビデオが掲載されているが、円高と原発危機の影響で観光が目先に回復することはあまり期待できないようだ。
同サイトには、放射線量の最新測定値も提示されているが、それが観光客の不安解消に役立つ情報になるのか、あるいは長引く原発危機を再認識させる不必要な情報になるのかは分からない。

外国人が実際にわざわざ日本を訪問することになれば、観光先としての日本の魅力が口コミで回復する、というのが今回の企画で観光庁が期待している効果だ。
航空運賃を無料にする代わりに、旅行参加者はオンライン上に掲載されるリポートの中で日本での体験を報告するように求められている。
この観光促進策が計画通りに実施されれば、インターネットを通じた応募が来年4月から受け付けられる。
その後、観光庁が初夏までに合格者を選ぶ。

英ガーディアンが先月下旬発表した読者による観光地ランキングでは、国別部門として日本が第1位に選ばれ、都市別部門でも東京が2年連続で第1位に選ばれた。
このニュースは窮地に陥っている日本の観光産業にとっての一筋の希望の光となるだろう。
そして、おそらく日本の観光促進策の中で重視すべき点を示唆するものになろう。

英文記事:Tourism Remedy: 10,000 Free Flights to Japan
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