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2006.05.20

共謀罪に対してだけ懸念しているのではない

2005年(平成17年)10月4日に第163回国会(特別会)に提出され、現在継続審議中の「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」(組織的な犯罪の共謀罪の新設法案)が衆議院通過を目前にして、ようやくメディアで報道されるようになった。
個人のブログやウェブサイトでは、この法案に対する疑問や懸念が示されているものも多く、メディアがそれを取り上げるようになって、法務省も重い腰を上げて「組織的な犯罪の共謀罪」に対する御懸念について」というQ and Aをウェブサイトに載せるようになった。

このQ and Aの中身についての論評は、別の機会にするとして、根本的な問題として、この共謀罪に対する国民が抱く漠然とした不安の多くは、「司法に対する不信」にあるのだ。

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交通事故:集団に囲まれ車急発進させ傷害、正当防衛認め無罪 甲府地裁差し戻し審 (2006.5.4 毎日新聞)

オートバイの集団に囲まれ、逃げようとして乗用車を急発進させ当時32歳の男性に重傷を負わせたとして傷害罪に問われ、1審で罰金20万円の判決を受けた甲府市の男性会社員(42)に対する差し戻し審判決公判が2日、甲府地裁であった。
矢野直邦裁判官は「急迫不正の侵害があった」として正当防衛の成立を認め無罪を言い渡した。

判決によると、会社員は2002年5月、家族を乗せて山梨県中道町(現甲府市)の国道を車で走行中、十数台の改造オートバイの集団に囲まれ停車。
会社員は、オートバイを降りて近付いてきた男性に胸ぐらをつかまれ、恐怖を感じて車を急発進させ、車にしがみついた男性を振り落とし重傷を負わせた。
会社員はその後、男性と仲間に追いかけられ、暴行を受けた。

会社員は傷害罪で起訴され2005年1月、甲府地裁で罰金20万円の判決を受け東京高裁に控訴。同高裁は審理不十分として1審判決を破棄し、差し戻していた。【沢田勇】
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この記事を見てどう思っただろうか。
常識で考えて、一介の丸腰の会社員が10数人の集団に向かって喧嘩を売ったり、暴行を加えようとするだろうか。
この事件に関与した司法当局者は、この会社員に対し、10数台の改造オートバイの集団に囲まれ、暴行を加えられ死ぬかもしれない恐怖の中でさえ、被害者は手加減して防衛し、加害者を全く無傷か軽傷の状態で窮地を脱しなければ、「犯罪者」になると言ったのだ。
仮に、こういう事態の元で何も防衛手段を取らなければ確実に被害者は死ぬか、半身不随となり、加害者はせいぜい傷害致死、少年だったりすればまともな処罰さえされずに殺され損となる。
考えてみるがいい。
この会社員がここで定義される「犯罪者」にもならず、重症も負わずに逃げ切れる確率がどの程度あるか?
ほとんどゼロに近いだろう。

こんな破廉恥なことを言ったりやったりしているのは世界でも日本の司法関係者だけだろう。
事件を取り調べた警察官も、起訴した検察官も、最初に事件を審理した甲府地裁の裁判官も、まともな一般常識を持ち合わせないのか。
この会社員が職場をクビになってない(と思う)ことだけが唯一の救いであるかのような記事だ。

さらに最近では、電車内の携帯電話を注意したら、腹いせに痴漢事件をでっち上げられ、逮捕・拘留までされたという嘘のような痴漢冤罪事件もあり、そんな風潮の中で「共謀罪」が新設されたら、どんな濡れ衣を着せられるかわからないという不安が生じても当然なのだ。
法務省の言うように共謀罪の成立要件は「一般国民が不安に思うような内容ではない」かもしれない。
しかし、金目当てや逆恨みで犯罪をでっち上げる奴らや、双方の言い分を全く聞こうとはせず、自分の思い込みだけで捜査や判決を下す奴が溢れる世の中では、霞ヶ関の奥の院で言っていることなど信用されないのだ。

テロや人身売買などの国際犯罪に対応していかなければならないという理屈は誰しも反対しないだろう。
しかし、なおかつ国民が共謀罪新設に懸念を持っているのは、司法が腐っていて信用されていないからなのだ。

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