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2007.08.15

局地的な地震が津波に変わった

8月に入ってから中国本土を除く主要国の株式市場がアメリカのサブプライム問題に端を発した株安の連鎖に見舞われている。
実のところアメリカのダウジョーンズ不動産指数(Dow Jones U.S. Real Estate Index)は、私が7月28日の「今日の一言」で書いたように突然崩落が始まったのではなく、今年に入ってずっと調整局面にあった。
要するに、今まではアメリカの限定された業種の株式が売り浴びせられていただけで、他国はもとより、お膝元のアメリカの国内市場でさえ、我が世の春を謳歌していたのである。

ところが、去る9日に遠く離れた大西洋の対岸のフランスで、突如として、大手銀行のBNPパリバ(BNP Paribas)が米国のサブプライム問題に絡み、3つのファンドの価格算出や償還を一時的に停止すると発表したことが契機となり、主要国を巻き込んだ株安の連鎖が始まった。
911以来とも言われる欧米の中央銀行による短期金融市場への記録的な資金供給により、この問題は一時的に沈静化したかに見えたが、そもそも対症療法的な意味合いでしかなかったため、信用収縮懸念を引き起こすようなメジャーな企業のネガティブな決算や、政府の統計データが発表されるたびに各国の市場は過剰なまでの暴落を演ずるようになってきている。
まさに局地的な地震が津波に変わったというべき現象と言えよう。

この主要国の市場が崩落するにつれ、為替相場は円高に振れるようになり、海外あるいは外貨のポートフォリオの比率が高い私としては、ベア型ファンドやショートポジションを取ることによって得られる利益は円高によって相殺されてしまう傾向が生じてきた。
もし、何の対策もせぬままに模様眺めをしていれば、毎日のように減り続ける資産のポートフォリオを見ながら忍耐を強いられることになったことだろう。

この円高傾向がいつまで続くのか。
私は1月21日の「今日の一言」で「今の円安基調が一昔前と同じ円キャリートレードによることが主因であるならば、いつかは猛烈な円高がやってくるかもしれない。もし、歴史が繰り返すということが真ならば、その時期はBRICs市場の暴落、特に北京オリンピック前までという噂が絶えない中国バブルの崩壊の時という可能性は十分にあり得る。」と書いたが、中国バブルの崩壊はどうやら当分先の話になりそうな雲行きだ。

しかしながらよく対比される1998年現象でメディアがあまり記事にしていない奇妙な偶然に気づくだろう。
9年前の猛烈な円高は10月にやってきたが、その主因は8月に起こったロシアの財政危機だった。
そして、今回のサブプライム問題が欧米のヘッジファンドを揺さぶっていることが表面化したのも8月だ。
多くの人は、1998年現象と今の類似点を取り上げつつも、9年前に起こったような猛烈な円高はさすがにないと言う。

しかし、自分がファンドマネージャーになったつもりで考えてみたらいい。
私たちのような個人投資家は塩漬け株がいくらあろうが含み損がいくらになろうが誰からも責任を問われない。
しかし、彼らは違う。
顧客から運用を託された資産を増やしていくことが義務づけられているのだ。
つまり、運用している資産の一部に大幅な欠損を抱えれば、それを穴埋めするために利益が出ている資産を処分するだろうし、基準価格の下落により、顧客からファンドの解約を求められればキャッシュを用意するために資産を処分しなくてはならない。
まして全面安の局面が続けば先回りして利益を確保しようというのは誰でも同じだ。

そして、金融用語辞典を見ると、キャリートレード(carry trade)というのは、低金利の通貨を借りて、高金利の通貨などに換えて運用すること、とある。
借金なのである。
例えば、100万円を借りて年利1%とすれば金利は1万円だが、誰が見たって、それはコストなのである。
円安、外国株高のときは、1万円の金利など気にもならないが、これが逆回転し出したら突如としてコストとしての存在価値が増し、たかが1万円と言えども余計なコスト要因は減らしたい、清算しようと思いたくなるのではなかろうか。
これが大きな流れとなれば、突如として雪崩を打ったような外貨売り(円買い)が始まるだろう。
今のところは、「円ローンの繰上げ返済」をやり始めたという段階なのだろうが、今のサブプライム問題が長引くようだと9年前の悪夢の再現となるかもしれない。

今のところサブプライム問題に端を発した株安が中国には飛び火する感じは全くない。
世界中の投資家にとって最後の桃源郷みたいなものだ。
だが、1つだけ懸念がある。
果たして中国政府要人の投資家、あるいは彼らが絡んだ国営企業はサブプライム問題に関係してないのだろうか。
仮に彼らがそのような大ポカをしていても今のところは隠されているかもしれない。
中国株を大量処分することなどまかりならんと政府トップから厳命されているかもしれない。
しかし、そのような事態が隠されているとなると、いずれ背に腹は変えられなくなるヤツが出てくる。
そのときがセリング・クライマックス(selling climax=売りの最終局面)となるだろう。

円の暴騰か中国市場の暴落、おそらくそのときが今回の株安の大底となろう。
9年前も10月の円暴騰が世界大恐慌が始まると言われた株安の連鎖が終わったときだった。
そこから世界的なITバブルへの道へとつながったのだ。
ポストBRICs投資、私はそこまで待ってみようと思っている。

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