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2009.05.31

日本のお寒い電子政府の実態

ここ1、2年、e-Taxが脚光を浴びているが、日本政府の掛け声とは裏腹に電子政府なるプロジェクトの現状はお寒い限りである。
それゆえ、政府が無理やり電子申請システムを使わせようとしているが、すべてがオンラインで完結しないということが大きな障害となって利用率はあまり芳しくない。
その典型が、2006年度(平成18年度)末で休止に追い込まれた旅券(パスポート)の電子申請システムで、そもそもパスポートの申請に必要な住民票や戸籍抄本がオンラインで取得できないのだから、原則として10年に一度しか申請が必要のないパスポートの電子申請などする人がいなくて当然である。(利用者視点に欠けていた行政サービスの実例-パスポートの電子申請
ちなみに、e-Taxについては年々使い勝手が良くなってきているので、私はそれなりに評価したいと思っているが、使った人に対するインセンティブが足らないことは常々言っている通りだ。

ところで、電子政府の総合窓口なるポータルサイトが日本にもあるようだが、個人がいろいろな申請をしたり、証明書を取ろうとする場合は、今のところほとんどが居住地の市(町村)役所の窓口へ行くか郵送するかのどちらかとなる。
政府が多額のコストをかけて住民基本台帳カード(いわゆる諸外国でいうIDカードの一種)を作ってもその利用率がお寒い限りなのは個人がそのメリットを感じられないからだろう。
私に言わせれば、写真のない健康保険証を本人確認の書類にするぐらいなら、写真付きの住民基本台帳カードを無料で配布して、運転免許証などがない人は、それをIDカードとすべきとも思うのだが、そういう政策実行力も日本政府にはない。
そもそも他の市町村に引っ越した場合は、カードを作り直さないといけない、ということ自体がナンセンス以外の何物でもないし、外国人居住者は適用対象外だ。
今回の定額給付金の支給にしても住基ネットワークシステムを利用すれば、それこそ全国どこにいても申請が可能だし、住民登録が違うところにあるネットカフェ難民や、DV被害者への支給問題も生じなかったはずだ。
政府自らがその利用を放棄しているようなシステムなど存在価値があるのだろうか。

一方、地方自治体における証明書の取り寄せのためのオンライン利用のほとんどが、ウェブサイトから申請書類をダウンロードして印刷し、それに書き込んだ上で現物を郵送という形を取っている。
決済(手数料)はどうするかと言えば、郵便局で定額小為替を買って同封しないといけない。
ちなみに、この定額小為替は郵便局の窓口でないと買えないし、料金は郵政民営化に伴って10円から100円に値上がりした。
例えば、300円の住民票を郵送で申請するためには、最低でも住民票の発行手数料とほぼ同額(260円=往復の郵送料含む)かかることになる。
今では、ほとんどの地方自治体が証明書を電子化していると思われるが、この双方向のやりとりと手数料の決済をすべてオンラインで完結できるようにすれば、少しでも個人がメリットを感じられるようになるだろう。
人口が全国で500万のシンガポールと、1億2千万人を超える日本を一概には比較できないが、少なくとも都道府県、政令市単位でシンガポール居住者用のポータルサイトであるMyeCitizenのようなものを作ることは難しいのだろうか。

また、現在、国や地方自治体は納税などの決済方法としてペイジー(Pay-Easy)を使っているが、これは店舗を構えた銀行しか対応していないし、外国居住者は実質的に利用できない(日本に銀行口座が持てない)ことが多い。
そこで、PayPalのビジネスアカウントを地方自治体が決済方法として加えることはできないのだろうか。
これなら申請者がe-mailアドレスを持ってさえいれば決済できるし、もちろん、外国居住者が戸籍謄本などを申請する場合でも対応できる。
それに、大したことではないが、申請者にとってはクレジットカードのポイントも溜まるという隠れたメリットもある。
いずれにせよ、決済方法が今のままでは、電子申請の環境が整っても外国居住者にとっては使いずらいものになるだろう。
グローバル社会が到来した今、日本居住の日本人のためだけのシステムという考え方では、せっかく作ったものも使い勝手の悪いものになるに違いない。

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2009.05.28

何気に凄いぞダイキン工業

昨日、インターネットサーフィンをしていたら、ダイキン工業(6367)の空気清浄機に採り入れた技術「ストリーマ放電(streamer discharge technology)」が、鳥インフルエンザウイルスを分解し無害化することを、ベトナム国立衛生疫学研究所(Vietnam's National Institute of Hygiene and Epidemiology)との共同実験で証明したという記事が流れていた。
致死率で言えば、今世界的な流行の兆しがある豚インフルエンザ(swine flu)よりもはるかにタチが悪い鳥インフルエンザの無害化に成功したとのことだが、これは医療分野に転用するにはまだ未完成なのだろうか。

一見すると、ノーベル賞ものの功績、これが大きなニュースバリューを持っていないのは、ストリーマー放電が人体に影響を与える度合いが大きすぎて実用化には遠いとも思えるのだが、こうして見ると日本の技術もまだまだ捨てたものではない。
それにベトナムとの共同研究というのが何か新しい時代の到来を予感させる。
今までこうした研究は欧米の独壇場だったような気がしないでもないが、ベトナム国立衛生疫学研究所がWHOから評価されているあたり、同国が経済分野でもポストBRICsの候補の一つというのは正しい見方なのかもしれない。

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強毒鳥インフルを無害化 ダイキンの放電技術 (2009.5.26 共同通信)

ダイキン工業は26日、同社製の空気清浄機に採り入れた技術「ストリーマ放電」が、鳥インフルエンザウイルスを分解し無害化することを、ベトナム国立衛生疫学研究所との共同実験で証明したと発表した。
同社によると、実際に感染した人から採った鳥インフルエンザウイルスの完全な無害化は世界初という。
同社によると、ストリーマ放電は、蛍光灯やマイナスイオン発生機などで使われるプラズマ放電の一種。放電で生じた電子が空気中の酸素や窒素などと衝突、合体することで活性化し、ウイルス表面のタンパク質を酸化分解して感染力を失わせる仕組みだ。
実験では、ベトナムで感染した人の強毒性ウイルスH5N1型を動物の細胞に付着させ、市販の製品より強力に照射した。
ウイルスは1時間で3%まで減少、3時間後にはすべて除去されたという。
同社は、ノロウイルスや細菌などの分解も実証しており「新型インフルエンザの無害化も期待できるのではないか」としている。

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Daikin successfully tests technology to detoxify bird flu viruses (May 27, 2009 Japan Today)

OSAKA - Japanese air conditioner maker Daikin Industries Ltd said Tuesday it and Vietnam's National Institute of Hygiene and Epidemiology have successfully tested Daikin's streamer discharge technology to decompose and detoxify bird influenza viruses. Daikin's steamer discharger used for its air purifier took some three hours to completely detoxify H5N1 avian flu viruses that were collected from human patients and put on animal cells.

The test represented the world's first complete detoxification of bird flu viruses collected from humans, Daikin said. The streamer discharger is designed to generate electrons that collide and unite with oxygen or nitrogen to oxidize and decompose the protein of viruses. Daikin has also demonstrated that the transformer discharger can decompose noroviruses, known for food poisoning, and bacteria.
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2009.05.27

今年の夏休みはお預け?

例年の今頃は夏休みをどこで過ごそうか考え始める季節でもある。
ところが、今年は様相が一変している。
今年になって株式市場は明るい材料が出始めたものの、昨年の秋以降の金融恐慌が尾を引いて雇用情勢は依然として不透明、おまけにボーナスが出るかもわからない企業が続出ときては財布の紐は固くなる一方だ。
おまけに、豚インフルエンザの世界的蔓延(pandemic)で、べからず国家の五人組の監視に怯える自粛産業株式会社のお触書が出たところは、今年の夏は引きこもり体験学習の季節の到来である。

さて、海外ではどうなのかというと、日本とは別世界のような話が未だにあるようだ。
どこまで実態を反映しているのかわからないが、少なくともビジネスマンの休暇のことが話題になるとき、日本はどうあってもネガティブなデータが目も前に横たわる。
それでも私がかねてから言っているように不況だの何だのと言いながら、季節にかかわらず、国際線のフライトを満席にしている日本人がいることは、メディアの論調が休暇が取りにくいサラリーマンだけをことさらクローズアップしているだけなのか。
いずれにしろ、米エクスペディアの調査(2009 Vacation Deprivation Survey Facts and Vacation Ideas)、調査対象国がアメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、スペイン、イタリア、オーストリア、オーストラリア、ニュージーランドに日本、まるで日本をダシにして白人たちが優越感に浸っているようにも取れる。

しかし、調査の表題と内容は日本のビジネス風土とは180度違う言葉が使われていることに気づくだろうか。
そう、deprivationとは喪失という意味、つまりバカンスに費やすことのできる休暇を何日失ったかの調査というわけだ。
日本なら何日取れたか、という言葉を使うだろう。
コンテンツも同じで、leave ** vacation days(使い残したバカンス休暇)という言い方をしている。
そして、肝心のデータは細かく言及するまでもないが、バカンス天国に君臨しているフランスは平均休暇付与日数が38日、使い切れなかった残日数がわずかに平均で2日、一方の米国は平均付与日数が13日、残日数の平均は3日、わが日本は平均付与日数が15日に対して残日数の平均が7日である。

何でこうまで違いが出るのだろうか。
日本が失われた10年と言われた時代以降、企業はリストラにリストラを重ねた結果、従業員の絶対数が減っている。
だから休暇どころではない、と言いたい人は多いだろう。
しかしながら、日本のサラリーマンはバブル経済期でも、過労死とサービス残業、休暇も取らない会社奴隷という不名誉な言葉を背負っていたのだから、その理屈は通らない。
今と時代背景が違うと言ってしまえばそれまでだが、「会社をとるか、自分をとるか」の著者である伊沢次男氏の言う、会社中心に生きる「社生族」、会社組織に身を置きながらも自分のために生きる「自生族」、どちらのメンタリティを持っているかで人生が全く違ってくるのだ。

おそらく日本でこの手の調査をやるとトップ5に必ず入る理由、同僚に気兼ねする、というのが休暇を取れない最大の障害だろう。
そういった意味で私は断言するが、日本人がギブアンドテイク(私も休むが貴方も休め)の発想を持たない限り、ギスギス、イライラ感が漂う社会の改善はできないだろう。
要するに、多くのサラリーマンが自分が休んだら同僚が死ぬ思いをするのではないかと休暇の取得を自粛するからだ。
それに、日本のビジネスマネージメントは、部下の誰かが(病気や休暇で)欠ける可能性はいつでもある、という視点でのリスク管理が決定的にない。
すべてが万事うまくいくという前提で物事を考え、それが何かの拍子でうまくいかなくなったときは、その原因を作った人間を責める。
前出の伊沢氏曰く、「日本のサラリーマンが長期休暇を取れないのは上司が無能だからである」というのは真理でもある。

また、日本のサラリーマンが休暇を取れない状況にあることは地方の観光産業の衰退にもつながっている。
なぜなら、土日だけ集中豪雨的に観光客がやってきたとしても、ほかの平日がガラガラという状況では、地方の観光産業が正規従業員を雇う受け皿になりにくくなるからだ。
要はほとんどの従業員が週末のアルバイトだけやってくれればいいという状況に陥るのは火を見るよりも明らかだ。
その傾向は、麻生内閣の愚策の一つ、1000円高速(今年から2年間、土日祝日だけETC搭載車の高速道路料金を一律1000円にする政策)でますます顕著になるだろう。
そして3大経済圏(東京、名古屋、大阪)から1泊で行けない地域は閑古鳥が鳴くことになる。
しかるに地方の経済界が意味のないと思われる新幹線、高速道路の建設を悲願だと叫ぶ理由の一つがここにある。

ところで、「今年の夏休みはどこへ行くの?(Where do you plan to go this year for your summer vacation?)」
メキシコで配られていた豚インフルエンザ予防策の一つに、Allow plenty of air and sunshine in homes, offices, and all other enclosed places.(家の中、オフィス、その他の密閉空間にたくさんの空気と太陽の光を入れよう)というのがある。
日本でのインフルエンザの急速な流行が、まさに多数の密閉空間(enclosed places)で生じたものならば、マスクをして部屋に引きこもっているのは逆効果ではなかろうか。
要は窓を開け放て、ということだ。
日本ではオフィス環境やジメジメした気候がネックなだけに難しいとは思うが、それならせめて休暇くらい取って自分から自然の中に行こうではないか。
それとも自粛産業株式会社のお触書では旅行自体も自粛かな?

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雇用不安で今年の夏休みはお預け? 2週間を4日に短縮も (2009.5.18 CNN Japan)

(CNN) 米マイアミ・ヘラルド紙のコラムニスト、シンディ・グッドマンさんは女友達数人と食事をしながら何気なく「今年の夏休みはどこへ行くの?」と尋ねた。
全員から返ってきた答えは意外にも「どこへも行かない」だった。
「まだ仕事がある人は、仕事量に圧倒されて自分は働きすぎだと感じている。
休暇を取るのは不安だが、同時に今一番必要なのは休暇を取ることでもある」とグッドマンさんは言う。

不況の影響は口座残高だけでなく、休暇にも及んでいるようだ。
米国では例年なら夏に長期休暇を取るのが普通だが、今年は休暇を取ったらそのまま出社しなくていいと言われそうだとの不安が広がっているという。

「2週間休みを取ったからといってまさか解雇されることはないと思うが、自分がいなくても何とかなりそうだと思われやしないかと考えているのかもしれない」とグッドマンさん。

米国人はただでさえ、欧州などに比べて有給消化率が低い傾向がある。
インターネット旅行代理店の米エクスペディアが今年実施した調査によると、有給休暇をすべて消化できていないと答えたのは米国人の34%を占め、フランスの22%、ドイツの24%を上回った。
なお、有給消化率が最も低い日本ではこの数字は92%に上った。

有意義な休暇の取り方についての著書があるクリスティーン・ホールバウムさんは、「休暇を取れば復帰後の生産性も上がり、会社のためにもなる。そう言って上司を説得すべき」と指摘する。

それでも長期休暇を取りたいと言い出しにくければ、週末や祝日をはさんで4日間の休暇を取るといいとグッドマンさんは勧める。
自分自身も例年なら2週間の休暇を取るが、今年は7月4日の米独立記念日に合わせて4日間の休みにとどめる予定だという。

「みんなと同じ不安を私も感じている。休暇は取りたいが、仕事の時間をあまり減らしたくない。毎週新聞に掲載される自分のコラムはキープしたいから」とグッドマンさんは話している。

英文記事:Layoff worries keep many from taking vacations, experts say (May 14, 2009 CNN)
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2009.05.23

漢方薬の銀翹散(Yin Qiao San)は豚インフルエンザに有効なのか

銀翹散(Yin Qiao San)

ついに日本でも豚インフルエンザが大流行(outbreak)し始めた。
最も感染防止に力を入れていたはずの日本が、北米諸国以外では最悪の感染者数を記録したのは皮肉以外のなにものでもない。
もはや感染しない方法云々を言うより、不幸にして感染したら、というところに主眼を置いた方がいいだろう。
ここでHow to Avoid Swine Flu Pandemic Panic(どうやって豚インフルエンザの世界的流行の恐怖から逃れるか)というものがあったので紹介しよう。
その記事の中にあったのは、ステップ4の

Use the antiviral formula Yin Qiao San if you plan to travel by airplane or to a place where there is a flu breakout. Contact a Traditional Chinese Medicine practitioner for that formula. The advice I was given is to use it the entire time of travel plus five days after returning home.(もし、あなたが飛行機で旅行を、あるいは豚インフルエンザが流行している地域への旅行を計画しているなら抗ウイルス薬として処方される銀翹散を使うこと。その処方のために伝統的な漢方医師とコンタクトを取ること。私のアドバイスは旅行中、及び帰国後5日間はそれを服用すること。)

とあった。
彼らのいう銀翹散(Yin Qiao San)という漢方薬(herbal medicine)がどれほどの効き目があるかはわからない。
しかし、今のところ弱毒性と言われている豚インフルエンザの予防薬として、この漢方薬が効き目があるのであれば、海外出張や旅行の際には現地で買い求めることができるのではなかろうか。
ただ、漢方医師の処方箋が必要となれば、そう簡単には入手できないだろうが、パナドール(Panadol Cold & Flu)という解熱鎮痛剤のように薬局で簡単に手に入るレベルであれば、アジア諸国や華僑のいる地域なら入手できる可能性もあるだろう。
どなたか現地の漢方薬局で聞いてみてはいかがだろうか。
ちなみにパナドールはOnline Pharmacyなどで、銀翹散はHealth Factor Online Shopなどのウェブサイトを通じてオンラインで購入できるようだが、2009年6月1日施行の改正薬事法の規定がこうした外国サイトにまで及ぶかどうかについては検証していない。

ところで、今や日本では関西方面は言うに及ばず、関東でも発症者が出始めたことに国民はパニックの様相を呈している。
電鉄会社や銀行、スーパーなどの企業は社員に対し、売り切れ続出で在庫がないことを知りながらマスクを買うことを要求している。
マスクをすることが感染防止に役立つかどうか疑問視されている中で、社員にそうさせることは、彼らの本音が社員の健康を気遣っているのではなく、自社の社員から発症者が出たときのクレームパニックを恐れているのだ。
賢明な人ならばわかるだろうが、社員の健康を気遣うような企業ならば社員を使い捨てするような態度は取らないはずだ。
それゆえ社員にマスクをさせ、感染を防ぐために努力していたというエクスキューズは日本においては最も重要な組織防衛の一つなのだ。
私はアメリカ・メキシコ旅行から帰国後の自宅待機明けに出勤した初日、職場の上司から一週間はマスクを着用するように言われ、そのことを仄めかされたので、それが企業や役所の本音であることはほぼ間違いない。

事実、私の上司が恐れたように、神戸ではバレーボール大会に出た高校生たちが戦犯扱いされ、関東ではニューヨーク帰りの高校生が通う学校関係者がバッシング(bashing)を受けているらしい。
パンデミック(pandemic=世界的大流行)の危機と言われている事態に、たまたま感染被害者となっただけの数人の高校生とその関係者を詰る低レベルな輩に吐き気すら覚える。
そもそも外国に行きさえしなければ感染しないなどという発想が貧困過ぎるし、誰がどこで感染したかなどわからないから各国の医療関係者が苦しんでいるのだ。
私に言わせれば、ゴールデンウイークの最中に、各企業が北米各国から強制帰国させた人たちが潜在感染者でなかった保証はどこにもない。
彼ら駐在員とその家族は、偏執症的な(paranoid)清潔観念を持つ内地のひ弱な日本人よりも病気に対する耐性があるだろうし、今の豚インフルエンザが弱毒性と言われているほどのものなら、余計にその可能性はあるからだ。

そして、不幸にして豚インフルエンザに感染した場合の行政・医療関係者の対応はもはや臨界点に達しようかというレベルとなっている。
私も帰国後10日間(今では7日間)は、何かあったら発熱センターへ連絡しろと管轄の保健所から連絡があったが、当時ならともかく、ここまで国内で感染者が出ている状態だと電話もつながらないだろう。
それではいきなり病院へ駆け込むか。
メキシコやアメリカでは、そうしろと書かれているが、日本ではそうしないでくれというのが公式見解となっている。
今後はそれも変わってくるだろうが、患者が増え続けた場合は、病院でもパニックになるに違いない。
タミフルの備蓄は十分にあるとのことだが、弱毒性と言われている今でさえ、このような状態だと、それが突然変異して鳥インフルエンザや、SARSのようになったときには日本はどうなるか考えたくもない気持ちだ。

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2009.05.08

豚インフルエンザ(swine flu)による死亡者にまつわる謎

Swine_flu

私がアメリカ・メキシコ旅行へ出発した同じ日の25日、日本ではメキシコで豚インフルエンザ(swine flu)が猛威を振るっていると記事が配信された。
その後、日本では豚インフルエンザの記事が毎日トップニュースを飾るようになったと聞かされ、実際にメキシコシティではマスク姿の人も数多く見られた。
そして、運良く無事に帰国してみると、旅行中に連絡を取っていた職場からは数日の自宅待機要請が正式に出た。
これによって、もし、万が一、自分の体調に異変が生じたときに適切に対応できるように、私が旅行中に見ることができなかった豚インフルエンザ関連の記事をじっくりと見る機会を得ることができた。

するとCNNの記事の中にAmong the swine flu mysteries: Why only deaths in Mexico?(豚インフルエンザにまつわる謎-なぜ死亡者はメキシコだけなのか)というのがあった。
海外投資のSNSである、World Investorsの中で医療関係者の女性が、「知人の医師曰く、メキシコ人以外で死亡者が出ていないのは不思議だ」と書いていたのを目にしたこともこの記事に対する私の関心を呼んだ。

それと同時に、ただ不安を増幅させてビクビクするより正しい知識を得ておきたいということが最重要であったからだ。
この記事が配信された後で、アメリカ人女性が1人死亡したというニュースがあったが、不謹慎ながらメキシコ国内のそれに比べれば微々たる数字である。
メキシコへ旅行するアメリカ人の数からすれば、それはまさに不思議の範疇に属する。

しかしながら思う。
元メキシコ保健相のフリオ・フレンク(Julio Frenk)氏が言うように、豚インフルエンザによる死亡者の多くが、貧困からくる栄養不良と粗悪な居住環境によって抵抗力が弱まった人たちであるとすれば、メディアのいう"deadly(死に至る危険のある)"という言葉は大げさ過ぎる感がある。
なぜなら、日本でも一般のインフルエンザで死亡する人は年間で相当にいることだし、途上国では不謹慎ながら数名の伝染病罹患や死亡などニュースにさえならないレベルである。
この記事が配信された後に米国で初の死亡者が出たということであったが、妊産婦であるという特殊要因があった。

私が旅行中、成田空港の検疫体制が厳しくて入国が大変ではないか、ということをさんざん聞かされた。
私はむしろメキシコからアメリカへ入国するときの方が足止めを食うのではないかと思っていたほどなのだが、フェニックスの入国審査で聞かれたことは「日本では何(の仕事)をやっているのか?」だけだった。
出入国カードに、アメリカへ来る前はメキシコということを書いたにもかかわらず、どこの都市に滞在したのかとも、何日いたのかさえ聞かれなかった。
そんなことでいいのかとさえ思ったが、アメリカはメキシコの空港で行われている簡易メディカルチェックを信じているのか、いちいち入国者を足止めしていられないのかわからないが、スルーで通過できてしまった。

そして、「豚インフルエンザにまつわる謎-なぜ死亡者はメキシコだけなのか」という答えは未だに出ていないようだ。
フリオ・フレンク(Julio Frenk)説が正しいのであれば、高齢者にも死亡者が出ていなければおかしいし、サイトカインストーム(感染症への防御反応として産生されるサイトカインという物質が過剰なレベルになって気道閉塞や多臓器不全を引き起こすもの)によって頑健な若者が亡くなっているのだとすれば、メキシコだけで死亡者が多発する理由がわからない。
それに、私がいた都市で一般市民がマスクを付けていたのはメキシコシティだけで、オアハカは主にレストランやバーの従業員だけ、カンクンはほとんど誰もいないというレベルだった。
皮肉なことに、メキシコシティの次にマスク姿の一般市民が目立ったのはロサンゼルスの日本行きのフライトのチェックインカウンターだ。
交通機関のなかった19世紀ならいざ知らず、長距離バスや飛行機で国内各都市を移動できてしまう現在において、疫病の発生がメキシコシティ周辺に留まっているというのも不思議な話だ。

私が思うにフレンク氏の談話にヒントがあるように思える。
「抗ウイルス薬は徴候の始まりの1時間以内に飲む必要があるが、メキシコの人たちは、仮にそうなったとしても、すぐさま治療をしようとはしないであろう。(Antiviral medications need to be taken within hours of the onset of symptoms, but people in Mexico may not have sought treatment immediately, if at all.)」
途上国はどこでも都市部共通の問題があるが、それは言うまでもなく貧者のスラムである。
メキシコシティで死亡者が大量発生した理由は一つ、彼らが手遅れになってから病院に行った。
単純に言えば、そういうことではなかろうかと思う。

4月29日からメキシコ全土の遺跡で観光客の立入りが禁止になった。
私はこのニュースを聞いて、次は交通機関(飛行機やバス)も止まるのか、出国できるのか不安になったものだ。
なぜならメキシコの遺跡は博物館などと違って外にあるものだし、地下にもぐるわけでもない。
ここの立入りを禁止する理由は、そこへ行くバスなどで感染者が増えることを懸念しているのではないかと思ったからだ。
しかし、そうはならなかった。
遺跡の立入り禁止は、WHO (World Health Organization)が警戒レベルを引き上げたために仕方なしに対処したのか、ただ単に、外国人観光客を国外へ追い払う(scare away)ためにやったとしか思えないほどだった。
何しろ、メキシコ政府の言うインフルエンザ対策の一つは「多くの空気と太陽を部屋に」だ。
遺跡で観光することは自分自身を多くの空気と太陽に晒すことになるので、いいことではなかろうか、と単純に思うがいかがだろうか。

今、日本では豚インフルエンザの感染防止に躍起になって取り組んでいる感がある。
しかしながら、当の北米諸国が政府の表向きの姿勢とは裏腹に、メキシコシティを除けば、当事者意識がほとんどないように思える。
一般のメディアはそうしたことを伝えないので、メキシコのカンクンの光景や、アメリカのフェニックスの入国審査風景など想像がつかないであろう。
国民性といってしまえばそれまでなのだが、何とも不思議な光景である。

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Among the swine flu mysteries: Why only deaths in Mexico? (豚インフルエンザにまつわる謎-なぜ死亡者はメキシコだけなのか)(April 29, 2009 CNN)

(CNN) - It's a confounding question on the lips of disease detectives: Why have the only deaths from the swine flu outbreak happened in Mexico?

なぜ、豚インフルエンザの発生による死者はメキシコだけで起きているのか?という質問は疾病調査官たちをまごつかせている。

Investigators also want to know why the disease has killed young adults, who should have the greatest resistance.

調査当局者たちもなぜ大きな抵抗力のあるべき若い大人が病気で死んでいるのか知りたがっている。

"They're good questions that we're asking, too," said Von Roebuck, spokesman for the U.S. Centers for Disease Control and Prevention. "We're still young in this investigation and we're still trying to understand exposure in this country as well as exposure in Mexico."

「それは私たちも聞きたいと思っているいい質問だ」と、米疾病対策予防センター(U.S. Centers for Disease Control and Prevention)の広報担当官であるフォン・ローバック氏は言う。「私たちはこの調査を始めてまだ日がたっていないし、メキシコにおける細菌汚染はもちろん、わが国の汚染をも理解しようとしているところだ。」

Mexico has reported 152 fatalities in flu-like cases in recent days, seven of which have been confirmed as swine flu. Another 19 patients have been confirmed as having swine flu but surviving. About 2,000 people have been hospitalized with symptoms.

メキシコ政府は、ここ数日でインフルエンザに似た症状で152名が死亡したと報告し、そのうち7名は豚インフルエンザであると確認された。あと19名は豚インフルエンザにかかっていることが確認されているが生存していると報告された。およそ2000名の人たちがインフルエンザの徴候があるとして入院している。

By contrast, the United States has had 64 confirmed cases, five hospitalizations and no deaths.

対照的に米国では確認された64名の患者のうち、5名が入院しているが、死亡者は出ていない。

"The difference in seriousness between the known U.S. cases and the Mexican cases is the question that everyone wants to answer," said Maryn McKenna, author of "Beating Back the Devil," a 2004 book on the history of the CDC, and the forthcoming "Superbug," about drug-resistant staph.

「判明した米国の患者とメキシコの患者の重大な違いは、誰もが答えたい質問である」と、2004年に発刊された米疾病対策予防センターの歴史を書いたBeating Back the Devilと、耐性菌について書いた近刊予定のSuperbugの著者であるマリーン・マッケンナ氏は言う。

There are no hard answers, but a consensus is emerging: The disease in Mexico has likely been around longer and infected more people than investigators can confirm.

確かな答えはないが、合意はできつつある。メキシコの疾病がおそらく調査官が確認できるものよりも長く続いていて、それで多くの人たちが感染したらしいということだ。

"Do we really know all of the cases that existed in Mexico or is this just the tip of the iceberg?" asked Louis Sullivan, a physician and former head of Health and Human Services under President George H.W. Bush.

「私たちは本当に、メキシコの中に存在したケースの全てを知っているのか、あるいは、これは氷山のまさに一角なのか?」と、父ブッシュ政権下で保健福祉長官を務めた医師のルイス・サリヴァン氏は言う。

McKenna said it's possible "there is much more flu in Mexico than we know because it hasn't been counted. That would mean that there are mild cases there as well, but that you have to get to a certain number of cases before, statistically, you start to see the very serious ones, and the U.S. hasn't had that many cases yet."

マッケンナ氏は、ありうる可能性として、「数え切れないがために私たちが知っているよりもはるかに多くのインフルエンザがメキシコにはある。それは、軽症の場合であり、その上、以前に確認できた数でしかない。統計学的にあなた方は非常に深刻な症例を見始めているが、米国には未だに多くの症例があるわけではない。」と言う。

It's a view shared on the streets of Mexico City, the hardest-hit area.

それは、一番被害を受けた地域であるメキシコシティの街頭における共有意見である。

"My intuition is that as the medical community starts looking around and at what has happened they may find that swine flu was there and they just didn't catch it," said Ana Maria Salazar, a radio talk show host and political blogger who lives in Mexico City. "Nobody was looking for this. We were all looking for this in Asia."

「私の勘では医学界が目を配り始めた時に、彼らが豚インフルエンザがそこにあるのを見つけたかもしれないが、捕らえることはできなかったということが起こった」と、在メキシコシティのラジオトークショーの司会者で政治ブロガーでもあるアナ・マリア・サラザール氏は言う。「誰もこれを探していなかった。私たち皆でこれをアジアで探していた。」

The new virus has genes from North American swine influenza, avian influenza, human influenza and a form of swine influenza normally found in Asia and Europe, said Nancy Cox, chief of the CDC's Influenza Division.

新しいウイルスは、北米豚インフルエンザ、鳥インフルエンザ、人インフルエンザ、そしてアジアと欧州で普通に見つかる豚インフルエンザ型の遺伝子を持っていると、米疾病対策予防センターのインフルエンザ予防局長のナンシー・コックス氏は言う。

Influenza is basically an extreme upper respiratory infection, and, by itself, is rarely fatal. But it can lead to deadly complications, such as pneumonia. About 36,000 Americans die from flu complications every year.

インフルエンザは基本的に強烈な上部呼吸器感染(URI)であるが、それだけで致命傷になることはめったにない。しかし、それが肺炎のように命取りになる合併症を引き起こすことはあり得る。米国では毎年およそ36,000人がインフルエンザの合併症で亡くなっている。

Swine flu is caused by a virus similar to the type of flu virus that, in various forms, infects people every year, but is a strain typically found only in pigs -- or in people who have direct contact with pigs.

豚インフルエンザは、いろいろな形で、毎年人々を感染させるインフルエンザウイルスのタイプに類似したウイルスに起因するが、豚のみ、または豚と直接接触をする人々において典型的に見つかる病原菌である 。

A couple of factors could be causing the greater death toll in Mexico, said Howard Markel, a physician and director of the Center for the History of Medicine at the University of Michigan.

ニ、三の要因はメキシコでより大きな犠牲を引き起こしていることがありえたと、ミシガン大学医学部・医学史研究センター長で医師のハワード・マーケル氏は言う。

"They may have had cases for several months now and probably have a greater number of people who have the disease, probably tens of thousands," he said. "There may indeed be more cases in the United States. The snapshot we're seeing in the United States may be an incomplete snapshot."

マーケル氏は、「それらはここ数ヶ月間におそらく何万人という病気を持った多くの人々を患者にするかもしれない。実は米国にはもっと多くの患者がいるかもしれないし、私たちが米国で見ているものは、不十分なものかもしれない。」と言う。

Also, he said, the people who have died in Mexico could have had what he called "another co-factor," such as taking medicine or having pre-existing infections that would make them more vulnerable. It's also possible, he said, that those who died had an underlying genetic predisposition or condition.

マーケル氏はまた、メキシコで亡くなった人たちが、薬を飲んでいたり、抵抗力を弱くするような既往の感染症があったりといった、別の複数の要因を持っていたことがあり得たとも言う。それに加え、亡くなった人々は、潜在的に遺伝的な傾向あるいはそうした健康状態があった可能性があると言う。

Sullivan also pointed to possible "complicating factors," such as malnutrition, poor housing or crowded conditions.

サリヴァン氏もまた、栄養失調や粗末な住宅、都市部の雑踏といったような「複雑にする要素」を可能性として指摘した。

Markel noted that "flu was classically called a crowding disease in the 19th century."

マーケル氏は、「インフルエンザは19世紀には群集疾患と古典的に呼ばれていた」と指摘した。

Disease investigators also are concerned by the fact that the outbreak has killed people in the prime of their lives, when they should have peak resistance.

疾病調査官たちは、壮年期の人々の抵抗力がピークであるべきとき、その彼らが病気によって亡くなってしまう事実を懸念している。

"It is certainly a red flag," Markel said.

「それは確実に赤旗だ」とマーケル氏は言う。

Health authorities have pointed out that this swine flu strain has never been seen. That may have a lot to do with the deaths, Markel said.

保健衛生当局はこの豚インフルエンザの病原菌がこれまで見られなかったと指摘した。マーケル氏は、たくさんの死者を処置することになるかもしれないと述べた。

"It's a fairly novel strain," he said, "and the deaths could be from healthy people who have a healthy, robust immune system that overreacts."

「それは全く見たこともない病原菌である。そして、過剰反応するほどの頑丈な免疫力のある健康体を持った人々から亡くなっていくかもしれない。」とマーケル氏は言う。

That could result in a "cytokine storm" in which the body secretes too many chemicals as it tries to kill offending microorganisms.

体が問題のある微生物を殺そうとしたときに過剰な免疫物質を分泌する「サイトカインストーム(感染症への防御反応として産生されるサイトカインという物質が過剰なレベルになって気道閉塞や多臓器不全を引き起こすもの)」となることもあり得る。

The hyper-response can lead to accumulation of fluid in the lungs and a condition called "acute respiratory distress syndrome."

この異常に敏感な反応は、、「急性呼吸障害症候群」と呼ばれている状態と肺水腫を引き起こしかねない。

Julio Frenk, former health minister of Mexico and now dean of the Harvard School of Public Health, holds an opposing view: The disease could be killing people who are not healthy because of their living conditions.

元メキシコ保健相で、現在のハーバード公衆衛生大学院の学長のフリオ・フレンク氏は反対の意見を持っている。病気で亡くなった人たちは、彼らの粗末な居住環境ゆえに健康体ではないことがあり得る。

"There could also be some elements in the host," he said. "These are poor people. Maybe their immune response is not as efficient. So we're going to have to just keep trying to understand why this difference and whether that continues as the epidemic unfolds."

フレンク氏は言う。「いくつかの要素が病原菌の宿主となり得る。彼らは貧しい。たぶん彼らの免疫力は効果的なものではないだろう。私たちは疫病が広がるときにそれが続くかどうかと、その違いはなぜかということについて理解するようにし続けなければならない。」

He also noted that antiviral medications need to be taken within hours of the onset of symptoms, but people in Mexico may not have sought treatment immediately, if at all.

フレンク氏はまた、抗ウイルス薬は徴候の始まりの1時間以内に飲む必要があるが、メキシコの人たちは、仮にそうなったとしても、すぐさま治療をしようとはしないであろう、と指摘した。

As the outbreak continues to unfold, so will the investigation.

病気が発生が広がり続けるにつれて調査をするだろう。

"We're making every effort to truly understand this virus," said CDC's Roebuck. "But some of the reasons for what's happening we may never figure out."

米疾病対策予防センターのローバック氏は言う。「私たちはこのウイルスを真に理解するためにあらゆる努力をしている。しかし、起こっていることの原因のいくつかは、決して解明することができないだろう。」
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