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2007.02.24

ケチくさいe-Tax減税案

今年も確定申告のシーズンがやってきた。
私の場合、国税庁が今シーズンはやけに宣伝しているe-Tax(国税電子申告・納税システム)を導入当初から利用している奇特である意味おバカな納税者の1人である。
ところが、実際に使ってみると、このe-Taxは、私が2005年2月19日の「今日の一言」でも酷評している通り、これを使うことによるメリットがほとんどないのだ。
今年に関して言えば、唯一のメリットが確定申告書に添付する書類を別送する封筒が「料金受取人払い」であったことだ。
国税庁は、通常なら還付申告した際に還付金を受け取れるのは約6週間後だが、e-Taxを使えば、約3週間に短縮できることをメリットとして強調しているが、はっきり言ってどうでもいいことだ。(私の場合、所得税の還付を受けるということは前年に投資で儲かってないことを意味するので嬉しくも何ともない)

そして、政府はこれらの問題を解消し、e-Taxを普及させるために、平成19年度税制改正大綱に、電子政府推進税制及び、電子税務手続の電子化促進措置として、以下のような改善案を盛り込んだ。

1.電子証明書を取得した個人の電子申告に係る所得税額の特別控除の創設

電子証明書を取得した人が、平成19年分または平成20年分の所得税の申告をe-TAXを利用して行った場合に、どちらか一方の年分の所得税額から5000円を控除できる。

2.電子申告における第三者作成書類の添付省略

所得税の申告をe-TAXを利用して行った場合は、各種控除を受けるための証明書の添付の添付(別送)が不要となること。但し、税務署の提出・呈示要求に応じるため、3年間は書類の保管が必要。

3.源泉徴収票等の電子交付の対象書類の追加

4.源泉徴収関係書類の電子提出

5.電子署名の省略

これは全員に適用になるわけではなく、税理士などに確定申告書の作成を依頼した場合と、税務署の端末を利用した場合に限られる。つまり、私のように自分で申告をする場合は従来通り「電子証明書」を取得・登録しなければならない。

6.電子申請等証明制度の創設

要するに納税者サイドのメリットとしては、5000円の特別控除と、添付書類の別送が不要になるということらしいが、はっきり言ってケチくさい。
ここの5000円は、2004年5月30日の「今日の一言」で書いたように、電子証明書を取得・登録するための初期投資額がこの程度かかるし、これは毎年控除されるわけではなく、たった1年限りであるため、単なる費用補填の意味合いでしかない。
しかも添付書類の別送が不要と言っても、逆に3年間は自宅などに保管しないといけないのだからそのスペースは個人にとっては単なる無駄である。

同じような促進策を取るならなぜもっと思い切ってできないのだろうか。
世間では格差社会とかいうことが盛んに言われているが、高所得者層は5000円の減税や、郵便代がかからないことで喜ぶ人などほとんどいないのだ。
逆に低所得者層は税金の申告などしない(損得にかかわらず、そういうリテラシーがない場合も多い)か、かかっていない場合の方が多いから、この政策はほとんど意味がない。
唯一のターゲットは、国税庁が還付スケジュールのメリットを強調するように、所得税を給与から源泉徴収されたサラリーマンなのだろうが、11月までの(年末調整前)中途退職による確定申告や、医療費控除や住宅取得控除の申告というのは毎年発生するものではないだろう。
その一時的な申告のためにe-Taxでやるとはとうてい思えないがいかがだろうか。

このことは、e-TAXのウェブサイトのアンケートページの自由意見欄にも書いて送ったが、5000円なんて瑣末な減税をするよりも、税額の何%(これなら場合によっては数十万単位で減税となる)を控除する、といったことをすれば、高所得者層はそれを消費に回すだろう。
今までパソコンなんて、と言っていた高齢リッチマンがパソコンを買い、スキルを学びにパソコン教室へ行けば、それが景気浮揚策の1つになり得るかもしれない。
今までインターネットに無縁と思われてきた彼らが最初はパソコンをe-Tax利用のために買ったとしても、それに端を発した新たな富裕層マーケティングが出現する可能性だってないとは言えない。
事実ウェブショッピングで高級品を買うヤツなんていないだろう、という常識を覆したSEVEN HILLSの例もあるのだ。

私が思うに、政府がそうしない理由は大きくわけて3つ。

1.為政者(政治家・官僚)にメリットがない。
政治家のほとんどはITを理解していないし、官僚は所得税の申告を自分でする必要がある人が少ない。要するに、自分たちにメリットの可能性すらない政策に対しては冷淡である。
一方で、同じ勝ち組優遇でも大企業減税策は政治献金に繋がるので、こちらには熱心である。

2.日本のマスコミは私が言うような減税策をぶち上げれば金持ち優遇と批判する。
ただでさえ、格差是正が必要と言われており、ここ数年間の税制改革により、低所得者層に負担増の嵐が吹き荒れている時に金持ち(個人)に対する減税策は取れない。

3.何としてでもe-Tax(国税電子申告・納税システム)の活用を促進せざるを得ない立場にある財務省が苦肉の策で出したものが5000円の費用補填減税だったため。
2006年度(平成18年度)末で休止に追い込まれた旅券(パスポート)の電子申請システムの利用件数があまりにも少なく(読売新聞によれば、2005年度(平成17年度)の旅券電子申請の利用件数は総発給件数約375万件のうち103件にすぎなかったが、システム維持費は年8億円超かかった)、税金の無駄遣いを指摘されていたが、当のお膝元で同じようなことになればシャレにならない。

しかし、いつまでもこんなことをやっていてはますます日本はジリ貧になるだけである。
グローバリゼーションとは一言で言えば、「ヒトとモノが国境を越えて自由に行き来する」ことなのだから、日本の一般庶民が金持ちを怨嗟の対象とするならば、彼らは日本で才能や野心を開花させることもなく、消費をやめて国外へ出ていくだろう。
それを「愛国心がない」などと非難するのはあまりにも馬鹿げたことだ。

すでにその兆候は鮮明になりつつある。
臼井宥文氏の著書、「ニュー・リッチの世界」にはこんなことが書いてある。
日本はラグジャリー消費(luxury consumption)に見合うインフラとサービスが少ない。また、日本ではここ四半世紀にわたって「国際化」が叫ばれてきたにもかかわらず、それが実現していない。そればかりか、グローバル化の流れに大きく取り残されている。そこで、仕方なく、ニューリッチたちは世界へ出て行くことになる。
従って、富裕層も同じ日本人なのだから、彼らが海外に逃げることはないなどと、政治家や企業がたかをくくってはいけない。

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