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2006.11.23

夕張市破綻は日本破産の序曲か

財政再建団体となる北海道夕張市の住民説明会で、市側の提案に対し、市民たちは「話にならない。みんな帰ろう」と、次々に会場を立ち去ったという。(2006.11.20 読売新聞-夕張、嘆きの山・・・市で事実上の解雇通告も
気持ちはわからないでもない。
何せ、小泉インチキ構造改革の総仕上げで今年度から実施された年金生活者の住民税と、それにスライドする国民健康保険料、介護保険料のトリプル負担増は、夕張市民ならずとも彼らのサイフを直撃していたのだ。
そして、私の予想では2010年代にはこういう光景が至るところで見られ、下手をすれば、いわゆるババを引いた首長と職員が市民のリンチに遭うことになるだろう。

さて、ここで冷静に考えて欲しいのは、財政破綻の原因を作ったのは、そのババを引いた首長や職員だけなのだろうか、ということだ。
彼らに全く責任がないというわけではない。
しかし、バブル経済期から数えて約20年間、その間の歴代の首長、議員、幹部公務員、そして彼らとつるんで税金を食い物にした業者や闇の世界の住人の方がはるかに大きな責任があると言ってもいい。
そして、その悪の連鎖を断ち切ろうともせず、漫然と与党に投票し、あるいは棄権を続けた選挙民もだ。
それは夕張市のみならず、国や他の自治体にも言えることなのだ。

いざとなれば、マスコミや一般市民は、現職だけを吊るし上げ、溜飲を下げたような気になるだろうが、そんなことをしても何の解決策も教訓も見出せないであろう。
かつて、悪の連鎖に立ち向かった民主党衆議院議員の石井紘基氏や、小さなところでは産廃業者に厳格なことで知られた栃木県鹿沼市環境対策部参事(部長級)、小佐々守氏はいずれも殺されている。
また、産廃処分場建設に反対し、瀕死(ひんし)の重傷を負った岐阜県御嵩町長、柳川喜郎氏の例もあり、全国紙の記事にならないようなところで変死している人もいると聞く。
「仕事をする公務員」が殺される世の中では誰がその役目を買って出るだろうか。

昨日のテレビであるコメンテイターが「なぜ夕張市は市民に負担を強いる前に国や北海道へ支援をお願いしないのか?」と言っていた。
トンチンカンなセリフもたいがいにしろと言いたい。
第一、北海道は2003年の段階で、三菱東京UFJ(当時の東京三菱)銀行や三井住友銀行が道債の引受銀行から手を引いたほどの財政状況なのだ。(2004年2月26日付朝日新聞「日の丸ファイナンス-巨大化の果てに」
とても夕張市の支援どころではないだろうし、さらに北海道の政財界の勘違い甚だしいのは、このような中でさえ、北海道新幹線の建設を続行しているということだ。

1999年4月21日号のNewsweek Japanには「地方自治体が破産するとき」という記事が掲載されていた。
その中の「ニューヨークの経験に学べ」に、「市当局と労組と財界は互いに協力することの大切さを学んだ。わがままなことで知られるニューヨーク市民も協力した。自分の町をののしってきたニューヨーカーたちも、共有するものの大きさを思い知らされたのだ。」という一節がある。
かつて財政再建団体に転落した福岡県赤池町(現・福智町)でも同様のことが言われた。

しかし、当時と今とでは根本的に違うことが2つある。
一つは夕張市の少子高齢化が究極のレベルに達しており、勤労者(納税者)世帯が町を見捨てる可能性が高いこと。
もう一つは国全体から再起へのエネルギーが喪失していることだ。
なぜなら、バブル崩壊後の日本は、ほとんどすべてにおいて、「逃げるが勝ち」という風潮があるからだ。
これは、誰かがババを引いてスケープゴート(scapegoat)となるまで続く。
たとえ、誰かが勇気を持って現実に立ち向かったとしても、それが全くと言っていいほど評価されないのが日本の社会システムだからだ。
事実、自ら率先して事実を明らかにした者と、バレて仕方なく釈明した者とどれほどの差があるのだろうか。
下手をすれば前者の方がひどい仕打ちを受けることさえある。
牛肉産地偽装事件における西宮冷蔵の水谷洋一社長と、耐震強度偽装事件におけるイーホームズの藤田東吾社長のケースはこのことを雄弁に物語る。

「逃げるが勝ち」という風潮はこの先も続くのか。
この夕張市に始まった地方自治体の破綻が、日本破産の序曲とならないことを祈りたい。
しかし、そのために残された時間は限りなく少ないように思える。
2001年12月31日付のFinancial Times "Risky tango in Tokyo"は、「その恐ろしい冗談は、経済界の間で交わされている。(経済破綻した)アルゼンチンと日本の間の差は何か。5年。(A grim joke is doing the rounds in financial circles. What is the difference between Argentina and Japan? Five years.)」と書き出している。
その5年はもうすぐ経つ。
アルゼンチンは国が破綻した。経済規模の大きさで優位にある日本は一地方自治体の破綻で済んだ。
果たして国際経済界で交わされた冗談が現実となる日は来るのだろうか。

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コメント

かじさん、こんにちは

そうですね。景気回復と言われても一部の人以外は実感がないでしょうね。これで後退局面になったらどうなるんだろうと思います。

投稿: カルロス | 2006.12.02 12:42

こんにちは
久しぶりに、こちらのブログに来ました。
日本の株はほとんど持っていませんので、日本の株価がどうかは、全体の日経しか見ていません。
私も2006年のあと1月からの、ポートフォリオをチェックしていますが、今年も昨年と同じかそれ以上のパフォーマンスが出せそうです。

日本は景気拡大で税収が増えたと報道されていますが、増収分って消費税2%分くらいでしょうかね、どうせ、役人はまともなことに使わないでしょね。
日本が破産しても悠々自適に暮らせるように、お互いがんばりましょう。

投稿: かじ | 2006.12.01 15:34

ベンダソンさん、ようこそ拙ブログへ

>この国のマスコミは末期的状況にあり、国民を騙しつづけていることは、内部事情を知らなくても、論理的に分析すれば辻褄が合わないことが多すぎて直ぐに知れます。

残念ながらその状況を知っているのは国民の少数派なんですよね。
多くは知らない(特にITと縁のない層)し、知ろうともしないというのが現実と思います。
これは実はレーガン以降のアメリカも同じ状況と聞いてます。
似たもの同士ですね。

投稿: カルロス | 2006.11.30 22:15

カルロス様、拙ブログへのコメントありがとうございます。
「日本のマスコミがアンタッチャブルな理由」
http://www.carlos.or.tv/essay-j/j-essayfront.html

読ませていただきました。
イヤハヤ、大変な力作ですね、敬服いたします。

最初貴ブログを見たとき、ヘンテコリンな(失礼!)仮面ライダーみたいなお面をかぶった写真があったので、アブナイ人?なんて思ってしまいましたが、なかなかどうして、お見逸れしました。

この国のマスコミは末期的状況にあり、国民を騙しつづけていることは、内部事情を知らなくても、論理的に分析すれば辻褄が合わないことが多すぎて直ぐに知れます。

ブロガーの連携によって、これを崩していくしかないと思っていますので、是非とも、連携を図りたいものです。
これからもよろしくお願いいたします。

投稿: ベンダソン | 2006.11.29 23:37

>ことの本質を日本国民全員、考えてもらいたいと思います。

その通りだと思います。
あまりにくだらない上げ足取りや瑣末なことに対する批判が多すぎるような気がしますね。
郵政造反組復党なんて言っているの見ると、いかに国民がバカにされているというのがわかります。
そういうことに怒って欲しいものです。

投稿: カルロス | 2006.11.28 22:32

いやー、全くそのとおりですね。
ことの本質を日本国民全員、考えてもらいたいと思います。
私はいつも考えています。

投稿: kubokawa | 2006.11.27 16:58

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